[ファイトクラブ]コロナ禍無観客に神童貫禄勝利! 『もう止まらないRISE』とABEMA

[週刊ファイト7月23日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼[ファイトクラブ]コロナ禍無観客に神童貫禄勝利! 『もう止まらないRISE』とABEMA
 試合Photo RISEオフィシャル バックステージPhoto&Text by こもとめいこ♂

・無観客も厳戒の再開!
・苦戦ABEMAの牽引車、格闘技チャンネル
・神童圧勝の要因
・独自勝利者インタビュー写真全選手掲載

 7月12日(日)都内の某会場、『Cygames presents RISE on ABEMA』の入り口は厳戒態勢だった。

 事前にメールにて体調確認と検温、手の消毒は当然の事として、マスクは用意された物に付け替え、さらに顔や上半身にも消毒アルコールを噴霧してようやく入場が許された。
 その上で、リングサイドでの撮影はオフィシャルカメラマンのみ、弊誌含む各媒体は試合が行われている外の通路でモニターで観戦、インタビュー時だけ撮影が許可された。

 ようやくトランプ大統領がマスクを付けた事がニュースになった北米、「コロナは風邪だ」の大統領自ら感染したブラジルと、アメリカ大陸でのコロナ禍は一向に収束の気配を見せず、プロレス、格闘技への影響は多大なものがあるが、一方日本でも都内の感染者は200人超が続いている(7月12日時点)。
 筆者にも故郷・会津の親戚から、
「関東在住者が帰省してのお盆、墓参りは自粛せよ」
とキツいお達しがあり、9月の恒例の『会津祭り』も中止とあって田舎に帰らないまま年を越しそうである。
 奇しくもRISE on AMEMAの最中に『コミックマーケット』のGWコミケC-98中止に続いて年末の冬コミC-99も延期が発表され、日本は1975年の第1回開催から幾多の危機を乗り越えてきたコミケが無い年を45年振りで迎える事となった。

 一方、東京都では圧倒的な得票数で再選された小池百合子知事が、
「1人1人の行動の結果」
と、他人事の様な発言で自粛要請などの対応を拒否。
 政府の対応はと言えば菅官房長官が
「圧倒的に東京問題」
と他人事の様な発言で責任を回避する一方で、1兆7000億円という巨費を投じた、国内旅行を推奨する『Go To キャンペーン(Go To トラベル)』を前倒しで行うなど、経済優先政策に前のめりだ。
『Go To キャンペーン with コロナ』とも揶揄されるが、誰かが評した様にまさに「れいわのインパール作戦」とでも言うべき愚行であろう。一旦上層部が承認した計画は、例えそれがどんなに無謀な机上の空論の具現化であっても粛々と、時に熱を持って実行に移すという、大日本帝国陸海軍を蝕んでいた病は全く治っていない事を露呈したと言えよう。

 一体、3~5月の「自粛」要請はなんだったのかと思うし、そのまま閉店していった多くの名店や劇場、ライブハウスとしては憤りを覚える事だろう。
 しかし休業への補償が全く期待できない以上は、自力で活動を再開して口に糊していく他は無いのが現実だ。お馴染みかさあみさんも乳飲み子を抱えて上京する。

 だがだからと言って政府の姿勢に準じて公演を行ったシアターモリエールの舞台の様に、クラスターを発生させれば一斉に誹謗中傷を浴びる事となる。

 そういう現状を踏まえれば、今回の『RISE on ABEMA』の運営側の対策は完璧だったと言えるだろう。
 伊藤代表は大会総轄で、
「客席でのライト点灯やZoomでの応援など色々試せた事は良かった。7月はコロナの影響もあって、当日計量とか対応していくが、8月から徐々に通常に戻していく」
と明言、
「もう止まらないRISE」
をキャッチコピーにすると意気軒昂だった。

 今回の大会が、神童・那須川天心2020年初試合ありき! だった事は間違いないだろう。
 何しろセミファイナルまで、他の試合中にも画面に大きく
「那須川天心の試合まであと〇〇」
と大きく表示されていたほどだ。

