[ファイトクラブ]『半沢直樹』でプロレス! 登場人物に似合うのはどんなレスラー?

[週刊ファイト9月10日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼『半沢直樹』でプロレス! 登場人物に似合うのはどんなレスラー?
 by 安威川敏樹
・非常に似ている、プロレスと『半沢直樹』
・「倍返しだ!」の半沢直樹(堺雅人)は、まさしく燃える闘魂!
・『ミスター土下座』大和田(香川照之)に見合うレスラーは?
・オネエ言葉の黒崎(片岡愛之助)の恐怖は、あのレスラーで決まり
・裏切り男の伊佐山(市川猿之助)にお似合いのプロレスラー
・半沢直樹の同志、渡真利(及川光博)はどのレスラーになる?
・東京中央銀行のトップ、中野渡頭取(北大路欣也)は誰!?


 TBS系で放送されているドラマ『半沢直樹』が未だに大人気だ。2013年に放送された第1シリーズでは、最終回で視聴率42.2%(関東地区、以下同)を記録するなど、社会現象となった。
 あれから7年、コロナ禍で放送が遅れたものの、今年7月に第2シリーズが放送開始されると人気は再び爆発、第1話から常に視聴率20%超えを果たしている。

 人気の秘密は、日本人好みの勧善懲悪にあるのだろう。難しい経済用語が出てくるので、普通の視聴者にとっては取っ付きにくい筈なのだが、『良い人』と『悪い人』がハッキリ分かれているため判りやすく、悪役は汚い手を使って悪の限りを尽くすが、最後には主人公が悪者たちの不正を暴いてスカッとする。大袈裟な演技も人気の理由の一つだ。
 サラリーマン社会を生きる多くの視聴者は、会社内での不条理な仕打ちや、ロクでもない上司に酷い目に合わされているので、巨大な悪に立ち向かう半沢直樹に共感を覚えるのだろう。そして、いつかは理不尽な上司を成敗したい、と。

 これって、何かに似ていないか? そう、プロレスだ。プロレスは昔からベビー・フェイス(善玉)とヒール(悪役)の対決が主流であり、ヒールは反則のやり放題でベビー・フェイスを追い詰めるが、最後には正義のベビー・フェイスが勝つ。ドラマと違うのは、プロレスではたまにヒールが勝つことがある点だが、基本的な構造は『半沢直樹』と同じだ。

 そこで、『半沢直樹』の登場人物を、プロレスラーに当てはめてみた。ただし、対象とするのはあくまでもリング上でのレスラーのパフォーマンスであり、実際の性格や私生活は関係ない。
 しかも、イメージ上でのことなので、異論もあるだろう。そこは筆者の独断と偏見ということでお許しいただきたい。

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「倍返しだ!」の半沢直樹(堺雅人)は、まさしく燃える闘魂!

 主人公の半沢直樹(堺雅人)は、メガバンクである東京中央銀行の優秀なバンカー。第1シリーズでは、担当企業を再生させ、悪事により私腹を肥やすトンデモ上司を告発し、銀行を守る。
 しかし、銀行を救ったにもかかわらず、子会社である東京セントラル証券への出向が命じられ、そこで第1シリーズは終了した。

 今回の第2シリーズでは、東京セントラル証券が大手IT企業である電脳雑伎集団の大型案件を進めていたが、それを親会社の東京中央銀行に横取りされる。
 これは半沢を陥れる罠であり、東京セントラル証券の中に東京中央銀行と通じている裏切り者がいた。半沢はそれを突き止め、さらに電脳雑伎集団に粉飾決算があったことを暴いてしまう。危うく大損するところだった銀行を救ったことが認められ、半沢は東京中央銀行に返り咲いた。
 ここで第一部が終了したが、第二部では経営破綻寸前の帝国航空(モデルは明らかに日本航空)の再建という難題を押し付けられ、バンカーとして前途多難の再スタートとなる。

 半沢直樹に見合うプロレスラーと言えば、“燃える闘魂”アントニオ猪木をおいて他にいないだろう。半沢のモットーである「やられたらやり返す! 倍返しだ!!」は、そのまま猪木のファイト・スタイルに通ずる。
 悪役レスラーの度重なる反則攻撃に対して、猪木は息絶え絶えになるも、怒りが爆発した猪木のナックル・パート一閃で逆転! 怯んだ相手にアリ・キックの連打からバックドロップとまさしく“倍返し”の波状攻撃、最後は必殺の延髄斬りでフォール勝ち、ファンはヤンヤヤンヤの大歓声だ。大観衆をスカッとさせる勝ち方は猪木の真骨頂である。

 また、普通のプロレスだけに捉われず、異種格闘技戦を通じて『プロレスは最強の格闘技である』ということを示し、敢えて困難な道を進む猪木は、どんな難問にも立ち向かう半沢直樹に似ていると言えるだろう。
 半沢はありとあらゆる手を使って不正を暴いてきたが、猪木もプロレス技だけにとどまらず様々な格闘技の技を駆使してファイトしていた。

