[ファイトクラブ]現地取材!PPVより超盛大に二元中継したRAW25周年大会だが・・・

[週刊ファイト2月1月号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼現地取材!PPVより超盛大に二元中継したRAW25周年大会だが・・・
 photo & text by George Napolitano (Manhattan Center) タダシ☆タナカ w/編集部
・女子ランブル優勝候補はアスカ!ロンダ・ラウジーは映画撮影で海外
・アンダーテイカー復活!RAWの聖地マンハッタン・センターに降臨
・ミズがロマン・レインズ下しIC王座奪還!ブルックリンからマンハッタンへ
・CM試合 ヒデオ・イタミ&戸澤陽xドリュー・グラック&トニー・ニースの怪
・ブレイ・ワイアットxマット・ハーディ!イライアスとクリス・ジェリコ絡み
・レイプ事件エンツォ・アモーレ解雇~カード変更裏にコカインと#MeToo
・D-ジェネレーションXベイラー・クラブの時空超え結団!リック・フレアー
・『ロイヤルランブル』前哨戦Bストローマン Bレスナー ケイン3way
・現場記者報告!生中継ではなかったRAW真実の歴史と25周年総括


 現地時間の1月22日月曜夜、ブルックリンのバークレイ・センターとマンハッタン・センターの二元中継にて超盛大に『RAW 25周年』が開催された。日本のファン目線では、アンダーテイカーの復活からDXのリユニオン、1・4東京ドームの3万4995人の動員に大きく貢献したクリス・ジェリコ顔見世まで、2つの会場に詰め込み過ぎなくらいに過去と現在のスターを総動員させ、通常のPPV大会よりも豪華というか、予算的にも超盛大な番組収録だったことは間違いない。
 実際、これはすべてのジャンルに言えることで仕方ない面もあるにせよ、近年の視聴率は下がり続ける傾向が顕著だったのが、さすがにRAWが25周年を迎えるというのは、現地のさまざまな媒体で一般の話題にされている。エンパイア・ステート・ビルは赤色に点灯して、市民生活レベルでもいかにプロレスが街中の話題になったかをみせつけた格好であった。本誌とは30数年のつきあいになるジョージ・ナポリターノ通信員からの打診もあり、彼にはよりレトロ色になると踏んでマンハッタン・センターの取材に向かわせた。

 肝心の視聴率は3.0%の大台を記録。これは4,497,000人の視聴者数を意味しており、大変な数に見られた番組であることは間違いない。いくら1・4東京ドームの集客が凄かっとしても、テレ朝の視聴率は1%台のままで、世間一般にまでプロレス・ブーム?が届いたものではないことを指摘すれば、グローバルな対比が浮き彫りになろう。
 あと、後述するが『205 LIVE』ブランドの主役であり、クルーザー級王者でもあるENZOアモーレ(日本表記エンツォ・アモーレ)のレイプ事件と解雇というニュースがちょうど駆け巡ったことも、マニア層の関心を高めた事情は否定できない。もっとも番組では、目前に迫った『ロイヤルランブル』のプッシュが不十分だっただけでなく、ENZOの話題が触れられるハズもなかった。

 視聴率の記録としては2014年8月28日に同じ数字(エボリューション対ザ・シールド、リック・フレアーの復帰)、あるいは2012年7月23日、RAW1000回記念としてセントルイスから中継された時に3.86%、604万人視聴者の記録が出ているが、近年の傾向を鑑みるなら、もの凄い数の一般人が久しぶりにRAWを見たという事実は残った。庶民が読むDaily Newsにも「今夜はRAW25周年!」が大きく載っていたし、New York Timesの番組表や分厚い日曜版にあるTVガイドにも、普通に取り上げられている点は、日本の事情とは大きく異なるからだ。
 しかし、大会としてどうだったのかと問われると、正直、専門誌的には辛口採点にならざるをえない。またマニアたちの例えばSNSの意見に目を通しても、あるいはチケット代が特に高騰したマンハッタンの収録は、お客さんを満足して帰らしたとはいいがたい内容だったことを指摘する必要があろう。

