ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』㉝[ファイトクラブ]キングダムエルガイツ北沢タウンホール大会デビュー戦

[週刊ファイト3月22日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ケン・片谷『メシとワセダと時々プロレス』㉝
・“最後のUWF戦士”入江秀忠との遭遇
・キングダムエルガイツ北沢タウンホール大会デビュー戦
・32才の遅咲きデビュー!2000年6月11日『NO NAME HERO』
・オープンフィンガーグローブU系ルール!布施智治に肋骨二本折られる
・CMAプロレスリングの所属に!プロレス人生が本格的にスタート


 プロレス熱もすっかり冷め、普通の生活を送っていた頃、突如チャンスは巡って来た!
苦節十数年、ついに迎えたプロデビュー戦! その意外な団体とは?
波瀾万丈のケン・片谷スタート秘話!

北海道を後にし、地元横浜に戻った時には、オイラは30才になっていました。
『プロレス予備校』『TPG』『どさんこプロレス』『FSR』…。
憧れのプロレスラーになるという夢はついに叶いませんでしたが、マスコミに取り上げていただいたり、リングで試合をさせていただいたりと、一般の人ができないことをたくさん経験させていただきました。

横浜に戻ってからは、介護の仕事をしながら“普通の男の子”の生活を送っていました(笑)。
その頃のプロレス界はといえば、猪木さんが引退しひとつの時代が終わろうとしていました。SWSの崩壊以来団体が増え続け、大小無数の団体が乱立し、はっきりとした数も分からない程の混乱期を迎えました。

敬愛する猪木さんが引退したことで、オイラのプロレス熱もすっかり冷めてしまっていました。
プロレスラーを目指したことも遠い昔の話。ただ、稽古だけは続けていました。
普段は近所のスポーツセンターで汗を流し、週に2回ほど中学校の体育館の片隅を借りて格闘技の稽古もおこなっていました。
その間、何度かアマチュアの大会にも出場しましたが、もちろんリングなどない柔道の畳の上での試合でした。

ある時、明らかに一般人とは違うガッチリとした体つきの人間が道場に現れました。オイラはその顔に何となく見覚えがありました。その人物は、“最後のUWF戦士”入江秀忠選手でした。
入江選手は、キングダムエルガイツの代表を務めていました 。“キングダム”といえば、かつて隆盛を極めた『UWFインターナショナル』の後を継ぐ形で旗揚げされた団体です。キングダムが活動を停止してからは、当時練習生だった入江選手が『キングダムエルガイツ』としてその名前を引き継いだのです。それが、“最後のUWF戦士”と呼ばれる所以です。

入江選手と何度かスパーリングをさせていただきましたが、その強さをどう表現したらよいか…。とにかく手も足も出ないのです。入江選手の格闘技のベースは相撲です。腕(かいな)力が強く、絶対に倒れないという力士の特徴に違わず、オイラの力量では全く歯が立たないのです!
それは、以前スパーリングをさせていただいた畠中さんやジョージさんとはまた違った強さでした。ここでもプロレスラーの強さを目の当たりにすることになったのです。

 現在の入江秀忠。キングダムエルガイツは続いており、複数ジムを繁盛させている経営者でもある。

ひょんなことからチャンスは訪れました。
次のキングダムエルガイツの興行に出てみないかと打診があったのです。
舞台は、東京・下北沢にある北沢タウンホール。セミファイナルでキングダムエルガイツの“ナンバー2”布施智治選手の対戦相手に指名されたのです!
この上ない話に、オイラには断る理由がありません。

かくして、ついに念願のプロデビュー戦が決まったのです。
プロレス界に衝撃を与えた、TPG・たけしプロレス軍団から13年。32才の遅咲きデビューです!そしてその舞台は、意外にもいわゆる“U系”のリング。今のオイラからは想像もつかないかも知れませんね?

2000年6月11日。ついにその日がやって来ました。会場の北沢タウンホールは超満員です!
大会名は『NO NAME HERO』。“無名のヒーロー”という意味です。まさに、オイラのためにあるようなタイトルではありませんか!

対戦相手の布施智治選手とは初対面。どんな選手なのか? 体格がオイラと同じくらいというだけで、他に予備知識は全くありません。

休憩明け、いよいよセミファイナルです。ここから、会場が暗転し客席の間を縫って入場するという演出が加わりました。オイラにピンスポットが当てられ、先に入場しました。初めての大舞台。オイラは意外にも落ち着いていました。リングの上から見る景色、それは壮観でした! 応援に駆けつけてくれた友達の顔を発見する余裕さえありました。
しかし、それもほんの一瞬のこと。対角線上に布施選手が現れてからは、視界にはもう布施選手しか見えませんでした。布施選手を取り巻く多くのセコンド陣。布施選手のファン、そしてキングダムエルガイツファンからの布施選手に対する大きな声援。オイラは完全にアウェーです。試合前から分かっていたこととはいえ、それは大きなプレッシャーとしてのし掛かってきました。

ついに試合開始のゴングが鳴りました。と同時に、プロレスラー ケン・片谷が誕生した瞬間です!


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