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プロレス頭のトレーニング? 「マジック革命!セロ」の新作番組は史上最低の完成度

 24日夜、フジテレビの「ガスペ!」特番枠で放送された「マジック革命!セロ」が、プロレス関係者の間でその恥ずかしい内容故に物議を醸し出している。この回は、ロサンジェルスで行われた”マジシャン・オブ・ザ・イヤー”をセロが受賞した記念というテーマのもと、ハリウッドでのロケを含む構成で2時間番組が制作された。ところが、カット割りの編集権はマジシャン側の担当であるにもかかわらず初歩的なミスを連発、マニアのファンを失望させてしまった。セロは売れっ子になった途端、テープの提出締め切りに間に合わなかったためなのか、細部のコマ切り編集が雑になり、バレバレのネタが続出していたのだ。

 セロのマジックは、10数年ほど前に全米を震撼させたデビット・ブレインのストリート・マジックをベースにしているが、聴衆はすべてやらせである。この回も、高級自動車展覧会やテラスのあるカフェ・レストランを背景に、明らかなさくら客の前でガラス貫通芸を披露していた。しかし、レストラン自体がセット丸出しで、女性の驚きの表情が生かされていない。自動車の展覧会場だと視聴者に思わせておいて、別の場所で撮影したトランプのカードが車の窓を貫通するスポットは、あまりにもさくら客が自動車ファンとかけ離れていて、フジテレビの企画意図が疑われる始末であった。

 テレビ東京が最初に「セロ」の企画を買ったデビュー作での斬新さと衝撃に比べれば、予算が10倍になったフジテレビの、制作陣の発想の貧困さはどうだろう。小学生の姉妹とその家族を使い、これから行われることがすべてスケッチ・ブックにあらかじめ描かれているとするイリュージョンでは、やらせ家族とリハーサルをやり過ぎたためか、途中で台詞を忘れた姉妹のせいで、100%ハイスポットであることが簡単にわかってしまう。おまけに2時間の番組中、いわゆる新ネタは皆無で、同業者からネタを買う側になってしまったセロなのだ。
 食物を使うネタのしょぼさが度々指摘されてきたにもかかわらず、ギャル曽根とのラーメン大食い競争では、情けない映像編集ばかりが目立ってしまい興ざめであった。また、香取慎吾をダシに使い、スイカから種を消すという臭い芝居には唖然とした。夏の風物のイメージ・トレーニングから、いわばフィニッシュ(種なしスイカ使用)だけ決めてスタジオ収録したものの、起承転結のストーリー構成が練られてなかったため、視聴者に展開を読まれてしまう。フジテレビが制作資金を捻出した映画『西遊記』公開とのタイアップとはいえ、「モンキー・マジック」はスペル・デルフィンのアステカ式ジャーマンのタイミングとスピードだけで十分なのであった。

 今回の放送がプロレス関係者の話題になったのは、22日に福島市で行われた『プリンセス天功スーパーイリュージョン 2007サマーツアー』にて、天功が箱抜けエスケープ・イリュージョンに失敗、病院送りとなったからである。アクシデントは業界用語の「ストレッチャー・ジョブ」ではなく、マジに「山いっちゃた」わけであるが、その報道内容には大笑いだ。種を知っている者なら、「あと1センチで右目に剣が突き刺さる状態だった」という主催者発表は200%嘘であるとわかるからだ。
 新聞報道を読んで、どの部分がマジで、どれがエスケープの仕組みを一般人向けにカムフラージュするためのアングルか、ブッカー経験者ならお見通しであろう。火曜日のプロレス関係者間の電話内容は、マジック・エンターテインメントのプレゼンテーションと、プロレス表現法の相関である。プリンセス天功からセロ新作のしょぼさまで、魔法使いたちによる「錯覚の芸術論」に会話が終始したのであった。

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2007年07月25日 02:03に投稿されたエントリーのページです。

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