ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』65[ファイトクラブ]『天皇即位礼正殿の儀』祝日にWWS初の山形大会開催

[週刊ファイト10月31日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』65
『天皇即位礼正殿の儀』祝日にWWS初の山形大会開催
・WWS初の山形大会開催
・台風被害で大会中止の危機に!?
・のっけから集合時間を間違える!
・デビューからの目標、クラッシャー高橋と再戦
・田中秀和リングアナにコールされる!
・みちのくプロレス、野橋太郎選手と再会!


 10月22日『天皇即位礼正殿の儀』のため国民の祝日となったこの日、WWS山形大会が行われました。WWSの歴史の中で、山形で興行が行われるのはこれが初めてです。

 実は、今大会は直前になって開催中止の危機に見舞われました。日本中を襲った台風15号と19号の影響で、複数の協力企業が被災されました。
 当然、プロレスどころではないということで、大会は中止もしくは延期の方向に…。しかし、楽しみにしてくれているファンのため、そして、こんな時こそ被災された方々にプロレスで元気を与えようとの意向で何とか開催の運びとなりました。

 いつものように、様々な団体の選手が集まるWWSですが、東京組は山形に前日入りすることになりました。兜山リングアナを筆頭に、葛西純選手、藤田ミノル選手、そして“チェーンソー”トニーことトニー・マイヤーズとともに山形へ向かいます。

 今回オイラは、WWSからトニーの“お守り”役を仰せつかっていました。日本語が不慣れなトニーに連絡を取り、しっかりと山形まで連れて行くのがオイラの役目です。

 時間通り、オイラは東京駅の集合場所に到着しました。まだ誰も待ち合わせ場所には来ていない様子です。ほどなくしてトニーがやってきました!
「心配の種だったトニーが来ているというのに、他の人はどうしたのだろう…?」
 この辺りからだんだん不安になってきました。

 たまらず、兜山リングアナに電話を掛けます!
 オイラ:「お疲れ様です! トニーと集合場所にいるのですが、他の人が誰もいないんですよ! 集合場所はここで合ってますよね?」
 兜山:「場所は合ってますが、集合時間は2時間後ですよ!」
 オイラ:「えーっ!!」

 やってしまいました!
 オイラの勝手な思い込みで、集合時間の13時と11時を間違えていたのです! せめてもの救いは、前倒しで間違えていたこと。もしも、遅れていたら大変なところでした!

 その後は、道連れとなったトニーに平謝り。トニーは、オイラが指示した時間に来ただけですので、何の罪もありません。
 仕方がないので、トニーとランチをしながら時間を潰すことにしました。2時間後、無事に他の選手と合流し新幹線に乗ることができましたが、前途多難な巡業スタートとなってしまいました。

 新幹線の乗車時間は3時間弱。山形も結構遠いんですね。予定外に早起きしてしまったので(笑)、新幹線の中で一眠りしたいところです。ところが、トニーがオイラの隣の座席に座ったのが運のツキ。トニーのマシンガントークの前にとうとう一睡もできなかったのです。

 山形駅では、先乗りしていたミスターアトミックが出迎えてくれました。以前、山形に住んでいたとあって、今大会は営業に運営に大車輪の活躍をみせたアトミック。東京からの御一行を、宿泊先のホテルまで案内してくれました。


WWSのラーメンマン、ちゃんこをよそうMr.アトミックはリングでは覆面

 ホテルにチェックインし、部屋に荷物を置いたら食事会の会場へと移動します。食事会は、熱狂的なプロレスファンのマスターが営む居酒屋で開かれました。マスターは元関取だけあって、ちゃんこが看板メニューです! また、自慢の鳥の唐揚げもごちそうになりました。
 もちろん、お店を上げて今大会をサポートしてくれています。本当に多くの地元の方々のご尽力により、大会が成り立っているのだなぁと、改めて感謝しました。
ちゃんこの〆の雑炊を平らげて、ツアー初日は終了です!

 一夜明け、いよいよ大会当日を迎えました。山形駅から会場のあるかみのやま温泉までは、車で30分ほどの距離にあります。会場となる上山市体育文化センターは、とても地方会場とは思えないほどの規模とキレイさです。

 オイラは、第2試合のミックスドタッグマッチに登場!
 実は、今大会にはいくつもの“特別”があったのです!