 そのマンハッタン・センターからのオープニングは、ジェリー”キング”ローラーとジム・ロスの実況コンビが復活、また懐かしの映像が次々に出てきて初回から見ているファンが涙ぐむ。バークレイ・センターからはシェイン、ステファニーの兄弟に加えて、72歳のビンス・マクマホン親父が例の歩き方で久しぶりに登場。お約束でストーンコールド・スティーブ・オースチンのスタナーを喰らった。
 もっとも、そういった出だしの興味は持続せず、例によってCM時間が日本に比べてやたらに長い3時間をブロック別に分析するなら、最初は4,803,000視聴者だったものが、2時間目は4,641,000に減り、3時間目には4,147,000に落ちている。もっとも、本誌の定期購読者には繰り返し活字にしている通り、これが近年の視聴パターンであって今回が特殊なのではない。1000回記念の時代までは、スポーツ/エンタメ番組のお約束として、最後のメインが普通に最高視聴率だったものだが、今は途中まで見て、東部時間の夜10時からは別のチャンネルの人気番組に変えられてしまう。

女子ランブル優勝候補はアスカ!ロンダ・ラウジーは映画撮影で海外
■ RAW 25周年
日時:1月22日(現地時間)
会場:ニューヨーク市ニューヨーク 
   ブルックリン・バークレイ・センター&マンハッタン・センター二元中継

<スティーブ・オースチンがビンス・マクマホンを襲撃>
 ステファニーとシェインが登場して25周年記念のRAWが始まると、一番感謝している特別な人としてWWEチェアマン、ビンス・マクマホンを呼び込んだ。感謝の印として用意した25周年プレートにビンスは「25年頑張ってこの安っぽいプレートか?お前たちはみんなに感謝しているが、俺が感謝するのは俺自身だけだ。」と自画自賛。するとそこに突然スティーブ・オースチンが現れると、オースチンの攻撃を恐れるビンスは「もう私は退職者で高齢だ。シェインはまだ現役だぞ。」とシェインに話を向けると、オースチンはスタナーでシェインを沈めてしまう。ビンスはビール缶2本を持ち出してオースチンを落ち着かせようとしたが、2人が乾杯してハグするとオースチンはビンスにもスタナーを炸裂。最後はRAW25周年を祝うかのようにビールをがぶ飲みして会場を盛り上げた。

<第1試合 8人タッグマッチ>
〇サシャ・バンクス ベイリー ミッキー・ジェームス アスカ
 バンクステートメント
●ナイア・ジャックス アリシア・フォックス マンディ・ローズ ソーニャ・デヴィル W/ペイジ(首負傷中)
 アスカは8人タッグ戦としてサーシャ・バンクス、ベイリー、ミッキー・ジェームスとタッグを組んで、ナイア・ジャックス&アリシア・フォックス&マンディ・ローズ&ソーニャ・デヴィル(W/ペイジ)と対戦した。今週末に行われる史上初の女子30人によるロイヤルランブル戦を控え、試合はライバル心をむき出した攻防を展開したが、最後はサーシャがフォックスをバンクステイトメントで捕まえるとタップを奪って勝利した。試合後、チームメンバーと勝利を祝うアスカだったが、突然アスカがメンバーを襲撃。コーナーに上っていたジェームスを場外に落とすとベイリーにバックブロー、サーシャにバックスピンキックを決めて場外に叩き出すと、女子ロイヤルランブル戦での優勝を宣言するかのようにリング中央で勝ち誇った。
 なお、サプライズ登場、そして無敗のアスカを破って優勝というシナリオがささやかれていたロンダ・ラウジーだが、マーク・ウォールバーグ主演のアクション映画『マイル 22』撮影のため南米のコロンビアに向かったことが判明。『ロイヤルランブル』には無理だと確定している。

アンダーテイカー復活!RAWの聖地マンハッタン・センターに降臨

 あの男がRAWのリングに戻ってきた。2017年4月のレッスルマニア33以来姿を見せなかったアンダーテイカーがRAW最初の収録場所、マンハッタン・センターのリングに登場した。アンダーテイカーは熱烈な“アンダーテイカー”コールで迎えられると「25年間、ダークサイドに足を踏み入れる奴はすべて葬ってやった。スティーブ・オースチン、ミック・フォーリー、ケイン、この聖地で闘いを挑み、敗れ去ったものに贈る。Rest in peace(安らかに眠れ)」と告げてリングを後にした。

バークレイはスコーピオンズ50周年中継の会場で13,500人収容。マンハッタンは800席が限界。

ミズがロマン・レインズ下しIC王座奪還!ブルックリンからマンハッタンへ
<第2試合 IC王座戦>
●ロマン・レインズ
 スカル・クラッシング・フィナーレ
〇ザ・ミズ W/ミズトラージ(途中退場)

