[週刊ファイト5月4日号]収録 [ファイトクラブ]公開中
昨年7月、アリ・エマニュエルCEO率いる世界的な芸能エージェンシー、WME-IMGグループによって42億ドル(約4600億円)というスポーツ史上最高額の金額で買収されたUFC。
だがその買収後もUFCの社長を続けているデイナ・ホワイトによれば、WME-IMGグループのオファーは最高額ではなかったという。
同グループのオファーした金額は、実は3位だったというのだ。
UFCのオーナーだったフランク&ロレンゾ・フェティータ兄弟は、2001年にズッファ社を設立しUFCを創業オーナーであるSEGから2百万ドルで買い取ったのだが、2016年の売却した際、オファーされた最高額は、なんと50億ドル(約5500億円)だったというのだ!
Text by 稲垣 收
・驚きの巨額オファーを断った理由は?
・デイナが明かした高校時代秘話。実は日本の学ランもの劇画のような高校大ゲンカが……
「私たちが(UFCの)売却契約を結んだ時、アリ・エマニュエル(WME-IMGのCEO)がオファーした金額より高額のオファーを出した2つのグループがあった。1つは50億ドルだった」
とホワイト社長は最近のUFC Fight Passでのインタビューで明かした。
2001年にロレンゾ・ファティータと兄のフランク、そしてデイナが200万ドルで買い取った団体を、15年後に42億ドルで売ったのは、たしかにビジネス的にとてつもない大成功だと言えるが、それ以上の額をオファーした買い手にノーと言ったのはなぜか?
「それはフェティータ兄弟が、UFCを買い取ってからの15年間、多くの血と汗と涙をUFCと総合格闘技に注ぎ込んできたからさ」
とデイナ・ホワイトは言う。
「フェティータ兄弟に関して私がリスペクトすることは無数にあるが、その1つは、彼らがUFCを、ただ金儲けのためだけに手放したりはしなかったということだ」
とデイナは語る。
「彼らは、UFCをしっかりと次のレベルにまで高めることのできると確信できる相手に売りたいと思ったんだ」
フランクとロレンゾのフェティータ兄弟は、アリ・エマニュエルとパトリック・ホワイトセルが率いるWME-IMGに売れば、UFCは将来的にも輝かしい成功を続けていけるはずだと判断したのだ、とデイナは言う。つまりWME-IMGが持つエンターテイメント業界とのコネクションが、UFCをさらに上のレベルに押し上げてくれるだろうというわけだ。
実際、WME-IMGのクライアントには、「トランスフォーマー」シリーズのマイケル・ベイ監督や、リドリー・スコット監督、ラッセル・クロウ、クエンティン・タランティーノ、リチャード・ギア、ナタリー・ポートマンなどのハリウッドスターや、50セント、カニエ・ウェスト、エミネムなどの大物ミュージシャンなどキラ星のごときスターが揃っている。また、同社には日本のソフトバンクも昨年3月に訳300億円も出資ししている。
「ロレンゾとフランクと私は、プロダクションの経験もなかったし、ハリウッドやテレビ業界とのコネもなかったし、それまでペイ・パー・ビュー(有料視聴放送)ビジネスの経験もなかった」
とデイナは言う。
「その私たちが、今や、ハリウッドの王様と一緒に仕事をしているんだ。彼らと一緒にやっていくことは、総合格闘技にとって非常に大きなことだ。もちろんUFCというブランドにとっても、選手にとってもそうだ」