[ファイトクラブ]鷹の爪大賞2017~新日一強~メイマク興行爆発Knock Out~ターザン山本

[週刊ファイト12月7日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼鷹の爪大賞2017~新日一強~メイマク興行爆発Knock Out~ターザン山本
 by タダシ☆タナカ
・ドキュメンタリー映画『ジム&アンディ』配信!リアルとフェイクの境界線
・6・11オカダ・カズチカxケニー・オメガ60分ベストマッチ賞&MVP
・訃報ジミー・スヌーカ、チャボ・ゲレロ、ミスターポーゴ、ボビー・ヒーナン
・大仁田厚 豊田真奈美 吉田万里子 ジム・コルネット 亜利弥’の引退
・メイウェザーvs.マクレガー未曾有の爆発とUFCの停滞~薬物検査失格
・RIZIN長時間~KNOCK OUT勝次MVPベストマッチ不可思、前口太尊
・ターザン山本新人賞


 ジャンルを問わず、専門媒体が年間大賞を選考するとなって、時代環境の変化は余りにも大きい。特にプロレス格闘技は、一般論としてもテレビ・スポーツであるからだ。WWEのRAWやSmackDown LIVEでどんな”事件”が仕込まれたかは、DAZNの日本語版でリアルタイムに確認できてしまうし、PPV大会やドキュメンタリー特番は、とうの昔に100万人の大台を超えているWWEネットワークで楽しめる。以前は「ネタバレやらないでくれ」と日本語での解禁が制約された時代もあったが、今や当日中にブログ欄が出てないと、むしろ「遅いじゃないか」と叱られてしまう有様だ。
 新日本プロレスの新日ワールドで大箱大会をチェックできるし、UFCファイトパスでは女子格のインビクタから、パンクラスやGloryも見れてしまう。パンクラスをLINEライブで見ていた時は、通信がスムーズではないと感じたものだが、AbemaTVだと大沢ケンジの解説でChromeキャストでTV画面に飛ばしても画面が途切れなくなった。サムライTVの『バトル☆メン』を見逃しても、パソコンの方で最初から再生出来てしまう。もはや、これらのストリーミング・デバイス抜きには、そもそも年間大賞でマット界の全体像を語ることなど不可能というか、仕事上は必携になってしまった感がある。

 もっとも、100万件を実数で超えているWWEネットワークでさえ、ストリーミング・サービスの世界ランキングではトップ15には入るものの、トップ10では圏外というデータもあるようだ。さしずめ、映画を軸としたNETFLIXなんかが圧倒的なのだろうが、日本では新日ワールドにせよ、まだまだちっともネット配信サービスは普及してないという冷静な分析もある。

 そのNETFLIXで、オリジナルのドキュメンタリーとして先日公開されたのが、意識的なプロレスファンには是非見てもらいたい『ジム&アンディ THE GREAT BEYOND』である。これはコメディアン、アンディ・カウフマンの生涯を、ジム・キャリーがなりきりの熱演をした1999年の傑作映画『Man On The Moon』の舞台裏を、制作段階からは20年になろうかという今になって、当時の未公開のままだった撮影現場の秘蔵フィルムを交えながら、主演のジム・キャリーが語りまくるという趣向の野心作だ。
 最初に、『Man On The Moon』というか、アンディ・カウフマンのことを簡単におさらいしないと、なんで「鷹の爪大賞2017」の枕に、映画の話が出てくるのかと思われてしまう。プロレスに絞るなら、人気番組『Saturday Night LIVE』のコーナーでは、「女とだけプロレスをする」という寸劇で広く知られるようになり、ついには南部の帝王ジェリー・ローラーとメンフィスで一騎打ち。それがまた「本当にパイルドライバーで首をやられた、訴えてやる」と、どこまでがリアルで、どこからがお芝居なのか判然としない大騒動を巻き起こしていく。肺がんで若くして亡くなってしまった伝説のコメディアンだが、最後は自身の死さえもフェイクにするアングルを打ったため、どこかで生きていると大勢に思われていた逸話もある。また、ラウンジ歌手トニー・クリフトンという別キャラも演じており、映画でもこの入れ替わりの虚実が描かれていた。

