[週刊ファイト7月4日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
▼ストロングスタイルプロレスの現状と今後への提言
6・20『ストロングスタイルプロレスVol.2』後楽園ホール詳報
Photo & Text by こもとめいこ♂
・リアルジャパンプロレスのキーマンは・・・
・2019年のストロングスタイル
・異種格闘技ギミックの勝算
・全カード画像増量でお届け
・愛甲猛も観戦に来ていたが・・・
平日の後楽園ホールに1549人。
ストロングスタイルプロレス実行委員会『初代タイガーマスク 佐山サトル ストロングスタイルプロレスVol.2』は個人消費の冷え込む経済状況の中にあって大盛況のうちに終わった。
しかし、リアルジャパンで鮮烈なデビューを飾り、原点回帰から一貫してストロングスタイルプロレスを実践してきた納谷幸男の姿はこの日のリングには無かった。3月の会見で平井丈雅代表は筆者に「引き続きリアルジャパン所属」と断言していたが、5月1日付けでDDTへ移籍した経緯がある。が、その移籍会見には高木三四郎社長に加え平井丈雅代表も同席しており、東京女子プロレスへ秘蔵っ子舞海魅星が所属。この日もガンバレ☆プロレスの岩崎孝樹が参戦しており、関係は良好。よってストロングスタイルプロレスへの参戦自体は継続と思われていただけに、意外! の感は強い。
不在と言えば、新間寿恒氏とUWA勢、渡部優一・スーパー・ライダーの名前も無く、初代タイガーマスク佐山サトルは復帰を明言してはいるが、所属の現有戦力はスーパータイガーと間下隼人の2名である。
毎回満員の盛況にも関わらず、団体としての寂しさは拭えず、メイン終了直後にスーパータイガーを抑える為に助っ人でロッキー川村が登場せざるを得ないのが現状だ。
無論、新間寿氏と佐山サトルの様に、袂を分かってもまた関係を修復させる懐の深さを考えれば一時期的に別の道を行くだけで、いずれは再会してより大きな事を為す事もあるはず。しかし、当面の興行を考えれば、悩ましい状況ではある事は確か。
だが、かつて新日本プロレスの戦力が一時的に薄くなった時には新戦力が成長して、より大きくなっていったのはご存知の通り。リアルジャパンでは間下隼人のさらなる飛躍が期待される。
実際、この日のロッキー川村との試合も場内を大いに沸かせる激闘。グローブを着用したロッキー川村のパンチを何発もまともに食らって耐える度に客席をヒートアップさせた。
最後は強烈な左ストレートでKOされたが、まさにストロングスタイルに相応しいド迫力ファイト。
試合後は一人で歩けず控え室へ抱え込まれたが、何とか落ち着くと
「(パンチが)想像以上に効きました…」
「(居なくなったみんなの分も)頑張らないと…」
と、前向きに力強いコメントを残した。
そして、グローブを着けたロッキー川村との異種格闘技戦スタイルは今後のストロングスタイルプロレスの方向性としても、正解と考える。第5試合では道着を着たタカ・クノウが襟を使った攻めをみせるなど、通常のプロレスとの違いを可視化するのに有効だからだ。
逆に第4試合、アレクサンダー大塚と崔領二組は、その間に挟まれて場内から解りやすさを求められてベテランながら戸惑いを憶えていた様に思える。
そもそもストロングスタイルという言葉を遡れば言うまでも無く、アントニオ猪木が発祥。
東京プロレスから舞い戻った日プロで、メインイベンターのプライドをかなぐり捨ててカール・ゴッチに師事。そして会得した“殺し”を内包させた闘いをプロレスに織り込んだ試合がいつしかストロングスタイルと呼ばれる様になった事はファイト読者には今さら言うまでも無い史実である。
かつての新日本プロレスとて勝負論のない“プロレス”ではあったし、ロープワークも飛び技もあった。だからこそ、馬場さんは
「ストロングスタイルだショーマンシップだっていうけどやってる事は同じなんですよ」
と、I.Y編集長に釘を刺してきた。
しかしお約束を極力廃し、闘いを内包した全力の試合を繰り広げた新日本プロレスのリング上に勝負論は無かったとしても、初代タイガーマスク当時の佐山サトル含めレスラー達は、ショーマンではないんだと、ファイターとしての矜持を持つプロレスラーとしてのプライドを守っていただろう事は想像に難くない。
だからこそシューティングという、リアルファイト総合格闘技の原型を産み出した佐山サトルが、紆余曲折を経て「真剣勝負ではないがガチンコ」を標榜し、原点回帰してストロングスタイルプロレスを冠した興行を行っているのだ。
現状、リアルジャパン最大の問題点は興行間隔が開きすぎるところ。納谷幸男が移籍の理由に挙げたのも試合数の少なさで、年4回はプロレスとしてはやはりドラマの展開が難しい。どうしても興行毎のテーマを打ち出す事になるが、総合格闘技でさえ、試合に連続したドラマを持ち込む昨今、ストロングスタイルを魅せる! だけでは厳しいものがある。
初代タイガーマスク佐山サトルと新間寿氏のコンビが一番人気というのも、結局他に盛り上がるドラマが無いからという事に収斂される。
となると、試合そのものでいかに闘いをみせるかが問われるが、後楽園ホールという比較的広い会場で、グラウンド主体の攻防を見せ、解らせるのも難しい。となると、グローブを着けたり、道着を着たりという異種格闘技ギミックは有効だと思える。
ヒクソングレイシーの片眼を潰し、引退に追い込んだ船木誠勝をして
「現状のプロレスラーでセメント最強」
と評する藤田和之の凄みを引き立てるのはやはり総合のスタイル。スーパータイガーも、基本は打撃とグラウンドの選手で、佐山タイガー同様の空中戦を求められるのは厳しい、その希望を断ち切るのに、総合のグローブを着用するのは有効ではないか。次戦で予想されるスーパータイガーと藤田和之戦も、総合のグローブを着用してみるのも一考ではないか。