ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』60[ファイトクラブ]ニューヨーク珍道中(後編)

[週刊ファイト2月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』60
 ニューヨーク珍道中(後編)
・ニューヨークの虜になった理由:年中スポーツが楽しめる
・アメリカ4大スポーツとニューヨークの各2チーム
・マジソン・スクエア・ガーデン(MSG)とナッソーコロシアム
・NHLニューヨーク・アイランダーズ vs. アナハイム・ダックス
・待てど暮らせどバスが来ない。しばし途方に暮れる
・タクシードライバーの声が天使の声に聞こえた
・ブルックリン地区にあるBARCRAYS CENTERは地下鉄駅の目の前
・NBAブルックリン・ネッツ vs. オーランド・マジック
・次のニューヨーク行きはいつにしようかと虎視眈々


 野球だけではない! ニューヨークのスポーツの楽しみ方。憧れのマジソン・スクエア・ガーデン。大熱戦のアイスホッケー&バスケットボール。
 初めて行く会場は要注意! 見知らぬ土地で途方に暮れる! タクシーの運転手が天使に見えた!?

オイラがニューヨークの虜になった理由のひとつは、一年中いつ来てもスポーツが楽しめるところです。
今回の滞在では、アイスホッケーのニューヨーク・アイランダーズ戦と、バスケットボールのブルックリン・ネッツ戦を観戦しました。

アメリカでは、各州にフランチャイズのプロチームを持っており、ほとんどの市民が地元のチームを応援します。ホームゲームでは、99%が地元チームのファン! オイラのように、関東に住んでいながら阪神ファンというひねくれ者はほとんどおらず、肩身の狭い思いをしているのです(泣)。
とはいえ、アメリカには50州以上あり、その上カナダのチームも加盟しているので、アメリカ4大スポーツの全てのチームが各州に存在するとは限りません。

その点ニューヨークは、その全てにおいて2チームずつのホームチームを持つという贅沢さ! さすがはアメリカ屈指の大都会ですね。

アメリカ4大スポーツは、4月~9月が野球(MLB)、9月~翌1月はアメリカンフットボール(NFL)、11月~翌4月はバスケットボール(NBA)、10月~翌4月はアイスホッケー(NHL)と、オフになる期間は全くありません。しかも、前述の通りニューヨークには各スポーツ2チームずつあるので、どちらか一方のチームが遠征に出ていても、必ずどちらかがホームゲームを行っている日程になります。つまり、一年を通してニューヨークでゲームのない日は無いと言っても過言ではないのです。

ニューヨーカーが熱狂するホームチームは、以下の通りです。
MLB:ニューヨーク・ヤンキース、ニューヨーク・メッツ
NFL:ニューヨーク・ジャイアンツ、ニューヨーク・ジェッツ
NBA:ニューヨーク・ニックス、ブルックリン・ネッツ
NHL:ニューヨーク・レンジャーズ、ニューヨーク・アイランダーズ

ニューヨークでスポーツ会場といえば、忘れてならないのがマジソン・スクエア・ガーデン(MSG)です!
MSGは、WWEの総本山として、プロレスファンにもお馴染みですね。子どもの頃、年に一回のMSGからの中継に胸踊らせたものです。新日本プロレスのシリーズには、MSGシリーズやMSGタッグリーグ戦というのもありました。シリーズの冠名になるほど、日本のファンにも有名でしたね。

20数年前、初めてMSGでWWF(当時)の興行を観た時は本当に感動しました! このリングで、猪木さんが、藤浪さんが、そしてタイガーマスクさんが戦ったのかと…。

ここまで煽っておいて、大変申し訳ないのですが、今回はMSGでの観戦は一試合もありません(笑)。
MSGの魅力は、その伝統に加え、アクセスの良さにあります。なんと、マンハッタンのキーステーション、ニューヨークペンステーションに直結しているのです。東京で例えるなら、東京駅や新宿駅に直結しているくらいの便の良さです!
しかし、今回は敢えてダウンタウンを離れ、これまで行ったことのない会場をチョイスしてみました。
ニューヨーク郊外にあるクイーンズ地区。その外れに、『ナッソーコロシアム』があります。
ナッソーコロシアムは、数年前までNBAのニューヨーク・ネッツ(当時)とNHLのニューヨーク・アイランダーズが本拠地としていました。しかし、両チームとも今はブルックリン地区の『バークレイズセンター』に移ったので、ゲームが行われる機会も少なくなってしまいました。
今日は、旧ホームのアイランダーズがゲームを行うというので、小旅行を兼ねて行ってみることにしました。