 さらに、半沢直樹の名セリフ「それ以上、近付かないでいただきたい! あなたからは腐った肉の臭いがする」「最も不要なコストはお前だー!」などは、アントニオ猪木の「俺の首を掻っ切ってみろ!」「やる前に負けること考えるバカがいるかよ!」のようにインパクトのある言葉だ。
 つまり猪木も半沢のように、記憶に残る言葉を発するのである。こんなレスラーは、そうはいない。

 まあ、経営者としての猪木寛至は、電脳雑伎集団の平山社長(土田英生)に近いという気がしないでもないが。ちなみに第1シリーズでは、猪木の元妻である倍賞美津子が伊勢島ホテルの専務として登場し、ホテルの乗っ取りを計画するが、半沢の活躍によって解任された。
 もっともこれは、アントニオ猪木が日本プロレスの乗っ取りを企てたとし、永久追放された事件をモチーフにしたのではないだろう。

▼倍賞美津子は『半沢直樹』第1シリーズに出演

『ミスター土下座』大和田(香川照之)に見合うレスラーは?

 ドラマの中で、主人公の半沢直樹に勝るとも劣らない存在感を示しているのが大和田(香川照之)だ。第1シリーズでの大和田は東京中央銀行の常務で、元々は半沢の父(笑福亭鶴瓶)を自殺に追い込んだ男。次期頭取の座を手に入れるため謀略を巡らせ半沢と対立するも、最終的には不正がバレて半沢の前で屈辱的な土下座を強いられ、常務取締役からヒラの取締役に降格する。
 第2シリーズの大和田は、中野渡頭取に忠誠を誓うようになったが、土下座をさせられた半沢への恨みは忘れていない。しかし、失脚した大和田に愛想を尽かした“愛弟子”の伊佐山に裏切られ、さらに三笠副頭取の罠に嵌って絶体絶命となり、やむなく半沢と手を組んで副頭取と伊佐山を電脳雑伎集団へ飛ばすことに成功した。
 ところが、第2部では前述のように、半沢に帝国航空の再建を押し付け、まだまだ腹に一物ありそうである。

 大和田の魅力は、あまりにもキョーレツな言動と行動だ。第1シリーズの最終回で話題になったのは、半沢に対する土下座シーン。タップリ溜めに溜めておいて、屈辱感満点で土下座する。安田大サーカスの団長などは、大和田のモノマネだけでメシを食ってるようなものだ。
 第2シリーズでも、「施されたら施し返す。恩返しです!」「お・し・ま・い・デス(death)!」「銀行、沈っ没! 頭取もチンッヴォツ(沈没)!!」と、インパクトのあり過ぎるセリフが続く。半沢に協力を持ち掛けられたときは「お前なんかと誰が手を組むか! 死んでもヤだねー!!」と言いながら、結局は裏切った伊佐山への復讐のために半沢と手を組む。死んでも嫌じゃなかったの?

 こんな大和田にピッタリなのは“涙のカリスマ”、そう大仁田厚だ。「俺はプロレスが好きなんじゃー!」と涙ながらに叫ぶような、オーバーなアクションは大和田に似ている。恥も外聞もなく、何度も引退しては復帰するというのも、大和田が半沢のために失脚してもしぶとく生き残って復活するのを彷彿させるのだ。

▼大和田には“涙のカリスマ”大仁田厚がピッタリ

 引退してもすぐに復帰するため、ファンから嘘つき呼ばわりされても「男なら一生に一度ぐらい、デカいウソをついてみろや!」となどと理不尽なことを言う。この節操のなさも大和田にソックリだ。もっとも大仁田の場合、一生に一度どころか何度も大きなウソをついているため、オオカミ少年になってしまったので、今では大仁田が引退宣言をしても誰も信用しないが。
 大和田の代名詞と言えば土下座だが、大仁田も高山善廣に対して土下座している。また、大和田は敵対していた半沢と手を組んだが、大仁田も散々批判を浴びていた長州力を相手に、新日本プロレスのリング上で電流爆破デスマッチを行うことに成功した。

 ついでに言えば、大田と大田で、苗字も漢字一字違い。トコトン似た者同士だ。

オネエ言葉の黒崎(片岡愛之助)の恐怖は、あのレスラーで決まり

 半沢直樹にとって、天敵中の天敵と言えば金融庁の黒崎(片岡愛之助)だ。どんな困難に対しても怯まず立ち向かう半沢ですら、黒崎の顔を見るとビビってしまう。銀行など金融機関の、どんな些細なミスでも絶対に見逃さない。半沢個人のみならず、銀行業界全体にとっての天敵だ。
 黒崎の特徴と言えば、なんといってもオネエ言葉。口調が優しいだけに、余計に黒崎の怖さが際立つのだ。黒崎の恐ろしさは、大和田の比ではない。

 東京中央銀行へヒアリングに入る黒崎。東京中央銀行に返り咲いた半沢の姿を見つけると「あなた、いたの!? あなたが担当者だなんてねえ。おかげでファイト満々よ♡」と言い、黒崎のド迫力に半沢も思わず目を瞑る。黒崎の、半沢への敵対心は異常なほどだ。
 黒崎を恐れているのは銀行関係者だけではない。自分の命令を速やかに実行しない部下がいると、黒崎はその男の股間を鷲掴みして、悶絶させるという狂暴な面も持っているのだ。

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