[ファイトクラブ]1969年、若獅子アントニオ猪木の快進撃!

[週刊ファイト6月18日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼1969年、若獅子アントニオ猪木の快進撃!
 by 藤井敏之
・東京プロレス挫折から日本プロレスに復帰したアントニオ猪木
・1969年の『新春チャンピオン・シリーズ』『ダイナミック・シリーズ』
・蔵前国技館:A猪木-ボボ・ブラジル、G馬場-ゴリラ・モンスーン
・大阪府立体育館:猪木がゴリラ・モンスーンに勝利!貴重写真発掘
・クリス・マルコフ、Bブラジル、馬場猪木と優勝戦は4強が同点で並ぶ
・当時からアントニオ猪木の女性ファンは多かった
・1969年末、遂に、夢であったシングル王者挑戦権をもぎ取る
・伝説のアントニオ猪木-ドリー・ファンクjr.戦 12・2大阪決戦
・本人の認める「我が人生最高のベストバウト」
・倍賞美津子さんの姿が大阪のリングサイドに・・・1969年の意義


 1967年4月6日、当時の日本プロレス・コミッショナーだった川島正次郎氏の仲裁により東京プロレスから日本プロレスに復帰して2年経過したアントニオ猪木(以下、猪木)。どうしても超えられないジャイアント馬場(以下、馬場)の大きな壁、そして日本プロレスのエース馬場を引き立たせる為のかませ犬的な役割。そう振り返れば1968年末の『NWAチャンピオン・シリーズ』において馬場のインター防衛線前にNWA王者ジン・キニスキーと室蘭(11月29日)で対決、老かいなキニスキーのバックドロップに沈んでしまう。
 続いて『新春シリーズ』においても馬場のインター選手権に挑戦して敗れた“原爆男”ウイルバー・スナイダーとの一戦(1月31日後楽園ホール)に2-1で敗れ屈辱を味わう。そしてタッグ屋(インタータッグ並びにアジアタッグ両王者)に落ち着いている現状、さらには春の大舞台に1年8ヶ月ぶりにアメリカ遠征から凱旋帰国する坂口征二の存在などに自ら焦りを覚えていた。

 1969年前半を振り返れば『新春チャンピオン・シリーズ』において日本の至宝であるインター・ナショナルタッグ王座を広島(1月9日)において“原爆男”ウイルバー・スナイダー&“鳥人”ダニー・ホッジ組に破れて一時は転落。2月4日の札幌大会で王座をかろうじて奪回するとういうミスを犯してしまう。
 続いての『ダイナミック・シリーズ』においては馬場のインターナショナル王座に“覆面の魔王”ザ・デストロイヤーが挑戦するという大きな話題にファンは注目し、どうしても陽の目を見ない状況が続く。インターナショナル選手権戦においてはテレビ画面において馬場をかばうアントニオ猪木の颯爽とする姿が映しだされたが、なぜか子供心にもエースになれない猪木のジレンマを垣間見た。

 そんな状況において1969年『第11回ワールド大リーグ戦』の参加メンバーが発表された。外人参加メンバーには“黒い魔人”ボボ・ブラジル、“人間台風”ゴリラ・モンスーンの2大巨頭の参加、そしてアメリカから“若鷲”坂口征二の帰国、そして日本チームの充実という条件が揃い発表されると同時に爆発的な人気を博した。

 4月5日、東京の蔵前国技館は熱狂した大観衆(主催者発表1万2千人)を飲み込み、入場できない人で試合開始後も会場周辺を囲んでいた。ファンは坂口征二の登場に大きな期待をよせたのだ。坂口はベテランの吉村道明とタッグを組み出陣、リングに上がるや“ヤンヤー”の歓声を浴びる。そしてファンの期待どおり覆面タッグの名手であるメディコ2号(ルイス・ヘルナンデス)&3号(トニー・ゴンザレス)を相手に柔道殺法を駆使しながら豪快な試合運びから最後はアトミック・ドロップという坂口らしい必殺技で3号を料理。一夜にして、日本マットに新しいヒーロが現れたのである。

 そしてこの日、前半戦の天王山ともいえる2大決戦をファンは固唾を飲んで待っていた。このワールドリーグ戦に優勝することが馬場さんに追いつく事であり、今後の飛躍の為にもあまりにも大切すぎる一戦に猪木は賭ける。師であるカール・ゴッチ氏をセコンドに“黒い魔人”ボボ・ブラジルとの大決戦が始まった。スタートと同時に喧嘩ファイトで勝負にいった猪木は得意の足殺しに移行するが、ブラジルは猪木を場外へ落とし上がってくるところに必殺ココバットを見舞い猪木をKOする。猪木の初優勝を願うファンの夢も打ちひしがれ、館内には重い空気が漂う。

 エースである馬場はもう一方の雄である“人間台風”ゴリラ・モンスーンと相対したが、数分後にマットで伸びていた。そう必殺技32文ロケット砲をかわされ自爆、そこにモンスーンのフライング・ソーセージが舞い下りてきたのである。日本の誇る2大エースの敗北にファンは唸るしかなかった。ただリーグ戦そのものは優勝が混沌として益々その人気に拍車がかかり、地方でも満員記録が続くというすさまじいプロレスブームが起こっていた。

 そしてリーグ戦の中盤において超満員の大阪府立体育館(主催者発表1万人)で今後の猪木の行方を左右する対戦が行われることとなる。幸いにもこの試合の秘蔵写真が発見されたので羅列してみていこう。


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