WWE殿堂2017 レガシー部門!

 2016年よりWWE殿堂にレガシー部門が新設された。2016年は第一回という事もあり、ミルドレッド・バーク、フランク・ゴッチ、ジョージ・ハッケンシュミット、エド “ストラングラー” ルイス、パット・オコーナー、ルー・テーズ、”セーラー” アート・トーマスという、いわゆる正統派と言われているレスラーばかり選ばれていたが、第二回となる2017年はバラエティに富んだ人選となった。

・マーティン “ファーマー” バーンズ
ウィリアム・マルドゥーンと並んでアメリカプロレスの父と呼ばれる19世紀後半に活躍したカーニバル・レスラー。あの(一応)初代NWA世界ヘビー級王者とされているフランク・ゴッチの師匠である。と経歴を見るといかにも正統派の様に見えるが、ファーマー・バーンズで画像検索をすれば、高い確率で、首吊りをしている衝撃的な画像が出てくるだろう。これは当時の全米プロレス王者だったエヴァン”ストラングラー” ルイスと対戦する為の特訓、デモンストレーションのパフォーマンスである。このライバルであるエヴァン・ルイスはは絞殺し屋というアングルで、得意のストラングラー・ホールド(チョーク)で誰でも締め落とすというギミックで王者に君臨していた。ちなみに2016年WWE殿堂レガシー部門に選ばれ、ルー・テーズの師匠とされるエド “ストラングラー” ルイスは、エヴァンのギミックを引き継いだものだ。そして普通に戦うと締め落とされて負けてしまうとなったバーンズはなんと絞首刑用の荒縄で首吊りに耐えるというパフォーマンスを見せ、なんと13秒も耐えた。絞首刑に耐えるほどの首の強さならルイスのチョークにも耐えられるという触れ込みで、ルイスと王座戦を行い、見事に勝利して王座を奪っているのだった。そしてバーンズのもう一つの必殺技が、試合前に全身にオイルを塗り、試合中に汗でオイルがとけてヌルヌルになり、相手に捕まらないというものだった。この戦法は弟子であるフランク・ゴッチも(初代NWA世界ヘビー級王座決定戦とされている)ジョージ・ハッケンシュミット戦で使用し、呆れたハッケンシュミットが試合を棄権して勝利している。この戦法はなんと100年の時を超えて秋山成勲が桜庭和志戦で使用しているのが感慨深い。

・ジョセフ(ジョー)・トゥーツ・モント
おそらく、ビンス・マクマホン・シニアと組んでWWEの前身に当たるCWC(キャピタル・レスリング・コーポレーション)を経営していたので、その功績を讃えての受賞と思われるが、プロレスの世界でプロモーター>レスラーの図式を作ったジャック・カーリー、そして史上最高のプロモーターであるジャック・フェファーと並んで、プロレス史における最重要プロモーターである。元々は、カーニバル・レスラーでマーティン “ファーマー” バーンズ一座のレスラーだったが、ジャック・カーリーと組んで東部のプロモーターとして頭角を現す。カーリーがプロレスのエンタメ路線を推し進めた為、当時アスレチック協会のコミッショナーだったウィリアム・マルドゥーンの反発を買い、ライセンスを与えられず失脚すると、代わってMSG興行などをモントが手掛けるようになる。そして、当時の世界王者エド “ストラングラー” ルイス、マネージャーのビリー・サンドウと組んで通称ゴールドダストトリオと呼ばれる派閥を形成し、プロレス界を仕切っていく事になる。この時、モントは、現在に続くソープオペラ路線、中長期的に続くシナリオをプロレス界に持ち込んだとされる。そしてルイスの代わるスターとしてウェイン・ビッグ・マンというフットボール上がりを王者に仕立て上げるが、ここで、プロレス史上最大のダブルクロス(裏切り、プロレス界では台本破りを意味する)が起こる。ウェイン・マンに負ける役だったスタニスラウス・ズビスコが、騙し討ちで叩きのめしてしまったのだった。観客の前で完全勝利したズビスコを王者にしない訳にはいかず王座移動となったが、これは東部を追われたカーリーとジョー・ステッカーが裏でズビスコと繋がっており、その後カーリーの団体でズビスコはステッカーに王座を明け渡している。カーリーはのちのNWAの原型となるテリトリー制トラストを形成し、ゴールダストトリオも勢いを失う。しかし、モントはその後、絶大な人気を誇ったバディ・ロジャーズの興行を取り仕切り、トラスト、そしてNWAで力を持ち、それがのちにWWWF(現WWE)へとつながっていく。またアメリカで初の覆面レスラー、マスクド・マーベル(モート・ヘンダーソン)をデビューさせたのもモントである。(ちなみに世界初の覆面レスラーはパリに現れたザ・マスクド・レスラー・オブ・パリスと言われている)