インタビュー前、神童の試合を見る鈴木真彦。試合の残り時間より神童の試合までのカウントダウンの方が大きな扱い…

 この大会そのものと試合が急遽決まったであろう事は想像に難くない。それは当日計量という事情もあるだろうが、通常の階級とは異なるウエートでの試合に挑んだ選手が多かった事で明らか。
 セミファイナルの王子・白鳥大珠は61kg⇒-65kg、DEEP KICK-60kgの王者だった中村寛は-70kg、現ライト級王者(-63kg)の原口健飛は-67kgでの試合となり、久々の実戦だった為を加味しても、いずれも苦しい試合運びに見えたのは筆者だけではないだろう。
 無論、それでも構わずKO決着で魅せた山口裕人は流石だと唸らされたし、同じ階級の鈴木真彦vs.ウィサンレックは熱戦となった。

 いずれも通常であれば無理を押して試合をする必要も無いポジションに居ながら試合に挑み、不満を漏らすよりは闘えた事への感謝を述べていた。
 そして神童の特別扱いにしても、それが当たり前と受け止められる空気が醸成されている事に改めて、那須川天心の神童たる所以を思い知らされた。

 負けた選手で唯一インタビュールームに姿を見せた笠原友希は落胆とか悔しさとかを微塵も感じさせず、むしろ冷静に神童戦を振り返った。そこに
「討ち取って名を上げてやろう」
という選手を募ってそれに相応しいと抜擢されたシュートボクシングの天才としての横顔や、試合前の煽り映像での挑発的な言動は無かった。

 入場してきた神童を見て
「これが那須川天心選手か! 」
と感慨にふけったと言い、
「同じリングに立ってる事に感動した」「入場時からオーラはありました」
とあっては、闘う前から勝てる見込みが無い相手だったとも思えるし、倒される瞬間まで「あのメイウェザー」に勝てると信じていた神童とは余りにも対象的だ。
 無論、
「負けたからそう言っているんだろう」
との穿った見方は可能だが、あの木訥とした佇まいから思うに、本音であろう。 

 

 一方、試合後の神童は、ノーダメージと思しき穏やかな表情。

ー今年初めての試合だがー
「色々なパターンで倒したいという自分に課した課題を、右フックやカウンターという形で克服できたので良かった」

ー笠原友希についてー
「名乗り出る事は怖い部分もあったと思うが、手を上げた勇気を称えたいし、試合ができて感謝している。自分がメイウェザーと闘った時も『やるかやらないか』でやる! で挑んで、得るものがあったので、この試合から何か感じて貰えれば嬉しい」

ーABEMA視聴者へコメントをー
「見てくれてありがとうございました。どうでしたかと皆さんに訊きたいです」

ー試合で右フックに拘った?ー
「試合でというか、練習で拘って練習しました。それが試合で出せた」

ー無観客試合でー
「普段とは違う感じ。いつもより集中出来た」

ー結果に影響はー
「(悩んで)あったかな…いつもなら、2回ダウン取ったら大技で決めてやろう! っていう感じになりますけど、そういうのが無かった」

 インタビューは、うるさ型の記者が一様に唸らされる内容ある受け答えで、舌を巻かされた。21歳と言えば、アントニオ猪木はアメリカ武者修行の頃ではあるが、格闘技界や社会を俯瞰して見、言語化してみせる説得力が「運痴」と力道山に罵られたという若き猪木にあったとは思えないし、まさしく「神童」だなと言わざるを得ない。
 RISEという団体の看板を背負っているのは当然の事として、格闘技界における存在感という意味で日本においては、朝倉未来と居並ぶ逸材であろう。
 唐突にRISE正規軍として括られ、「大将が天心」と言われて、山口裕人や原口健飛がそれを当然の事として受け止める、その構図はプロレスであれば当然アングルを仕掛けたくなる図式だが、違和感なくしっくり収まる空気にいつの間にかなっているという安定感にも驚かされる。

 そしてそれは、この日の配信が視聴数

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン