滑川康仁の「魂見せろ!」の叫び――その時、試合は動いた! パンクラス後楽園大会・試合後インタビュー

 1日・パンクラス後楽園ホール大会のメインイベント、KEI山宮VS金原弘光の息詰まる打撃戦は、最終ラウンド終盤における、金原セコンド滑川康仁の「プロレスラー魂見せろ!」の強烈な檄が勝敗を分けた――。試合後コメントブースにて、勝者山宮、敗者金原ともに、「“あの一言”が勝負のポイントだった」と分析した。
 「ミドルが効いて…」と、左ヒジをアイシングしながらコメントブースに現れた山宮。金原の右ミドルを食らい続け、真っ赤に腫れ上がった左脇腹が激闘を物語る。しかしその表情はとことん明るい。
 ――金原選手の印象は?
 「不思議な感じでしたよね。試合前にリングの中央で向かい合った時、『あ、TVや雑誌でいつも見てきた金原さんだ』って、嬉しくなっちゃって。それで、試合中もつい見合っちゃいました(笑)。やっぱり育った団体は違っても大先輩ですからね。失礼のない試合をしたいという思いでしたね」
 ――試合の展開を振り返ってみて、いかがですか?
 「金原さんが川村選手と対戦した時のビデオを何度も見たんですけど、カウンター取るの上手いですよね。どんな攻撃が来るかな? って、中盤まで見てしまったんで。だから勝負懸けるのが遅かったかな。そこが反省点ですね」
 ――これでパンクラス復帰後、3連勝ですね。
 「僕、KYですからね(笑)。だからスパッツにもほら、“KY”って入れてあるでしょ(笑)。でも、自分にとって一番のKYは負けることなんで、そうならなくてよかったです。でもKY…じゃなかった、KOで決められなかったのは、“プチKY”だったかな(笑)」
 ――今後もミドル級でやっていくのですか?
 「自分はパンクラスから試合のオファーをもらう立場なんで。『この試合、やらせてくれ!』って頼める立場ではないですからね。だから、ライトヘビーでもミドルでも、パンクラスから『やれ』って言われた階級でやるだけです」
 ――滑川選手の声は聞こえましたか?
 「あの『魂見せろ!』ですよね? 『あ、俺に言ってるな』って思いましたよ(笑)。でも、今日の会場には滑川に美濃輪(ミノワマン)に伊藤(崇文)に窪田(幸生)にって、近い世代の選手が集まってたんで嬉しかったですよ」
 続いて現れた金原も、腫れた右足首をさすりながらのインタビュー。“いつもの”不運も重なってのパンクラス5連敗に、“ボヤキ節”も完全復活だ。
 ――右の足首、痛そうですね。
 「ミドルをずっとヒジでブロックされてたからね。ミドルでヒジ壊してガード下げてから、ハイキックで勝つ作戦だったんですよ。ムエタイみたいな勝ち方がしたかった」
 ――しかし最後のスリップさえなければ…
 「コーナー際で、滑って転んじゃいましたよ。なんであそこで滑っちゃったのかなぁ? それに滑川が『魂見せろ!』なんて余計なこと言うもんだから、急に向こうがガーッて迫ってきてビックリしちゃって! それまでせっかくいいリズムで攻められてたのに。もう、『滑川バカヤロー』ですよ(笑)。向こうのセコンドになってどうするんだって(笑)」
 ――これで、パンクラス5連敗になりますが…
 「ねぇ!? そりゃ嫌ですよ~、もう。最近僅差の判定ばっかりだし。『キックの試合だったら、金原さんの勝ちですよ』って言ってくれた人もいたけど、僕がやってるのはキックじゃないし(笑)。ミドル級のトップの間に差はないですよ。でも、なんで俺だけこんな結果になっちゃうんだろうなぁ…」
 ――山宮選手の試合後のマイクは、心に響きましたか?
 「うん、頑張っていきたいですよね。今、格闘技バブルが弾けちゃったような感じじゃないですか? いい試合して、格闘技の会場がどこも満員になるように、盛り上げたいですよね」
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 セコンドが発した「プロレスラー」の六文字に過剰反応し、我を忘れてノーガードでド突き合う二人――。これだから、“U系”を背負う男たちは、たまらない。思えば、件の滑川も前田道場で純粋培養された元・リングス戦士。74年生まれの33歳だから、試合後マイクでU世代へのエールを送った山宮とも、ほぼ同世代だ。
 『DREAM.2』の田村潔司VS船木誠勝の影響からか、今格闘技ファンの間で、UWF再評価の気運が高まっている。青春時代に“U”に取り憑かれ、 “U”を引きずったまま大人になった三十路男たちの悪あがきを、最後まで見続けていたい。