[ファイトクラブ]佐々木投手登板回避と怪我とエンタメと「WRESTLE-1をぶっ壊す」と

[週刊ファイト8月15日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼[ファイトクラブ]「WRESTLE-1をぶっ壊す」
  Text by こもとめいこ♂

・佐々木朗希投手決勝戦登板回避は何故生じたか
・藤村加偉左橈骨骨折の原因
・才木玲佳vs.ジャガー横田戦他画像増量でお届け
・今日の櫻田愛実リングアナ

夏の甲子園、『第101回全国高校野球選手権大会』が始まった。
 小学生の夏休みといえばテレビで高校野球を観るのが当たり前だった世代からしてみれば、昨今はゴールデン帯の民放地上波から巨人戦中継が消えた事に象徴される様に野球人気そのものの陰りもあって隔世の感がある。
 だがこの夏はある選手の起用を巡って社会的な関心を集めるに至った。
 岩手県立大船渡高等学校・佐々木朗希投手(3年生)の、岩手県大会決勝戦の登板回避である。

 決勝戦だけに限って言えば、国保陽平監督の登板回避に外野から異論を挟む余地はない。
 落合博満氏の
「周りがとやかく言う問題じゃない。指揮を執った監督が最善策を取っただけ」
とのコメントが全て。

 無論、日曜朝の『サンデーモーニング』ご意見番、張本勲氏の
「がっかりした」「絶対投げさすべき」
という“活”にも、広岡達朗氏の
「連投できないなら、普段のトレーニングの問題」
との批判も、プロ野球の超一流の選手・指導者だっただけに傾聴に値する面もあるが、お2人とも戦中派で、平成も終わった2019年に分が悪い精神論ではある。
 やはり国保陽平監督の、医師やトレーナーのアドバイスを得て…という説得力の方が、“正しさ重視”のネットメディアでは多勢と思える。

  

ちなみに国保陽平監督の祖母が、グレートサスケの父と従妹だとのこと

 一方、国保陽平監督の立場からみれば、これまでの経緯をふまえてのこの夏の闘いではあった。

 そもそも佐々木朗希投手は中学生の時から全国に名前の知られた名投手で、大阪桐蔭からスカウトも来たほどの逸材だったという。 
 ところが地元の仲間と野球をやりたい、と泣かせる理由で越境を拒否、大船渡へ入学した。1年生の時は成長痛で、何もしなくても腰が痛かったといい、公式戦での登板は無かった。一躍その名を知られたのは昨年、2年生の夏。岩手県予選で最速154キロ右腕として高校野球ファンから注目を浴びたのだ。
 だが、結果として甲子園出場はならなかった。
 成長期である事を考慮した国保陽平監督は、シードの盛岡三校を下したあとの3回戦で佐々木朗希投手の登板を回避。エースナンバーを付けた佐藤健投手をマウンドに送った。
 相手は部員9人の県立高校、西和賀。春に怪我人が出て試合を棄権した経験から、ボート部を引退した助っ人2人を緊急招集したという。だがこの
「俺達が勝って大船渡の甲子園を阻止しよう」 
という失うものの無いギリギリのチームを相手に6回までノーヒットに抑えながら、7回に3点を失って大船渡は敗退となった。
 この敗戦と、佐々木朗希投手の体調も良くなったとの判断もあったのだろう。春の甲子園、選抜予選である秋の東北大会岩手県予選で佐々木朗希投手は4連投4完投。
 しかしその4試合目、岩手の強豪・盛岡大付属との準決勝で166球を投げて敗退した佐々木朗希投手は股関節の痛みを訴え、選抜出場への最期の望みとなる3位決定戦では先発を回避。
その対戦相手の専大北上と壮絶な打撃戦になり、結局佐々木朗希投手が緊急登板したが、やはり本来の調子にほど遠く、打ち込まれて11-10で東北大会進出を逃した。
 つまり無理をさせなくてもさせても甲子園に行けないという経験を夏春一度づつして迎えたのがこの夏の岩手県大会だったのである。
 結果、1戦必勝を掲げながらも佐々木朗希投手の酷使を回避する方針で挑んだのが、決勝の花巻東戦であったのだ。
 
 この夏もう1つ野球の熱い話題と言えば、プロ野球セントラルリーグ首位巨人の失速と、横浜DeNAベイスターズの猛追である。
 そして横浜ファンが思い出しているのが、DeNAに買収される以前、「世界で一番熱い夏」と称される1997年夏の快進撃。8月上旬、6・5ゲーム差を付けられていた首位ヤクルトスワローズとの首位攻防3連戦で3連勝を飾り、にわかに37年振りのリーグ優勝の期待が膨らんでいた。
 イケイケの大矢明彦監督率いる横浜ベイスターズに対し、スワローズ野村克也監督は冷静だった。
 3週間後、9月2日、3日の対横浜2連戦を天王山と位置付け、尾花高夫投手コーチに
「9月2日に石井一久を万全の状態で投げられる様に調整させろ、必要ならローテーションを1回飛ばせ」
 と支持。結果、2・5ゲーム差で迎え打った横浜相手に石井一久はなんとノーヒットノーランを達成し、翌日も連勝。終わってみれば11・5ゲーム差をつけての圧勝でリーグ優勝を飾っている。

 話を戻し、岩手県大会。組み合わせ抽選会は6月26日に行われた。岩手県勢の夏の甲子園代表は、2011年以後、花巻東と盛岡大付属が分けあってきた。昨夏は両校が決勝で激突、花巻東が代表を勝ち取っている。この夏、その花巻東と盛岡大付属は反対のブロックに別れた。つまり大船渡が甲子園に進むためには、お互い順調に勝ち進んだ場合は準決勝で盛岡大付属、決勝で花巻東を破る必要があった。
 甲子園出場、しからずんば無と考えれば、決勝の花巻東戦に佐々木朗希投手を万全の状態で先発させる必要があると、野球が好きな人なら誰でも思う。そこから逆算して、その前に負けて止むなしと腹をくくれるかどうかが問われていたのだ。

 逆に盛岡大付属は3回戦で県立の一関工に競り負けて姿を消している。準決勝、決勝を考えての惜敗とすれば、それは結果は悪かったが甲子園を目指しての過程は正しかったと考えるべきであろう。
 一関工はその勢いのままに準決勝まで勝ち進んだが、順々決勝を休んで先発してきた佐々木朗希投手に2安打完封負けを喫している。
 ポイントはここだろう。決勝へ備え、県立高校相手に佐々木朗希投手を休ませたとしたら、結果敗退してもここまで非難されたかどうか。大船渡の用法の批判は佐々木朗希投手先発回避そのものよりは、11対2という大差と、佐々木朗希投手がバッターとしてさえ出場しないという戦術にもあった。

 実際、昨夏は3回戦にセンターとして出場しているし、今夏に自ら決勝ホームランまで放ったバッティングを活かさなかった理由は良く解らない。準決勝に挑む時点で決勝の佐々木朗希投手回避ありきで動いていたのでは無いか。
 金村義明氏の、
「監督のエゴ」
 は些か厳しすぎる指摘だと思うが、些か冷静な判断力を失っていたのではないかとも思う。

「WRESTLE-1をぶっ壊す」

 

 8月1日のWRESTLE-1後楽園、上海、北米を股に掛けるCIMAが流行のフレーズを取り入れる感度の良さは流石だと思ったが、その矢先に当面のターゲットに据えていた藤村加偉が左橈骨骨折で当面欠場となったのはさすがに出来過ぎではあった。

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