[ファイトクラブ]新間寿氏 WWE 殿堂入り! 過激な仕掛け人の微細な気配り

[週刊ファイト8月15日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼新間寿氏 WWE 殿堂入り! 過激な仕掛け人の微細な気配り
  Photo & Text by こもとめいこ♂
・新間寿氏殿堂入りへ各界から祝辞
・過激な仕掛けと繊細な心配り
・新日本プロレスからアノ御大も・・・しかし
・生きるプロレス史の足跡


 8月6日(火)帝国ホテル富士の間で、東京スポーツ新聞社坂井修社長、坂口征二新日本プロレス相談役、佐山サトル、藤波辰爾、大塚直樹氏他が発起人となって『新間寿氏WWE殿堂入りを祝う会』が行われた。


東京スポーツ新聞社 坂井修 代表取締役社長
ベースボールマガジン社 池田哲雄 代表取締役社長
竹田勝司ジャパンプロレス元会長
坂口征二新日本プロレス相談役

 レスラー以外で日本から WWE 殿堂入り(レガシー部門)したのは新間寿氏が初。
 昭和59年刊の『プロレス仕掛け人は死なず』によると、MSG タッグリーグ戦の真っ最中に、 新日本プロレスを追われた新間寿氏を訪ねてきたビンス・マクマホン・シニアが
「お前がイエスと言えば、契約があろうとなかろうと、私が連れて来たレスラーを全員連れて帰ってやるよ」
と、泣かせる言葉をかけたと記されている。新間寿氏はまた前掲書で、同じ背広組としての矜持を共有していたとも語っており、その絆を
考えれば今回の殿堂入りはむしろ遅すぎたたと言っていいかもしれない。


◎各界からの祝辞と展示から伝わる偉大な功績

姪の声優(名探偵コナン他)・高山みなみさんから




 本誌読者にいまさら新間寿氏の功績について語るのも釈迦に説法ではあるが…東京プロレスの旗揚げと崩壊で猪木との訴訟合戦を経て、新日本プロレス旗揚げに尽力し、引退していた豊登に
「もうギャラを受け取ってしまった」
と嘘を言ってカムバックさせたのが初の“仕掛け”と言われる。

 続いて、東京スポーツと計ってのストロング小林の引き抜き、大木金太郎との一戦などの日本選手対決、アントニオ猪木の一連の格闘技戦、とりわけモハメド・アリとの世紀の一戦はやはり新間寿なかりせば実現しなかったし、IWGP構想など、現在の新日本プロレス隆盛の基礎を築いたのは新間寿氏の仕掛けあったればこそと言わざるをえないのは厳然たる事実である。

 猪木以外でも、佐山サトル、前田日明、長州力など、プロレス界に多大な影響を与えた名レスラーの入門~誕生も新間寿氏の尽力が大きい。
 そしてその功績故に、レスラーから疎んじられ、新日本プロレスを追われる事となったが、その後も第一次UWF旗揚げに関わり、佐山サトルのスーパータイガーとしての復活や前田日明の覚醒など、その後のUWF、格闘技ブームへの大きなうねりを創った。
 さらにジャパン女子プロレスで大仁田厚復活を演出、同時に男女混合団体という今では当たり前の形態のパイオニアでもあり、続いて長男の新間恒寿氏とユニバーサルプロレスを興し、ルチャリブレを啓蒙、浅井嘉浩を世に送りだした。
 また、スポーツ平和党幹事長を務めて猪木の政界進出を助け、プロレスラーの政界進出の道を切り拓いた。

 大塚直樹、永島勝司、上井文彦他、新間氏の跡を継いで一時プロレス界の寵児となった背広組は、結局大きな傷を負い、リングから遠ざかっていった。未だ戦場にありと言いきれる新間氏のバイタリティには敬服せざるを得ない。
「リングの中は聖域」
とは新間氏の口癖だが、逆にリング外で超一流のファイターだったのが新間寿という、闘魂を燃えたぎらせた背広組だったのだ。 


 この日のゲストや贈られたお祝いから、新間氏の袂を分かった相手であっても受け入れる度量も感じさせる
例えばこの日の発起人の 1 人である大塚直樹氏は、かつての部下ながらクーデターで背後からバッサリ斬りつけてきた1人だし、テレビ朝日、東スポ共に、自分より新日本プロレスを擁護したとの怒りはあった筈だが、今や意に介してない様子だ。



昭和57年の10周年セレモニーで坂口征二を「旗揚げメンバーではなかったから」とリングに呼び込まなかった非礼を37年越しで詫びた大塚直樹氏。2度のがんを克服して元気な姿をみせた。




◎新間氏の心使いと、メディアという名の戦友

 そんな、手練手管で闘う一方、新間氏の心使いというのもまた、プロレス史において欠かせないエピソードでもある。

 三菱電機大久保会長他、多くの人物をリングにあげる事でお金で買えない感動を与え、一方で マクマホンファミリー他海外のプロモーター、レスラー、背広組に対してのお土産攻勢などの膨大な接待費は新日本プロレスのクーデターの要因の1つとも言われている。
 そしてその気遣い、気配りは84歳となった今も変わらない。この自らが主役の夜も、それは遺憾なく発揮された。
 例えば佐山サトルが普段杖を付いている事は衆知の事だが、坂口征二相談役も、本来車椅子で移動する体調の様だ。だが、そこは世界の荒鷲の矜持で、この日、舞台に自らの脚で登壇してみせた。

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