2011年2月4日(金)、後楽園ホールにてプロレス界のお騒がせ男だった安田忠夫が引退記念興行を行った。
ギャンブル狂、借金漬け、練習嫌い、なまくらなど色々言われたが、逆にサラリーマン化して魅力の乏しいプロレスラーが増えた昨今、破天荒なその生きざまは、まさにプロレスラーそのものと言える。こういう、豪快さを兼ね備えたプロレスラーが、プロレス界を去るのは非常に寂しいと思えてしまうものだ。
この大会では安田は、なんと3試合も行うという強行軍。相撲時代の後輩にして、横綱まで登りつめた曙とど迫力のぶつかり合いを演じた後、大谷晋二郎と組んで、高山善廣、鈴木みのると対決。愛娘AYAMIさんがセコンドについており、父親が苦しむ姿を心配そうに見つめる。試合終盤、安田は、大谷とのタッチを拒否し、俺が戦うと、高山、鈴木の2人を相手に孤軍奮闘、必死で食らいつくが、最後は、鈴木のゴッチ式パイルドライバーに屈した。
休む間もなく、天龍源一郎が入場、天龍がガウンを脱ぐ前に奇襲攻撃で襲い掛かった安田が、天龍に真っ向勝負を挑むが、最後は、足四の字固めを食らう。ギブアップしないで耐える安田だが、父親の姿を見かねたAYAMIさんが純白のタオルをリングに放り投げる・・・・、プロレスラー、安田忠夫のラストマッチは幕を閉じた。
引退セレモニーでは、大会実行委員の田崎健太氏、橋本真也の長男、橋本大地から花束、相撲時代の親方、先代九重親方こと北の富士関からの電報、新日本プロレス時代の同僚レスラー、中西学、小島聡、蝶野正洋、武藤敬司からビデオメッセージが会場に流れた。
そして、愛娘AYAMIさんからの手紙、「バンナ戦の時も嫌で仕方なかった。借金で母を苦しめた思い出しかなくて嫌いだった。でも(安田が)自殺未遂した時、どんなパパでも私とって大切なパパだと涙が止まらなかった。それから仲良くなれた、これからも仲良くしようね」と読みあげられると、安田は照れながらも感極まった感じに。
「生まれかわったつもりでブラジルで頑張る」というラストメッセージ、10カウントゴングの後、かつてのバンナ戦の感動を彷彿させる、AYAMIさんを肩車して、リングを一周、ファンに最後の別れを告げた。
試合後のインタビューでは、「カムバックはしない、(引退してもすぐ復帰するので)プロレスラーの引退が嘘みたいに言われるの嫌だった、これだけは書いておいて下さい!」と語った安田。
今後は、ブラジルで相撲を教える予定だが、現在、八百長問題で揺れる角界を心配し、「大相撲が無くなったらどうしよう」と最後まで笑いを誘い、笑顔でプロレス界を去っていった。
存在そのものがプロレスラー、泣き笑いの人生劇場を見せてくれる昔のプロレスラーがまた一人いなくなる事を寂しく感じる、涙あり、笑いありの安田らしい引退興行だった。
リング上のレスリング、試合だけじゃなく、その生きざま全てで、ファンを楽しませた、本物のプロレスラー、安田忠夫、有難う!
■ 安田忠夫引退記念興行
日時:2011年2月4日(金)18時30分開場19時試合開始
会場:後楽園ホール
<メインイベント・安田ラスト・マッチ >
○天龍源一郎
(4分36秒 足四の字固め→タオル投入)
●安田忠夫
<第四試合・安田記念タッグ>
○高山善廣、鈴木みのる
(21分59秒 ゴッチ式パイルドライバー→体固め)
●安田忠夫、大谷晋二郎
<第三試合>
○田中将斗、佐藤耕平
(15分57秒 スライディングD→体固め)
●金村キンタロー、吉江 豊
<第二試合>
○嵐、維新力
(13分52秒 パワーボム→エビ固め)
●ヒロ斎藤、長井満也
<オープニング・マッチ>
○曙
(7分52秒 ボディープレス→体固め)
●安田忠夫
詳細版は別冊ミルホンネット サスケ&二見T-1社長お騒がせコンビ出陣 安田忠夫引退が暗示する情景に掲載されました。