ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』㊻[ファイトクラブ]平壌“平和の祭典”ツアー

[週刊ファイト6月21日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』㊻
 平壌“平和の祭典”ツアー
・当時ただのプロレスファンだったオイラは、そのツアーに参加
・『高麗航空』のチャーター便の利用で出発は何と新潟空港から
・パスポートに『出国』を表すスタンプが捺されなかった
・『平壌 平和の祭典』会場となったメーデースタジアムは・・・圧巻
・二日間トータルで38万人という信じられない数の観客を呑み込む
・開幕マスゲーム:モハメド・アリ氏と我らがアントニオ猪木さん
・橋本真也vs.スコットノートン、マサ斎藤vs.佐々木健介の師弟対決
・全女カードと『花代』:ブル中野、北斗晶、豊田真奈美、吉田万里子
・2日目:アントニオ猪木 vs. 元NWAチャンピオン、リック・フレアー
・焼肉一人前200円~偏見を捨てよう!美しくて優しい国、北朝鮮


歴史的快挙を遂げた『米朝首脳会談』のニュースを見ながら、オイラはあることを思い出していました。

1995年4月、北朝鮮で『平和のための平壌国際スポーツ・文化祭典』が開催されました。
アントニオ猪木率いる新日本プロレスのレスラー達が訪朝し、北朝鮮で初めてプロレスの試合が行われました。

朝鮮人である力道山先生の愛弟子アントニオ猪木が、北朝鮮で試合をするというのは、大変意義深いことでした。

何と、当時ただのプロレスファンだったオイラは、そのツアーに参加していたのです!

今回は、その時の様子を思い出しながら、そして、現地で購入した大変貴重な品々と共にお伝えしようと思います。


▼井上譲二の『週刊ファイト』メモリアル 第23回 95年の北朝鮮遠征で予期せぬ出来事

[ファイトクラブ]井上譲二の『週刊ファイト』メモリアル 第23回 95年の北朝鮮遠征で予期せぬ出来事

日本とは国交を持たない北朝鮮ですが、当時は年に2回ほど、外国人を受け入れる“期間”がありました。その時だけ、一般の観光客も北朝鮮の地を踏むことが許されたのです。
詳しいことは分かりませんが、恐らく今ではそのようなことはできないと思います。

今後、世界の情勢がどのように変化していくか想像だにできませんが、今にして思えば本当に貴重な経験をしたと思います。

当時は、猪木さん関連のツアーというのが頻繁に開催されていて、他にもロサンゼルスで行われた平和の祭典や、猪木さんにゆかりの深いパラオ島へのツアーにも参加しました。

回を重ねるうちに、“猪木信者”の友達も増えていきました。まだ、インターネットも一般的でなかった時代に、雑誌等でツアーの告知が出ると、誰からともなく連絡が回り、気付くと参加表明をしていたのです(笑)。
今考えると、いっぱしの社会人が揃いも揃って、よく仕事を休んで海外旅行に行くことができたなぁと思います。
確かに、当時オイラは教員で、自分の受け持ちの授業を何とかやりくりすれば、一週間弱の有給休暇を取ることは可能でした(もちろん、その前後は地獄のように大変でしたが…)。
他のメンバーも、大学教授や会社社長、歯科医師、バンドマン、フリーターetc…と、サラリーマン以外の職種の人間が多かったのも事実。だからこそ突発的な海外旅行にも行くことができたのでしょうね。

さて、北朝鮮ツアーに話を戻します。

前述の通り、北朝鮮と日本の間には国交がありませんので、海外旅行慣れしているオイラといえども、戸惑うことが多々ありました。

何らかの理由で北朝鮮に行く場合には、中国経由で入国するのが一般的でしょうが、この時は違いました。
飛行機は、北朝鮮の航空会社『高麗航空』のチャーター便の利用で、出発は何と新潟空港でした!
当時、海外旅行といえば、一部を除いて成田空港から出発するのが当たり前でしたが、今回の旅はなぜか新潟への移動から始まったのです! 新幹線から始まる海外旅行なんてもちろん初めて。もう二度と乗ることがないかもしれない高麗航空に、もうワクワクが止まりません。

同時に、緊張が走ったのも事実です。
というのも、今回のツアーには、他では決してないいくつかの注意事項があったのです。

・許可なく写真撮影をしないこと。
・グループを離れ、勝手な行動をしないこと。
・許可なくホテルから出ないこと。
・現地で使ってはいけないNGワード一覧。等々・・・。

緊張の場面は、新潟空港に着いてすぐに訪れました。
入国審査の際、海外旅行なら当たり前の“あること”が行われなかったのです!

その、あることとは・・・?

なんと、パスポートに『出国』を表すスタンプが捺されなかったのです!
つまり、オイラのパスポートには『北朝鮮に行った事実』が記録されないのです。
記録が残らない旅…。この時初めて“今回の旅が普通の旅ではない”ことを認識したのです。
上記のように、身勝手な行動を取ろうものなら、自分の身の安全は保障されないということがよく分かりました。

裏を返せば、ルールやマナーを守りさえすれば、楽しい旅が待っていることは間違いありません。
すぐに気持ちを切り替えて飛行機に搭乗しました。

海外旅行の楽しみのひとつに機内食があります。
初めて乗る高麗航空の機内食は、いったいどんなものが出るのでしょうか?
内容は、のり巻きにキムチ。
ごま油の利いたこののり巻きは、『キンパプ』といって韓国でも食べたことがあります。後から知ったことですが、キムチは韓国のそれと比べて水っぽいという特徴があるそうです。

いよいよ着陸体制に入るという時、CAさんから注意を受けました。
ここからは、写真撮影をしてはいけないというのです。

“上空から陸地を撮影してはいけない”

オイラにはすぐにその理由が理解できました。
そういえば、もうひとつ気になることがありました。
何度も韓国に旅行しているオイラですので、平壌へのフライト時間は容易に想像がつきます。ましてや、成田ではなくより朝鮮半島に近い新潟空港から飛んだのですから、時間は短縮されるはず。
しかし、何だかやたらと時間が掛かるのです。どうも、同じところを何度も旋回して、まるで着陸まで時間稼ぎをしているかのようです。
これも、後から知ったことですが、北朝鮮への侵入ルートを知られては困るので、わざと飛行ルートを乱していたそうです。

さぁ、いよいよ平壌国際空港に到着しました! ここからは、現地のガイドさんが同行します。もちろん、朝鮮人の方です。皆さん、とても日本語が上手な方ばかりです。言い回しからイントネーションまで完璧です。むしろ、日本人よりも美しい日本語を話します。
驚いたことに、日本の文化や流行などにも精通していました。聞けば、日本へは一度も行ったことがないそうです。皆さんがどれだけ日本語を勉強したか。その努力が伺えますね。

いくつかの名所旧跡を回りました。
他には大学、体育施設、デパート、地下鉄など…。
正直、“お国自慢”とも取れるスポットを回ることもありました。また、大学の図書館では、その場で自習していた学生全員が日本語を勉強中という、どう見ても不自然な場面も多々ありました。
しかし、つまらない偏見は捨て、旅を楽しむことを第一に考えることにしました。

意外にも、“規制”はさほど厳しくありませんでした。
各施設では、比較的自由に写真撮影もできました。
“撮られても差し支えないところ”ばかり巡っていたと言ってしまえばそれまでですが…。

夜になり、いよいよ『平和の祭典』が行われる『メーデースタジアム』に入場しました!

そこでツアー客一同、驚愕したのです!
我々が、メーデースタジアムで見たものとは!?


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