戦極~第四陣~燃える魂、出陣。ライト級グランプリーへの布石。

 2008年8月24日、さいたまアリーナにて戦極第四陣が行われた。今回はライト級グランプリー(以下、ライト級GP)をメインにし、ライト級で最強の五味隆典選手が殿(しんがり)をつとめた。
 ライト級GPでは、廣田瑞人vsライアン・シュルツ、横田一則vsボーヤン・コセドナー、光岡映二vsホドリゴ・ダム、北岡悟vsクレイ・フレンチ、以上が対戦し、いずれも日本人が勝利を収めている。北岡選手に至っては、戦極第二陣での50秒で勝利という記録を大きく塗り替え、31秒でアキレス腱固めにて相手からギブアップを取っている。
 いずれも劣らぬ外国人選手を打ち破り、次は五味!と、息巻く日本人選手達が周りで見ているプレッシャーの中、五味隆典vsハン・スーファン戦は始まった。

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 五味選手はと言うとご存知の通り、天下無双の火の玉ボーイである。前回出場した戦極第一陣では、相手のドゥエイン・ラドウィックを2分28秒にてドクターストップに追い込んだ。ラドウィックの鼻から大量の血が溢れ出ようと、その手を止めることなく無常に打ち据える五味選手に、見るものは皆、戦慄したことであろう。そんな彼の次の相手に選ばれた選手こそ、現DEEPライト級王者ハン・スーファンである。彼は、テコンドー、レスリング、ボクシングという総合格闘技の基礎全てをスタイルとし、強力な打撃を持つ。そんな彼を相手にどう戦うのか。
 結論から言うと、この試合、ほとんどが打撃の応酬で構成されていた。ハン選手が寝技や取っ組み合いがほぼないに等しく、ただひたすら互いが互いの隙を狙って打撃や蹴りを入れていく。相手が打ってくれば、それをカウンターで返し、時折力強い蹴りを入れる。
8-24-2.jpg 1ラウンドはお互いが攻勢であった。パンチの速さ、鋭さが観客を沸かせ、場内の温度をどんどんと上げていった。観客の声援も凄く、わああぁという声が、始終会場を包んでいた。また男の人は勿論のこと、「隆典-!」や「やっちゃえー!!」といった内容を叫ぶ女性の声や、「五味がんばれ~~!」という子供の声援まで聞こえて来た。このことからも、五味選手の人気の高さが見て取れる。
 その声援に応えるかのように、大きく腕を振り向かっていくのであるが、相手もタフであり、何度 打ち据えても倒れない。やはり、DEEPライト級王者ということだけあって、ハン選手も強い。強大な五味人気は、相手にとって大いなる凶器である。が、そんな完全アウェーの中、プレッシャーに負けず、五味と渡り合って行く。
 2ラウンドからは五味選手が攻勢に出ていった。下がって間合いを取ろうとするハン選手を追い、パンチを入れていくのであるが、なかなか決定打というものが与えられない。2ラウンド残り30秒のところで、五味選手が力強い飛び蹴りをし、ハン選手の胸元の入ったのであるが、これも決定打には至らなかった。
 3ラウンドでは五味選手のスタミナ切れ、そして、時折足を引きずるような動作が気になるようになるが、それはハン選手も同じであった。そんな中でも、激しい攻防を繰り返し、お互いが勝ちを取りに行ったのであるが、やはり厚い障壁を超える事はできなかった。勝敗は、判定によって定められた。
 判定の結果。0-3で五味選手の判定勝ちであった。が、トロフィーを手にした彼は、笑顔の中にどこか悔しさを感じさせる表情をしていた。スカ勝ちがポリシーの彼にとって、判定勝ちは勝ちではないのかもしれない。
第9試合 ライト級
○五味隆典(久我山ラスカルジム)
(判定3-0)
●ハン・スーファン(CMA KOREA)
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 試合後の会見では、まずハン選手が現れた。右の瞼に深い傷、また、顔中に残るあざが見て取れた。「五味はとても強かった」。一番最初の彼の言葉はこうであった。「特に、相手にプレッシャーを与えるのが上手。ダメージが入ってないように見えるし、また、彼のパンチは良く入る。おかげで、あばらが痛い。ふとももにもローキックが入っていて、骨にひびが入ってるんじゃないかと思う」と続けた彼の表情はどこか朗らかで、強大な敵と戦い、渡り合えたことを喜んでいる風にも見えた。
 対して五味選手は、右足を引きずりながら会見の場へと現れた。その足は?と問う記者に苦笑いを浮かべ「蹴りすぎで足を変なとこにぶつけちゃった。おかげで足が腫れている」と答えた。「今回の試合は落とせない試合だった。この試合は、実質一位決定戦のようなものだったし。今までベルトを欲しいと余り思わなかったんだけど、この前ベルトを見せてもらって、このベルトは欲しいと思った。今回、日本人選手ばかりが勝ち、みんな良い試合をしていた。このライト級グランプリーも面白くなると思う。なのに、メインがこけちゃって、ほんとすみません」。
 時折、笑顔を交えて話すものの、そういう彼の表情は明るくなかった。「次はしっかり取りに行く試合をする。ただやる試合ではなくて、取りに行く試合を。こんなもんではないと見せたい」・・・そう、次の試合への意欲を見せ、会見を締めくくった。
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 五味選手の希望としては、次は11月か年末の試合に出て、来年にタイトルマッチをやりたいと言う事である。
 今年の3月、一年ぶりに復帰してきた五味隆典選手。そのブランクの間にいろいろなモノを学び、格闘技への情熱を再び心に灯した。彼の驀進はまだまだ止まることはない。これからも、彼の熱い試合に期待しよう。
【戦極~第四陣~】
8月24日(日) さいたまスーパーアリーナ
第8試合 ミドル級
●瀧本 誠(吉田道場)
(判定0-3)
○フランク・トリッグ(Xtream Couture/R1)
第7試合 ライト級グランプリシリーズ2008
○北岡 悟(パンクラスism)
(1R0分31秒 アキレス腱固め)
●クレイ・フレンチ(H.I.T.Squad GYM)
第6試合 ライト級グランプリシリーズ2008
○光岡映二(和術慧舟會RJW)
(1R3分13秒 チョークスリーパー)
●ホドリゴ・ダム(アライアンスBJJ)
第5試合 ライト級グランプリシリーズ
○横田一則(GRABAKA)
(判定3-0)
●ボーヤン・コセドナー(WFC)
第4試合 ライト級グランプリシリーズ
○廣田瑞人(GUTSMAN修斗道場)
(2R4分45秒 KO)
●ライアン・シュルツ(チーム・クエスト)
第3試合 ヘビー級
●パウエル・ナツラ(チームナツラ)
(2R2分15秒 レフェリーストップ)※試合放棄
○ヤン・ドンイ(CMAコリア)
第2試合 ヘビー級
●ピーター・グラハム(A・Eファクトリー)
(2R0分42秒 チョークスリーパー)
○モイス・リンボン(ヨーロッパ・トップチーム)
第1試合 ヘビー級
●高橋和生(フリー)
(1R2分42秒 KO)
○ヴァレンタイン・オーフレイム(ゴールデン・グローリー)