2020年、プロレス人気は復活するのか!?

 ラグビー人気は、まだまだ健在のようだ。
 今年の1月12日に開幕したトップリーグは軒並み1万人以上の観客を集め、特に1月18日の愛知・豊田スタジアムでは37,050人という新記録を樹立した。1月11日の大学選手権決勝では、東京・新国立競技場に57,345人の大観衆が詰め掛けている。1月19日の東京・秩父宮ラグビー場には日本代表のトンプソン ルーク(近鉄ライナーズ)の引退試合ということもあって、下部リーグのトップチャレンジ・リーグとしては異例の14,599人が集まった。

 しかし、これらは決して偶然の出来事ではない。ラグビーには、せっかくのチャンスをみすみす逃した苦い経験があるのだ。

ラグビー協会は安定収入に拘ったために、苦境に陥った

 2015年、イングランドで行われたラグビー・ワールドカップで、日本代表は優勝候補の南アフリカ代表(スプリングボクス)を破るという、大番狂わせをやってのけた。この快挙に日本中でラグビー・ブームが沸き起こり、特に中心選手の五郎丸歩(ヤマハ発動機ジュビロ)がクローズ・アップされたのである。
 ところが、ワールドカップの直後に開幕したトップリーグでは、空席が目立っていた。前売りチケットは完売となっていたのに、秩父宮ラグビー場は満員とは程遠い状況だったのである。

 その原因は、日本ラグビー協会の読みの甘さにあった。トップリーグには、年間パスポートという商品がある。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)の年パスのようなものだが、USJには入場の制限などはない。ところが、スポーツ・イベントには客席数が限られているため、入場制限が必要となる。
 トップリーグの年パスは、協会の会員が1万8千円で、一般では2万3千円。普通に購入すると自由席は2千円なので、1年に10試合以上観戦するコアなファンにとっては、利用しない手はない。
 それ以外でも、チームの会員になると、かなりのお得感がある。あるトップリーグのチーム年間会員になれば、2千5百円でそのチームの試合は1年間も見放題。自由席は2千円なのだから、そのチームの試合を2試合見れば充分に元は取れるのだ。

 トップリーグの年パスやチーム会員のチケットを確保するため、一般に販売するチケットを制限しなければならない。秩父宮ラグビー場のキャパシティが2万5千人としても、前売りチケットは5千人分ぐらいしか販売しなかった。そのため、2015年のトップリーグは、前売りチケットが完売しながら、空席が目立つという現象が起きたのである。
 そして『にわかファン』はラグビー場から離れ、再び冬の時代を迎えた。しかし、2019年のワールドカップでラグビーは人気を取り戻し、4年前の苦い経験を踏まえて集客に成功したのである。

 ラグビー協会は、安定収入に拘ったきらいがあった。年パスはたしかに安定的な収入に繋がるが、それ以上のファン獲得は望めない。いわゆる『一見さん』こと『にわかファン』を取り込めなくなったのだ。
 テレビ中継でもそうだ。現在、ラグビー中継と言えば有料のJ SPORTSが主流だが、これもラグビー協会が安定収入を確保するためにJスポに放映権を売ったのである。
 Jスポなら試合中に余計なCMは入らないし、レベルの高い放送が期待できる。ほとんどのラグビー・ファンはJスポに加入した。

 ところが、これには重大な副作用があったのだ。ラグビー中継はJスポが主流になったため、地上波のラグビー中継が激減した。たまに地上波でのラグビー中継があったとしても、ラグビー・ファンのほとんどはJスポに加入しているため、わざわざ地上波中継は見ない。そして、地上波でのラグビー中継は視聴率が稼げないため、ラグビー中継はしないという負のスパイラルに陥ったのである。こうして一般の人は、ラグビーを目の当たりにする機会を失った。

プロレス・ブームと何年も言われているが……

 翻って、プロレス界はどうか。今年の新日本プロレスでの1月4,5日の東京ドーム大会では、2日間で7万71人(主催者発表)を動員した。1日に平均すると約3万5千人で、2日続けて3万人以上を集めるスポーツ・イベントなど、そうはない。

 ただ、プロレス・ブームと言われるほど、ブーム感がないのも事実である。一般の人に、知っているプロレスラーの名前を挙げてみよと言っても、ほとんどの人は答えられまい。昔なら、ジャイアント馬場やアントニオ猪木の名前はプロレス・ファンではなくても誰でも知っていたが、そんなプロレスラーはいなくなった。

 現在の地上波でのプロレス中継は、新日が深夜に細々と続けているだけ。有料テレビでは新日の他に全日本プロレス、プロレスリング・ノア、ドラゴンゲートなどを見ることはできるが、有料テレビを見るのはコアなプロレス・ファンしかいない。
 要するに、プロレスを一般の人が見る機会は激減しているのだ。ある統計では、今の中学生は『プロレス』という単語すら知らないらしい。子供の頃はプロレスごっこをやっていて、プロレスの話題についていけなければ仲間外れにされていた時代には信じられないことだ。

 今のままでは、いくらプロレス側が『プロレス・ブームでっせ』と吹聴しても、世間的には全く浸透しないだろう。プロレスの面白さを、地上波テレビなどでアピールする必要がある。