レッスルマニア24 アンダーテイカーWM16連勝、フレアー引退

(c) WWE

■ WWE レッスルマニア 24
日時:3月30日
会場:米フロリダ州オーランド シトラス・ボウル

 3月30日(現地時間)、WWE年間最大のプロレスの祭典『レッスルマニア24』が開催された。

 日本でも大きなニュースとなったリック・フレアーの引退、ボクシングWBCウェルター級現役王者のフロイド・メイウェザーとビック・ショーのNHBマッチと話題盛り沢山の祭典の中、それらを押しのけてメインを張ったのはアンダーテイカーの前人未踏、レッスルマニア16連勝だった。
 アンダーテイカーは1980年代後半にWWE(当時WWF)に初登場し、怪奇派『墓堀人』ギミックで大ブレイク。翌年のレッスルマニア7でのジミー・スヌーカ戦から今回のレッスルマニア24でのエッジ戦まで全て勝利、16連勝とその連勝記録を伸ばした。アメリカン・プロレス、特にWWEでベテランがこれだけ連続して大舞台で勝ち続けるのはある意味奇跡だ。

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フィニッシュ技はMMAをヒントにしたとされる。画像はすべてPPV中継より

 そもそもWWEではチャンピオンは団体で一番強い者、もしくは人気のある者が王者になる訳では無い。基本的に今後、団体を背負っていくだろう若手にベルトを巻かす傾向が強い。圧倒的な観客動員を誇るスーパースターになると、いわゆる“上がり”とされ、王者という付加価値が無くても充分に客を呼べる。よって、王者の肩書はむしろ、そこまで人気・実績の無い若手エース候補の付加価値として利用されているのだ。
 “上がり”になったスーパースターは、次のスターへバトンタッチの意味も込めて、引き立て役に回るケースが多い。
 近年のWWE最大のスター、“ストーン・コールド”スティーブ・オースチンこそ、ブレイクはビンス・マクマホンとの抗争だが、例えばトリプルHはミック・フォーリー、最近まで続いていたジョン・シナはショーン・マイケルズといった“上がり”のスーパースターとの絡みでステップアップしている。
 期間は短いものの、ロックもハルク・ホーガンとの抗争がそうしたアングルで組まれた。(但し、これはホーガンの人気があまりに凄くてシナリオ班の計算通りにいかなかった為、打ち切られた。)
 王者経験もあり知名度の高いフォーリー、マイケルズと言った選手に若手のトリプルH、シナが王座戦で、大きな大会で勝ち続ける事によって、若い彼らに付加価値が付き、次の世代のスターになっていき、団体が続いていくというシステムなのだ。

 ハルク・ホーガンがWCWに転出した理由のひとつもWWEのこのシステムであり、WCWではホーガンをはじめとして大物選手には負けブックを拒否する権限が与えられた契約であった。実際はWWEとの契約切れからの転出に過ぎないが、残って次代のエースの引き立て役になるのを拒否して移籍したとも言えるのである。
 日本はプロレス団体の社長がそのままエース選手であるケースが多く、このシステムが組めない事が多かったが、近年では、新日本プロレスがまだ時期尚早という声の中、中邑、棚橋という若い才能を団体の顔であるIWGP王者にして成功を納めている。
 逆にWWEは経営陣とレスラーがはっきり分かれて、特に社長であるビンス・マクマホンの命令が絶対である為に、レスラーにブックの拒否権は無い。

 そんな中でアンダーテイカーはレスラー人生のほとんどをWWEに在籍しながら、レッスルマニアでは連勝を続けている。まだ若手で売り出し中の時期は当然としても、“上がり”になった近年ですら次代のスター、ランディ・オートン(レッスルマニア21)、バティスタ(レッスルマニア23)にそれぞれピン・フォールで完勝。そして今回もエッジ相手にフット・チョークでタップを奪い、世界ヘビー級王座を奪還している。これはかなり凄い出来事であろう。

 アンダーテイカーはWWEのバックステージでも仕切り役として君臨しており、好き嫌い無く誰に対しても接し、また素行不良な選手には制裁し団体をまとめている。キャリアのほとんどがWWEなこともありビンス・マクマホンの信頼も厚い。しかしアンダーテイカーの連勝は、そうした政治力だけでは無く、レスラーとしての力、存在感、そしてバックステージだけでは無く、観客からも熱狂的に支持されている、まさに“実力”で連勝していると言っても良いだろう。日本では“怪奇派”は低く見られる事が多いが、アンダーテイカーに関してはもっと評価されるべきだ。

 尚、似たケースで去年、TNAの年間最大大会『バウンド・フォー・グローリー』で観客の支持が圧倒的なスティングが王者になったが、「50代の自分がチャンピオンでは団体がまずい」と、スティング本人の希望ですぐに王座を失っている。
 アンダーテイカーの場合は去年、長期王者を続けるシナリオが用意されていたものの、怪我で中止になったと伝え聞くが、今年はこの超ベテラン王者がどれくらいの期間、防衛するのか非常に興味深い。

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フレアーは号泣して感謝。メイウェザーは千両役者だった。

主な試合結果
<世界ヘビー級タイトルマッチ>
○アンダーテイカー(フットチョークgogoplataでタップ)エッジ●

<No Disqualification match>
○フロイド・メイウェザー(ブラスナックルの反則パンチ→KO)ビック・ショー●

<WWEヘビー級王者タイトルマッチ> 
○ランディ・オートン vs トリプルH× vs ジョン・シナ●
(トリプルHのぺディグリーでダウンしたシナをオートンが横取りしてフォール勝ち)

<負けたら引退マッチ>
○ショーン・マイケルズ(スイート・チン・ミュージック→フォール勝ち)リック・フレアー●