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昭和のプロレス・番外コラム2 障害者プロレスを見てきました(後編)

 さて、第二試合は、お待ちかねの世界障害者プロレスミラクルヘビー級選手権試合である。第11代障害王・ノーシンパシー選手と、挑戦者よっこいしょ選手のタイトル戦だ。
 膝立ちで行われたこの試合、なかなか名勝負であった。強烈な打撃を駆使し、ジャンプ力のあるチャンピオン・ノーシンパシーに対し、足技だけで対抗するよっこいしょ選手。
 
 特によっこいしょ選手の足技は普通ではない。マウントポジジョンに入ろうとするノーシンパシー選手の身体を足でガードする。更に、バランスを崩しマットに横たわるノーシンパシー選手に対して、踵を落としていく。まるで、ブラジリアン柔術をも彷彿させる見事な動きなのだ。
 結果的にノーシンパシー選手が王座を防衛したのだが、これは再戦必至の好カードではないだろうか。

 第三試合はタッグマッチである。障害者でもまだ軽度の障害である4人は立った状態での試合である。サンボ慎太郎、天才まるボン組と永野V明、あらいぐまラジカルのタッグマッチであった。
 サンボ慎太郎選手の粘り強い関節技は見事であり、その佇まいも味わいがある。また、対戦相手の永野V明は九州で障害者プロレスのローカル団体「フォース」を主催しているという。障害者プロレスにもローカル団体があるのか、これは聊か驚きであった。
 
 結果は、サンボ慎太郎が永野V明に捕まり、サンボ慎太郎、天才まるボン組が敗れたのだが、知的障害のある天才まるボン選手のトリッキーな動きには会場が大いに沸いた。どこかほのぼのさせてくれる天才まるボン選手は、また試合を見たくなった選手の一人である。

 第四試合は、陽ノ道、高王組と虫けらゴロー、ロリろり太の試合である。この試合も立ったままである。陽ノ道、高王組はなかなかのイケメンなのだが聴覚障害があり、入場テーマが流れない。一方、陽ノ道、高王組は健常者ではあるが、引きこもりとロリコンという強烈なコンビ。健常者コンビが勝ちを収めたのだが、内容的にはインディーの若手レベルには達していた。
 特に上背があり、ボクシング歴のある高王選手は充分健常者のプロレス団体でも通用するのではないだろうか。なお、陽ノ道、高王組によるイケメン手話講座というのがあるらしい。興味のある女性は申し込んでどうだろうか。

 第五試合は壮絶であった。健常者だがガン患者の中嶋有木と、盲人柔道の日本代表にもなったというハードロックの試合。立った状態の試合であったのだが、ハードロック選手の強烈な体落しには仰天させられた。中嶋選手が瞬く間に粉砕されたのだが、この男は強すぎる!リアルファイトでも充分に通用する選手である。パラリンピックもあるのだから、総合のリングで、目の見えない選手のリアルファイトがあってもいいはずである。

 第六試合は関口洋一郎VS福祉パワーである。関口選手は数年ぶりの試合復帰であるという。ドクターによるプロレス活動のストップからの奇跡の復帰というから、障害者プロレスの厳しさがそこに感じられた。やはり、彼らは危険と隣り合わせでプロレスにトライしているのだ。
 この試合、健常者である福祉パワー選手は、膝立ちで戦う為に足を固定する拘束具をつけて戦っていた。福祉パワーが勝利を収めているが、関口選手の今後が楽しみである。

 そして迎えた第七試合。いよいよカリスマの登場である。世界障害者プロレススーパーヘビー級選手権試合。第8代障害王である鶴園誠と真・大玉との対戦であった。

 レスリングで全国大会でのキャリアのある真・大玉選手の激しい打撃が、チャンプ・鶴園選手を追い込んだ。あわやと思われたのだが、真・大玉の流血によりドクターストップに終わった。消化不良の印象があるが、鶴園選手の打たれ強さが目立った試合であった。この試合は、ぜひ再戦をお願いしたい。

 興行の最後は、公開入団テストであった。アンチテーゼ北島選手が、テスト生の柳下ミツル選手とのエキシビションマッチを行い、その合否を観客がジャッジするという内容であった。9名中、5名が合格の札をあげたら、柳下選手は正式に入団が認められるという。

 だが、テストの内容は褒められたものではなかった。腰が引けた柳下選手は逃げ回り、試合中、プロレスへの熱意が感じられることはなかった。観客のうち5名が札をあげたので合格とはなったが、同情票であった可能性が高い。「合格した気がしないだろう」という北島選手の言葉が印象に残ったテストであった。柳下選手は、今後の精進が必要であろう。

 今回、初めての障害者プロレスだったのだが、充分すぎるほど“プロレスしていた”といえる。興行としての完成度、選手たちが必死に戦う姿、どれもがプロレスとして成熟していた。安っぽい感動物語では伝わらない障害者の現状を見たような気がしたのだ。食わず嫌いはいけない、そこにプロレスがあるなら、プロレスファンはいくべきである。
 ドッグレッグスという不思議の国、無人島と思われたこの島にもプロレス者は住んでいたのだ。

 次回は、2008年11月22日(土)、新木場 1st RINGにて、障害者プロレスの興行がある。ここに、断言する!一見の価値はある!プロレスを愛する者ならば、ドッグレッグスをしかと見よ!

                                                 山口敏太郎

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チャンピオンの鶴園選手と筆者

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2008年05月20日 00:12に投稿されたエントリーのページです。

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