美城丈二の“80’S・プロレス黄金狂時代”Act⑲【坂口征二の“堂々”】

『美城丈二の“80’S・プロレス黄金狂時代 ~時代の風が男達を濡らしていた頃”』
 Act⑲【往時の新日本・黄金コンビの一翼、坂口征二の“堂々”】
 
 筆者には、ウイリアム・ルスカとの“柔道ジャケットマッチ”があまりに懐かしい。
  ☆1978(昭和53)年3月20日
  アメリカ・ニューヨーク州MSG
  柔道ジャケットマッチ・時間無制限1本勝負
  坂口征二vsウイリアム・ルスカ
 時代背景的には、猪木がルスカと日本武道館で「異種格闘技世界一決定戦」を行なったのが1976年の2月6日であるから、その2年後ということになる。ルスカとの度重なる死闘の果てに、商品価値の落ちたルスカをもう一度、際立たせる闘いなのだと揶揄する向きもあったが、プロレスブームがにわかに沸騰してくる、80年代初頭以前の闘い模様として筆者には忘れがたい一戦のひとつである(この一戦は坂口の10分45秒・反則勝ちに終わったのだが・・・)。
 当時、リアルタイムで見定めたTVのブラウン管、その向こう側から伝わってきた大男の掴み合い、殴りあい。坂口には、あの故・大木金太郎とのワールドリーグ戦での死闘も生々しく、ただの喧嘩乱闘を超えた趣きが感じられた。
 どうしても“プロレスする”にはドタバタした、不器用とまでは思わないが、けっして上手とは思えぬプロレス試合を見せていた坂口征二という男が、そういった喧嘩マッチの類いとなってくると本領を発揮してくるというか、凄みを内包した殴り合いを見せてくる。やはり「只者では無い」といった按配の気配が感じられて、少なくとも私はそういった坂口の試合には強く惹かれるものがあった。
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 もともとが真剣勝負の世界で「名を成した」ひとだから、作り物とは一概に断を下さぬも、予め勝敗の決したプロレスリングの世界ではやはりどこか遠慮があったのかも知れない。いや、こう書けば恐れ多いこと。ご本人は納得づくでリングに上がられておられただろうから、けっして卑下した見方でもなんでもなく、ただ、当時、識者間でよく囁かれていた、坂口を称し「どんくさい」と揶揄する向きにはやはりどこか、「それは違うんじゃないか?」と私は弁明してみたりしていた。
 「どんくさい」のでは無く、「ただ、不向きなだけだろう?」と。
 故・大木戦の如く、読者諸兄がよくご存知の日プロ‐新日プロ間のいざこざに伴う、リアルを思わせる抗争劇等においてはまさにギラリと光る闘い模様を見せる坂口がまことに猛々しく思われ、新日プロ№2の座はやはり坂口しか有り得ないとさえ、私はよく頷きつつ、試合を見上げていたものだ。憤怒の形相で対戦者に挑みかかるとき、時として猪木のそれを凌駕する迫力を醸し出していた。
 あの迫力が普通のプロレス試合でも出せれば・・・?それはまた別次元のことなのかな?と当時、私は考えあぐねてもいたものだ。
 
 だからか、あの前田日明を代表とするUWF勢が新日本にUターンしてきたとき、今度こそ本来の実力を発揮するのは坂口だろうという、私なりの推量がものの見事に当たった時、爽快な気分にさえ至った。もとより、UWF勢を私はよほど好きな一群と見なしてはいても、やはりああいった闘い模様にもっとも映えるのは新日プロでは坂口征二なのではないのか?UWF軍vs世界のビッグ・サカ・・・この構図はけだし注目の的であった。
 藤原喜明が、坂口の左足をアキレス腱固めに捕らえる。すっくと仁王立ちし、強引とも言える逃げ方で捕らえられた左足を引っこ抜き、上からバシバシッと藤原の頬を張っていく。どよめく館内。ロープ際、もつれた坂口と前田。
 利き腕を捕らえたかと思うや否や、一気に払い腰を見せ、前田をリングに転がす坂口。また歓声がやんやと上がる。高田、山崎をも怖れず怯まず突進していく坂口。負けん気の強い前田が、高田が、山崎が、そして藤原が頬を張り返してきたり、ローキックを連発してきたり。そのたびに、苦痛に顔を歪ませる坂口。それでも前へ前へと更に出ようとする。
 こういった何気ない攻防の中で、坂口は藤波の台頭によって一歩も二歩も下がっているかのようであった、自身の格闘家としてのプライドをやおら復元させ、前田たちに咬みついていったようにも見えた。
 坂口征二とウイリアム・ルスカ、真剣勝負の世界に生きてきた者同士が見せたプロレスリングの試合における殴り合いと、「俺達のやっている闘いこそ、プロレスなのだ!!」とする、前田日明たちが主張したプロレスの只中で戦い抜いてみせた坂口もまったく同一の人物、戦い模様なのであり、こういう闘いこそが本来のプロレスリングの醍醐味なのかも知れぬと喜び勇んだ、日々。
 当時、何がしか、そういうものが折り重なってふつふつと沸いた感情を抑えることが出来ずにわくわくしながら、UWF軍vs世界のビッグ・サカ、その一戦一戦を見据えていたものである。上手に技を見せる必要も無い。プロレスリングとはただがむしゃらに目の前の敵を殴り、蹴り上げるのみでも成立する。殊更に真剣勝負だから、真剣じゃないからと区別したがる、かつての私に対する諌(いさ)めとの意味合いも含めて・・・・・・当時の坂口征二、氏の姿勢がその一言を雄弁に物語っていたのだなと今更ながらに思う次第である。
 世界のビッグ・サカ、やはり昭和のプロレスを語るうえにおいても欠かすことが出来ぬ人物と申せよう。
 
  ☆1986(昭和61)年5月1日
  東京・両国国技館
  新日本vsUWF5vs5シングル勝ち抜き戦
  山田恵一vs高田伸彦 <先鋒戦>
  坂口征二vs高田伸彦 <次鋒vs先鋒戦>
  坂口征二vs山崎一夫 <次鋒戦>
  坂口征二vs木戸修  <次鋒vs中堅戦>
  越中詩郎vs木戸修  <中堅戦>
  木村健吾vs木戸修  <副将vs中堅戦>
  木村健吾vs藤原喜明 <副将戦>
  藤波辰巳vs藤原喜明 <大将vs副将戦>
  藤波辰巳vs前田日明 <大将戦>
      (筆者観戦録から思い出の一戦を、抜粋)
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