 IC王座戦ではマリースが身ごもって近くパパになる、映画俳優としても活躍するミズがターンバックルを外したコーナーに、2018年のWWEがエースとしてプッシュしているロマン・レインズを突っ込ませて、IC王座を奪還している。


 試合はブルックリンだったが、ミズやセス・ロリンズは車でマンハッタンに行き顔見世、セスはミズにブラックアウトをお見舞いしていた。

CM試合 ヒデオ・イタミ&戸澤陽xドリュー・グラック&トニー・ニースの怪

 日本のファンからしたらヒデオ・イタミ&戸澤陽組が実現していたとなるが、現場ではCM時間の2分試合がドリュー・グラック&トニー・ニース組相手に行われ、そもそも会場でのアナウンスもなければ、決着のないまま「あれは一体なんだったのか?」とマンハッタン・センターの客が思っていたら、45分後にまた2分の続きをやって日本組勝利という、二元中継の弊害を象徴するカードも行われた。
 当然ながら、番組では放送されていない。但し、与えられた時間でガンガンやりあった4名には頭が下がる。

ブレイ・ワイアットxマット・ハーディ!イライアスとクリス・ジェリコ絡み
<第3試合 シングルマッチ>
〇ブレイ・ワイアット
 シスターアビゲイル
●マット・ハーディ

 ギター弾き語りのイライアスはクリス・ジェリコとの絡みを経て、人気No.1のジョン・シナとぶつかり、急所蹴りからのドリフト・アウェイを見舞っているから、現在のWWEでのポジションの高さを知らしめた。

レイプ事件エンツォ・アモーレ解雇~カード変更裏にコカインと#MeToo
<第4試合 タッグマッチ>
タイタス・オニール アポロ・クルーズ
 ノーコンテスト
ヒース・スレーター ライノ
 ワッツアップ⇒3D
ダッドリーボーイズ

 第4試合のカードがこうなったのは、エンツォ・アモーレがレイプ事件で解雇されたから。まさにRAW25周年の月曜に、19歳のモデル、フィロミーナ・シーハンがTwitterでENZOにレイプされたとつぶやいたもので、会場に向かっていた31歳のチャンピオンはキャリアを絶たれた。
 レスリング・オブザーバー最新号がやたら詳しい経緯を載せており、興味ある方は有料版を購入願いたいが、事件は昨年10月9日のフェニックスのホテルで起きており、慎重に言葉を選んでいるものの、本当にレイプなのか、同意の上でのことなのかは難しいだけでなく、女性に問題があることもうかがえる。但し、現在北米ではセクハラ糾弾の流れが顕著であり、Twitterに#MeTooのハッシュタグをつける告発連鎖や、ゴールデングローブ賞に女優陣が黒のドレスで統一してきたことは本誌が活字にしてきた通り。タイミングの犠牲者なのは否定できないだろう。
 さらに不味いことに、ホテルの部屋にはコカイン他薬物多数、自分もやったという告白があることや、WWE選手管理側は事件からずっと蚊帳の外だったこともあり、『205 LIVE』の主役だったにせよ、WWEは翌火曜日に解雇を発表せざるをえなくなった経緯になる。

D-ジェネレーションXベイラー・クラブの時空超え結団!リック・フレアー
<第5試合 タッグマッチ>
●リバイバル
 マジックキラー
〇ギャローズ&アンダーソン

 ルーク・ギャローズ&カール・アンダーソン対リバイバルの試合前にはWWEレジェンドのD-ジェネレーションXが集結。トリプルH&ショーン・マイケルズが登場すると「25年前ここからすべてが始まった。マンハッタン・センターがRAWのホームだ。」と会場を盛り上げると、ニュー・エイジ・アウトローズ、Xパック、レイザー・ラモン、さらに現役のベイラー・クラブが登場した。試合ではギャローズ&アンダーソンがマジックキラーでリバイバルに快勝すると、突っ掛かってきたリバイバルのドーソンにレイザー・ラモンが爪楊枝を投げつけ、XパックがXファクター、ロード・ドックがシェイク・ラトル&ロール、ビリー・ガンがフェイマサーと連続攻撃で沈めると、続けて現れたリバイバルのワイルダーにマイケルズがスィート・チン・ミュージック、トリプルHがペディグリー、ベイラーがクー・デ・グラを叩き込むと、最後はメンバー全員で「Too Sweet」ポーズで勝利をアピールした。


 マンハッタン・センターからはショーン・マイケルズとHHHのDXが復活!チームということで過去6回のタッグ王者New Age Outlaw、1-2-3キッド⇒Xpac(ショーン・ウォルトマン)、レイザー・ラモン(スコット・ホール)らも呼び出され、リユニオンが実現している。そこに現在のユニット代表ベイラー・クラブが合流。リバイバル(スコット・ドーソン&ダッシュ・ワイルダー)が現れて試合となったが、当然、DXがついたベイラー・クラブ勝利だけでなく、DXのメンツも必殺技を1つずつ披露して、最後はベイラーのクー・デ・グラで締めている。恐らく、久しぶりにRAWを見たというオールドファンに向けて、現在の必殺技を印象づけたということであろう。


ネイチことリック・フレアーがそぞろ歩きを披露するのもお約束だ。この場面はTV放送されず!

