[ファイトクラブ]デジタル時代のカメラマンの背中と“自撮り王子”宮原健斗

[週刊ファイト3月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼”自撮り王子”宮原健斗とデジタル時代のカメラマンの背中
 Photo & Text by こもとめいこ♂
・“猪木新聞”と呼ばれた週刊ファイトと全日本プロレス
・“自撮り”好きはナルシズムの表れとも言えるが
・全日本プロレス横浜文体決戦詳報
・“外敵”#STRONGHEARTSと大日本プロレスは明暗
・“自撮り王子”宮原健斗に満場一致の最高!
・絶滅危惧種・カメラマン受難のデジタル時代

 かつてタブロイド誌の週刊ファイトと言えば“猪木新聞”と呼ばれた事もあった親・新日本プロレス派、アントニオ猪木弁護士会の筆頭と、ジャイアント馬場・全日本プロレス派から仇敵の様に思われていた時代もあった。
 だが当時のI・Y編集長は決して馬場さんの事を嫌っていた訳ではなく、しょっちゅう電話をかけてきては情報を小出しにくれる新間寿氏のメディア対策によって、自然と新日プロの話題が増え、それに比して全日本プロレスの扱いが減っていったと説明していた。
 ただ、原稿で猪木に言及する事がほとんどだったI・Y編集長を馬場さんが好きでなかった事は事実。それでも馬場さんがファイトに取材拒否をつきつけなかったのは、旧日本プロレスが東京プロレス旗揚げに際し、マスコミに取材拒否をしたその数年後にあっけなく崩壊した事を反面教師にした面もあったとは思うが、I・Y編集長が言うように「馬場は大きい」の一言につきると思う。

 慎重居士と言われた馬場さんが亡くなってからも、その“大きさ”は元子さん、秋山社長にも受け継がれており、今でも『週刊ファイト』と言えば、快く会場に入れてくれる。
 だが、リングサイドで写真を…となると、「リングサイドのお客さんの妨げにならないように」と、厳重に注意を頂戴して、『ビブス』と呼ぶ、前後に数字の入ったベストを受け取ってからになる。

「マスコミは東スポだけでいい」
は、新日本プロレス現場監督時代の長州力の発言だが、それは未だ新日本プロレスのフロントに受け継がれる姿勢で、木谷オーナーはリングサイドのカメラマン一掃を検討した事もあった由。
 筆者はバリアングルモニターで極力しゃがんだままで撮影する様にしているが、それでも中腰になりたい場面もあり、当然それは良い場面、グラウンド状態で、見えにくくなる場面なのだ。
 招待客ならともかく、高い入場料を払ったリングサイドのお客様にしてみれば、自分達にお尻を向けて前に立ちはだかるカメラマンは邪魔で鬱陶しい存在なのは間違いない。顧客第一主義の観点から言えば、当然それは対策を考える事になる。無論、自社の有料動画サイトや、サムライTVなどのテレビカメラは収益の柱であるので、無くせないが、静止画に関しては公式サイトへのアップ用に最低限カメラマン1人居ればいいという時代は確実に到来している。マスコミに門戸を開く全日本プロレスも、遠からず、静止画像は後ろから撮るか、公式の物を使ってくれとなる筈。
 デジカメ、携帯端末で撮影する観客が、SNSで拡散する事を推奨している様に、メディア=マスコミでは無くなっている現状、リングサイドでプロレスメディアのカメラマンに写真を撮って貰う事に団体側のメリットはあまりないのだ。
 動画にしても、プロレスはコーナーポストに…とはいかないが、レフェリーの頭にGoPROの様なカメラを着けさせている団体はあるし、動画を撮影する業務用ドローンの価格がこなれてくれば、音楽のライブの様に空中から撮影も可能で、リングサイドのハンディカメラと比べて観客がどっちを支持するかは明白。
 それは興行に来てもらう=ライブ感を提供する時代の趨勢ではあるのだ。

 プロレスに限らず、デジタル機材の価格はどんどん下がっているので、一昔前のプロ用カメラ以上の機材を持っているアマチュアカメラマンはざら。当然、商業用写真の単価はどんどん下がって技術はあっても食べていけず、離職するカメラマンは非常に多い。
 かつての篠山紀信やアラーキーの様な、カメラマン自ら情報伝播力を持つタレント性が求められるのがデジタル時代なのである。

 そんな、カメラマンのタレント化が進む一方、プロレスラーの側も自身がメディア化、カメラマン化する事が求められている。
 木谷オーナーが新日本プロレスの全レスラーにTwitterのアカウントを作らせた様に、団体、レスラーによるSNSを使った広報は必須の時代となっているからだ。
 “自撮り王子”と呼ばれる三冠王者・宮原健斗は、単に平成生まれの若い選手だというだけでなく、そういう意味で非常に現代的なプロレスラーだと言う事ができる。


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