 ひとつ目の特別は、対戦相手のクラッシャー高橋選手です。実はクラッシャーさんは、オイラがデビュー前から憧れていた選手なのです! 『屋台村プロレス』時代から、クラッシャーさんの試合はよく観ていました。体は大きいし、レスリングのテクニックは抜群だし、それでいて古き良きアメリカンプロレスのショーマンシップも兼ね備えている…。いつしかクラッシャーさんのプロレスに憧れるようになりました。

 およそ20年前、デビュー間もない時期のCMA自主興行の際、当時の代表のトウカイブシドーから、『誰か戦いたい選手はいるか?』と聞かれ、いの一番にクラッシャー高橋の名前を挙げました! そして実現したシングルマッチ。25分に及ぶ激闘で、敗れはしましたが、未だに一部のファンが『あの試合は名勝負だった』と語り草にしているほどの好勝負でした。
 でも、実際には新人のオイラは何もさせてもらえず、ただただ25分間クラッシャーさんの手のひらの上で転がされていただけでした。『名勝負』と言われるゆえんは、クラッシャーさんが常に試合を引っ張ってくれていたからなのです。

 久しぶりのクラッシャーさんとの対戦に胸踊ります!

 そしてこの試合には、もうひとつビッグサプライズが待っていました! なんと、選手コールしてくださるリングアナウンサーは、元新日本プロレスの“ケロさん”こと田中秀和さんなのです! 田中さんの選手コールは、プロレスラーなら誰しもが憧れるはずです。現在はフリーとしてご活躍されていますが、田中さんにコールしていただけるなんて本当に夢のようです!
 新日本プロレス昭和の黄金期に、毎週テレビで拝見していた田中さん。猪木さんやタイガーマスクさん、スタン・ハンセンやハルク・ホーガンをコールしていた田中さんの口から、『185 センチ102キロ…ケン~・かた~や~!』と、独特の言い回しでコールしていただいたのです!
 これだけでも、一生忘れられない試合になりました。

 さてさて、肝心の試合の方に話を戻します。

 ミックスドタッグマッチのパートナーは、旧知の間柄のミス・モンゴル選手です。しかし、この試合には問題点がありました。“ミックス”を謳っているにも関わらず、相手チームのクラッシャー高橋&ブラックイーター組は、二人とも男です! これでは、ハナからこっちのチームは不利です。ところが、試合が始まってみると、一概にそうとは言えなかったのです。

『女をナメんな!』とばかりに、ミス・モンゴル選手が試合開始早々からムチを振り回して相手チームを威嚇します。勢い余って、そのムチがレフェリーやパートナーのオイラにまで飛んできたのはご愛嬌(笑)。それほどモンゴルさんの闘志に火が点いてしまったということなのでしょう。

 男子相手に、モンゴルさんはパワーでも決して引けを取りませんでした。特に、体の小さいブラックイーターに対しては、完全にモンゴルさんが力で圧倒していました。体格で劣るクラッシャーさんには、時折急所攻撃を見せるなど、“性別の利点”を存分に生かしていました(笑)。

 オイラだって負けてはいません。

 新人の頃は憧れでしかなかったクラッシャーさんとレスリングで互角に渡り合います。チャンスと見るや、モンゴルさんとダブルでの攻撃を見舞います! すると、またここでモンゴルさんが絶妙のタイミングで、相手チームの同士討ちを誘ってイーターの頭をクラッシャーさんの股間に打ち付けます! さすがのクラッシャーさんも、たまらず場外へエスケープ。その隙をついて、オイラがイーターにジャンピングパイルドライバーを決めてフィニッシュ! 見事勝利を収めることができました!

 東北進出となった今大会には、みちのくプロレスさんの提供マッチもありました。野橋太郎選手とは、10年ほど前、北海道の団体で一緒になって以来の再会でした。

 東日本大震災のボランティアで知り合ったともき君は、わざわざ仙台から駆けつけてくれました! 自ら被災しながら、『自分よりもっと大変な人がいる』とボランティアに奔走していた好青年です。

 いつも何かしら“特別”が起こるWWS。次回の大会も楽しみです!

 今回お世話になった山形の皆さん、本当にありがとうございました! また会いましょう!