インターネットを駆使して、ナッソーコロシアムへのアクセスを調べます。本当に便利な世の中になりました。
それによると、ペンステーションからロングアイランドレールロード(LIRR)で終点のHenpstead駅まで行き、そこからバスに乗り換えるとあります。
んー、乗りなれない鉄道、それに苦手なバスにも乗らなければならない…。かなり難しそうで、運賃も掛かりそうです。

オイラは、地下鉄のunlimitedpass(乗り放題チケット)を持っているので、途中駅のJamaica駅まで地下鉄で行き、電車賃を浮かせることにしました。
LIRRに乗り換えると、アイランダーズのユニフォームを着た人たちがたくさんいたのでもう安心! バスへの乗り換えも、あとはこの人たちに着いていくだけでOKです。

予想通り、ナッソーコロシアムはかなりのへき地にありました。気付けば、ダウンタウンを出発してから2時間以上が経っています。
さすがにMSGほど大きくはありませんが、なかなか立派できれいなアリーナです。
今日はここで、アイスホッケー、ニューヨーク・アイランダーズ vs. アナハイム・ダックスの一戦が行われます!

アイスホッケーは、日本ではなかなか馴染みの薄いスポーツですが、何度も言っているようにアメリカやカナダではメジャースポーツのひとつです。
この日は、日曜日のデーゲームということもあり、2万人超満員のお客さんがナッソーコロシアムに詰めかけています。

試合は、1ピリオド20分で3ピリオド行われます。地元ニューヨーク・アイランダーズは、ゲーム開始からアナハイム・ダックスを圧倒!
アイランダーズのゴールが決まる度に、お客さんが総立ちとなり、会場が割れんばかりの歓声が起きます!
日本のプロ野球やJリーグと違い、応援団はいません。アイランダーズがチャンスとなると、自発的に『Let’s Go ILANDERS!』の声が掛かるのです!

結局、アイランダーズがダックスを3ー0と完封しました!
ニューヨークっ子は大喜びで家路につきます。
帰り道は来た時の反対を行けばよいわけですので、もう完璧に頭に入っています。
来る時にバス停の場所をしっかりと覚えておいたので、帰りは道路を渡った反対側のバス停で、バスを待てば良いわけです。

しかし、待てど暮らせどバスが来ません。
観客の大半は自家用車で来ているとはいえ、これだけの大観衆が集まったのですから、バスで帰るお客さんも相当数いるはずです。
むしろ、こんな時は「臨時バス」が出てもおかしくはありません。
もしかして、会場の近くに特設の「臨時バス乗り場」があったのかも…。
何よりオイラを不安にさせるのが、オイラの他に誰一人バスを待つお客さんがいないことです。寒風吹きすさぶ、夕暮れ過ぎの真っ暗なバス停で、オイラ一人が立ちすくんでいるのです!
行きのバスは満車状態でした。なのに、なぜ誰一人バスに乗ろうとする人がいないのでしょうか?
最悪タクシーに乗ればよいという
甘い考えも、すぐに消え去りました。流しのタクシーは、すでにアイスホッケー帰りのお客さんを乗せているため、「空車」の車は皆無なのです!
もう一度、会場に戻るべきか? このままバスを待ち続けるか? それともオイラのインチキ英語を駆使してタクシーを呼ぶか…?
バス停を離れた途端にバスが来る可能性もあるし、会場に戻ったところで、もうほとんどのお客さんは帰ってしまったことでしょう。
ただ時間だけが過ぎ、しばし途方に暮れてしまいました。


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