[ファイトクラブ]来日アリ「リハーサルはいつやるんだ?」 聞かれたケン田島さん90歳逝去

[週刊ファイト5月20日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼来日アリ「リハーサルはいつやるんだ?」 聞かれたケン田島さん90歳逝去
【「アントニオ猪木vs.モハメド・アリ」45周年】
 text by TERUZ
・ケン田島「なんのリハーサルだ?」 アリ「だってエキシビションだろ」
・ルール委員会にも翻訳で参加 田島さんは最後まで「真剣勝負」主張
・ケン田島さんがいて「IWGP」誕生 いかにして名付け親となったのか
・徳光和夫「田島さんはBBC放送で一番英語がうまい日本人と紹介」


■ 訃報
4月27日午後1時8分、ケン田島さん
けん・たじま=同時通訳者
本名漆原一郎=うるしばら・​いちろう
肝細胞がんのため東京都江東区の病院で死去(90歳)

 1976年6月26日に行われた格闘技世界一決定戦「アントニオ猪木vs.モハメド・アリ」から実に45年が経つ。記念日には新型コロナウイルス感染状況も好転していてほしいと願うばかりだが、3度目の緊急事態宣言に突入して間もなくひとつの訃報が届いた。4月27日午後1時8分、ケン田島さん(けん・たじま=同時通訳者、本名漆原一郎=うるしばら・​いちろう)が肝細胞がんのため東京都江東区の病院で死去、90歳。猪木vs.アリ戦では会見やルール委員会での同時通訳を務めた。改めて故人の貢献を称えるとともに、新日本プロレスに果たした役割を振り返りたい。

 
ケン田島「なんのリハーサルだ?」 アリ「だってエキシビションだろ」
 

 その名前にピンときたプロレスファンも多かったかもしれないし、限定的な報道であるがゆえに気づかなかったファンもいるかもしれない。ケン田島さんの訃報は、このように伝えられた。

 ケン田島さん死去(けん・たじま=同時通訳者、本名漆原一郎=うるしばら・いちろう)4月27日、肝細胞がんのため死去、90歳。ロンドン生まれ。告別式は親族で行った。喪主は妻邑子(ゆうこ)さん。

 連合国軍総司令部(GHQ)で働いた後、国際会議、新日本プロレスなどで英語の同時通訳や翻訳を担当。ラジオ番組のパーソナリティーや富士スピードウェイ(静岡県)の場内アナウンスも務めた。

(東京新聞)

 1960年代から富士スピードウェイでレース・アナウンサーを務めたケン田島(本名・漆原一郎)さんが、去る4月27日に肝細胞がんで亡くなった。90歳だった。

 ケン田島さんは1930年イギリス生まれ、41年に帰国した。戦後、連合軍総司令部(GHQ)、在日米国大使館に勤務した後、70年代後半からラジオのDJを務めた。本業は同時通訳者で、国際会議やモーターショウでも通訳をした。

 その傍ら、1966年の日本グランプリから富士スピードウェイでレースアナウンサーとして活躍、数多くのレースで得意の喋りを聞かせ、我が国のレースアナウンサーの草分けと言われた。得意の英語を駆使して海外からのドライバーとも交流を図った。

 思い出に残るのは1976、77年の2回富士スピードウェイで行なわれたF1。76年には3位に入ってチャンピオンに輝いたジェームス・ハントが表彰式をすっぽかして帰国したレースだ。日本人ドライバーも出場したが上位には入れず、少し寂しかったと振り返った。

 現代のレースアナウンサーの第一人者とも言えるピエール北川氏は、ケン田島さんの死去に際して、次のように語った。

「一度JAFスポーツで対談をさせていただいたことがあります。日本のレースの黎明期ともいえる時代から、日本語と英語を使ってレースの模様を語る技には尊敬しかありません。今はテレビモニターなどで情報収集ができますが、当時は何もなかったわけですから、大変な苦労をされたはずです。ケン田島さんの前には誰もこの仕事はやっていなかったわけで、その意味では本当のパイオニアです。時代を切り開いた、と言うことですね。大先輩として、本当に尊敬しかないです。今は、安らかにお休みください」

(レースアナウンサーの草分け、ケン田島さんが死去 motorsport.com 日本版|モータースポーツ情報サイト)

 モータースポーツ情報サイトでボリュームを割いて扱われていることが興味深い。実は、この「レースアナウンサーの草分け」とされた田島さんの経歴が、後述の「IWGPの名付け親」となることに大きく関わってくる。

 猪木vs.アリ検証のメディアにも多数登場していることから、その名が知られる。会見やルール委員会での同時翻訳を務めたわけだが、田島さんのプロレスファンの中での知名度を決定的にしたシーンを、田島さん本人は2011年に次のように語っている。

 田島「決戦10日前に来日したんですよね。ホテルの廊下か空港の廊下かはちょっと覚えてないけれど、アリがいきなり『リハーサルはいつやるんだ』と。『なんのリハーサルだ』って聞いたら『エキシビションだろ』。私が『真剣勝負だ』と。そこから大変なことになっちゃって、山本小鉄さんが委員長のルール委員会が始まって、連日朝3時までですよ」

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