・ヘイスタック・カルホーン
体重280キロ(当時の公式発表)の巨漢、怪物レスラーであり、日本では人間空母、お化けカボチャと呼ばれたフリーク系レスラーの代表格。アンドレ・ザ・ジャイアント以前は最も稼ぐレスラーと言われ、アメリカでは気は優しくて力持ちというベビーフェイス、日本では化け物という感じでヒールというアンドレと同じ扱いなのも興味深い。体重300キロのハッピー・ハンフリーと巨漢対決を制してブレイク。この時、リングがぶっ壊れるというアングルを組んでおり、近年WWEでビッグ・ショー対マーク・ヘンリー、ビッグ・ショー対ブロック・レスナーなどでリングが壊れるというアングルは、このオマージュとされている。幼少時代、毎日バケツ一杯のジャガイモを食べても、腹が空いて満たされず親(農家)に食費で迷惑をかけるからと家出して、腹いっぱい食べる為に金を稼ごうとプロレスラーになったいうギミックを持つ。日本に来日時には、あまりに身体が大きくて車に乗れないという事で小型トラックに乗せられるというパフォーマンスも見せ、驚かした。一見さんを驚かせるのもプロレスラーの魅力だが、このカルホーンこそ本物のプロレスラーと言えるだろう。

・ドクター・ジェリー・グラハム
ゴージャス・ジョージの影響を受けたとされるショーマン派金髪ヒールでビンス・マクマホンが子供の頃、最も憧れたスター選手だった。ゴールデン・グラハムズ(グラハム兄弟)というアングル上の兄弟ギミックを作りだした長男役で、次男エディ・グラハム、三男”クレージー” ルーク・グラハム、四男”スーパースター” ビリー・グラハムと組んで暴れまわった。ゴージャスな金髪の伊達男であるが、催眠術を操り、試合中に対戦相手を眠らせるというギミックを使っていたのが大きな特徴だ。現在、マット・ハーディが超能力を身につけて、テレポートしたり物体移動させたり、対戦相手を操ったりしているが、その先駆けがこのグラハムだろう。

・エドワード “ベアキャット” ライト
プロレス史上、初の黒人世界王者に君臨した歴史に残る名レスラー。当時、NWA、WWWF、AWAと並び4大世界王者とされていたWWA世界ヘビー級王座を1963年8月23日、フレッド・ブラッシーを破って獲得した。しかし、今以上に人種差別が強かった時代、黒人が王者になるのは許さないと黒人差別秘密結社KKK団から脅迫を受けた、エドワード・カーペンティアとの防衛戦を放棄して逃亡し、王座剥奪されている。しかし、実際には負けブックを拒否しての抗議で放棄したという説もある。

・力道山
ベアキャット・ライトが黒人初の世界王者なら、この力道山は東洋人初の世界王者(WWA世界ヘビー級王者)なので、同時にレガシー部門受賞というのもあるようだ。言わず知れた日本プロレス界の巨星。近年は、木村政彦戦での台本破りの卑怯な行動が大きく取り上げられる事が多く、人間性に問題があったものの、日本のプロレス史において父と言われる実績は色あせない。

・ルター・レンジ
2017年レガシー部門では最も正統派のレスラー。アメフト上がり黒人選手で、ルー・テーズのNWA世界ヘビー級王座への挑戦経験もある。日本では(当時は外人は全てヒールだったので)ヒールとして日本勢を苦しめアジアタッグ王座を奪っている。

・ジュディ・グレイブル
・ジューン・バイアーズ
共に伝説的な女子プロレスラーの草分けと言われている。

【WWE情報の決定版】
▼電子書籍ジャーナル最新刊!ファイトクラブ会員読めます~クレジットカード決済、銀行振込み対応
週刊ファイト4月13日号WrestleManiaNXT中邑真輔KnockOut前田日明長州力NEW旗揚げ
▼レッスルマニア33上下揺れライド6時間半~中邑真輔SmackDown~「プロレスと記憶」
 タダシ☆タナカ+シュート活字委員会編
・WWEネットワーク1,661,000件(国内1,237,000、海外424,000)
・Devils in the Shellプロレスと記憶:サイボーグ草薙素子は月で憂鬱!?
・水道橋博士とケン・ラッセル『肉体の悪魔』論~魔宮の聖典用語辞典
・「プロレスと記憶」~情報過多のサイバースペース広大な海と向き合う

週刊ファイト4月6日号新日後楽園WM鈴川真一NEWラウェイAnimeJapan才木玲佳W1林和広
▼終幕と新章~WrestleMania 新日 Wrestle-1 スターダム JWP:マット界の課題
 タダシ☆タナカ+シュート活字委員会編
・桜の春になってなにが変わるのか? 先行情報とタブー解析
・いくら解釈自由、十人十色の趣味の世界に過ぎないとしても:ファン保守化問題
・高木三四郎更迭~週刊ファイトに目を通すカズ・ハヤシ社長への期待
・脱・武藤敬司WRESTLE-1パロディー歌詞「ヒーローのお出ましだ!行列に並べ」
・スターダムV7宝城カイリ4・2“JWP”最後の後楽園OG福岡晶ら参戦ho