『ロイヤルランブル』前哨戦Bストローマン Bレスナー ケイン3way
 バークレイ・センターのフィナーレは、目前に迫った『ロイヤルランブル』の前哨戦。ここではストローマンが怪物レスナーを実況席テーブルに叩きつけて、大きなアピールをして番組を終えている。

<第6試合 3way 前哨戦>
ブラウン・ストローマン
 実況席テーブルにパワースラム
●ブロック・レスナー
※もう一人はケイン
 PPV『ロイヤルランブル』で行われるトリプルスレット形式ユニバーサル王座戦を控え、王者ブロック・レスナーがブラウン・ストローマン、ケインとリングで対峙した。マネージャーのポール・ヘイマンがレスナーを呼び込むと、いきなり襲い掛かるストローマンにレスナーがクローズライン、さらにケインにF5を見舞うとリング中央で雄叫びを上げた。しかし、ストローマンが再び襲い掛かるとクローズラインでレスナーを場外に落としてバリケードに叩きつけ、さらにスロトーマンがレスナーを持ち上げるとそのまま実況席目掛けてランニング・パワースラムを叩き込んだ。
 トリプルスレット形式ユニバーサル王座戦が行われるPPV『ロイヤルランブル』は日本時間1月29日にWWEネットワーク(日本語実況版有り)で生配信される。

現場記者報告!生中継ではなかったRAW真実の歴史と25周年総括

 残り多数の元スーパースターズたちは、ポーカーゲームに熱中するというセグメントでの紹介のされ方だったが、繰り返しになるが予算的にも超盛大なRAW25周年も、番組としては良質回ではなかったのが総括になる。昔から見ている本誌通信員のマイク・ラノからは、「いっそのことフード・ファイトにした方が”らしい”演出だったのに」と、こちらも不評を伝えてきていた。皆がケイタリングの食い物を投げつけ合うという、汚いところがRAWの十八番だったからだ。
 RAWは93年の1月11日にマンハッタン・センターでTV収録を開始。一部でウソの歴史を書いている輩がいるが、当初は生中継ではない。むしろ主旨としては、いわゆるTVマッチとして、アレンタウンで収録されていたような、次のビッグマッチでぶつかるメインの選手が、ヒール、ベビーフェイス問わず、2分くらいでjobberと称される負け役専門の選手を成敗。派手にやられるだけの中身のない紹介試合だけだったのを改革したのが発端であり、もっと普段のハウスショーで見せるような、ある程度の尺を持たせた本格的な試合を中継することにあった。今回、そのjobberの代表格ブルックリン・ブロウラーも当然呼ばれていたのがご愛敬だが、マンハッタン在住時代の筆者(タナカ)は、これは行かないといけないと、確か3回目の収録で現場に向かい、その回は、3名の道化師ドゥインクが、あの小さな会場の客席のアチコチに出没するという趣向だけ覚えていて、メインの試合が誰だったかの記憶はない。3名の正体には、ベテランのジム・ガービンもいたというのを記事にした程度だが、まだパソコンもないため元原稿が手元にないのが25年前の記憶になる。

 以降、やはり大きな転機は1997年の2月から2時間枠になったこと。正直な感想としてはCM時間が長い北米番組として、長すぎて間延びしてしまうと危惧したものだった。しかし、翌年当たりからスティーブ・オースチンが、ガラスの割れる音とともにTV画面に出るようになって人気が爆発、そしてWCWとの同時間帯裏番組での「月曜生TV戦争」競争で、むしろ一般市民に大爆発したという歴史が懐かしい。
 3時間になった時は、「頼むから止めてくれ」が本音だったが、飽きられずに現在も続いているというのは驚異と賞賛しかない。最後に出てきたトリプルHが、「次の25年もやる」と、50周年記念をブチ上げていたが、その時も筆者はまだプロレスTVを見ているのだろうか?