「その時、俺はバンコクにいた。バンコク市内にある王宮前広場の片隅に作られた簡易テントの中で、バスタオルを敷いたベンチにうつ伏せになり、うだるような暑さにじっと耐えていた。」
チャイスー、それは「虎の心」。チャイスーを持つ本場のムエタイボクサーに敗れタイへと流れていった失意の日本人キックボクサー。むせかえる熱気と絶望の中で青年は、小さなムエタイジムにたどり着く。そこで待っていたのは彼からすべてを奪った男だった・・・格闘技に魅せられタイを愛する作者が書き上げた、闘う男のためのムエタイ小説、ここに登場。