©UNIVERSAL PICTURES ミロス・フォアマン監督『マン・オン・ザ・ムーン』(1999) コートニー・ラブとジム・キャリー

ドキュメンタリー映画『ジム&アンディ』配信!リアルとフェイクの境界線

 先日公開されたばかりの舞台裏ドキュメンタリー『ジム&アンディ』は、役になりきるために台本のないところでもアンディやトニーと同一化していったジム・キャリーの壮絶な撮影現場が明かされると同時に、2017年のキャリーが、これまでの人生や役者論を披露する構成である。
 再びプロレスに絞るなら、アンディ・カウフマンがジェリー・ローラーと抗争アングルをやっていた頃は、カメラのないところではカウフマンは「ミスター・ローラー」と、さん付けて呼んでいたそうだが、1999年の撮影現場では、役にのめり込んでしまったキャリーが、台本と関係ないところでローラーに毒づき、暴言を吐きまくりと、凄まじいことになっていたのだ。ドキュメンタリーとはいっても、自前のカメラは回っていたから記録はしていたじゃないかと思われるかもだが、市販のDVD『Man On The Moon』に収録されているメイキング編や削除シーン編の特典は、今回のドキュメンタリーとはまったくの別物である。つまり、公開する予定のなかった秘蔵フィルム、しかも、役にのめり込む余り、シュートとワークの境界線が本人にもわからなくなる狂気の世界を描いているから、プロレス者なら鼻血が出そうになるくらいにブッ飛ばしてくれるのだ。
 
 特に、ラウンジ歌手トニー・クリフトンは、特殊メイクアップからして超強烈な暴言キャラということもあり、トニー役を演じる際のキャリーは、スター用に用意されたトレイラー内から狂気のゾーンに突入してしまい、ミロス・フォアマン監督が困り果てる様子が映像に残っていた。ここまでやっていたのかと、映画本篇を何回も見るにとどまらず、市販DVDの特典映像やら周辺の紹介番組も手元に保存している愛好家にも、この2017年ドキュメンタリーは演技と実人生の交錯が驚きの連続なのである。
 実際、映画とはいっても、実在したコメディアンを描いているだけに、撮影現場には故人の父親や、生き別れになっていた娘までもが訪ねてくるわけで、リアルとフェイクの境界線がジム・キャリー本人にもわからなくなっていく。
 そういえば、傑作映画『FARGO』のヒットにより、別物語のTVシリーズが3シリーズ制作されているが、このシリーズの冒頭には「これは実話である。名前は変えてあるが・・・」というテロップが流されるお約束になっている。しかし、それはあくまでプロットであって、実話ではないのだ。本当は完全なフィクションなのである。但し、最初の映画版含めて、かなりの多数派が実話なんだと未だに思い込まされているという現実がある。『ジム&アンディ』では、アンディ・カウフマンの実人生の相棒であった(構成作家の)ボブ・ズムタと、(主演の)ジム・キャリーが、「このプライベート映像はユニバーサル(制作映画会社)から許可されてない、没収される」とのやりとりが出てきて、いよいよリアルとフェイクは底なし沼に突入する。

 デビッド・ボウイの♪スペイス・オディティが絶妙のタイミングで流されたかと思えば、R.E.M.の♪The Great Beyondのビデオに、出演依頼されながらジム・キャリーが断った理由も明かされ、ロック音楽ファンにも興味深い内容に違いない。ちなみに『Man On The Moon』は、R.E.M.がまさにアンディ・カウフマンのことを唄ったヒット曲であり、アンディと映画を作ったフレッド・ブラッシーも歌詞に登場する。歌い出しの冒頭は「モット・ザ・フープルと人生ゲーム」からで、ドキュメンタリーのエンドクレジットには、撮影千秋楽にトニー・クリフトン(ジム・キャリー)が唄った貴重バージョンが使われていた。

6・11オカダ・カズチカxケニー・オメガ60分ベストマッチ賞&MVP

 鷹の爪大賞だが、参加記者の投票集計とかではない。内容も各自に任せており、凡庸な「MVPが○○」「ベストマッチ」「ベスト大会」・・・とかでなく、週刊ファイト記者の一員として個人の年間回顧録のような内容でも受け付けている。これまでは、主要ライターからの入稿がある程度集まった時点で、週刊ファイトとは別に単独タイトルとして発表していたが、必ず遅れて出してくる者がいること、また電子書籍だけでなく、会員制ファイトクラブ公開が起動に乗った経緯もあり、ブログ欄に順次発表、電子書籍ジャーナルとしてはこの12月7日号と、14日号の2度に分けて収録とさせていただく。
 建前上は、前年12月から2017年11月末までが選考対象となるが、内容は各自に任せているため、期間についても曖昧にならざるを得ない。とりあえず、昨年末からの主要イベントとしては、キックボクシングのKNOCK OUTが旗揚げして、那須川天心がムエタイの強豪をKOする鮮やかな記憶からであろうか。そして1・4新日本東京ドームでは、オカダ・カズチカとケニー・オメガが46分45秒のロングマッチをやらかし、フィニッシュムーブであるレインメーカーと片翼の天使を巡る攻防ラリーが、東京ドームを何度も揺るがした。


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