ウルティモ・ドラゴンがデビュー20周年興行で有終の美

 ウルティモ・ドラゴンが後楽園ホールでレスラー生活20年を振り返り、次々とゆかりのあるゲストをリングに招き入れた。すでに「20周年記念興行」としては、アレナメヒコの大会場に高山善廣、鈴木みのる、ミル・マスカラスらを招聘して満員にしているが、聖地・後楽園では原点回帰をテーマに、20年前にメキシコのイダルゴ州パチューカでデビューした際の対戦相手、地獄の伝道師(ロス・ミッショネロス・デ・ムエルテ)を指名。幸いネグロ・ナバーロは現役、エル・テハノは息子が登場してタッグを結成、ウルティモの方はノアで活躍する佐野巧真を呼び寄せた。

 かのデビュー戦は6人タッグである。新日本プロレスにいた畑浩和さんが観客の前に姿を現し、チーム名テルシア・オリエンタルがおそろいの衣装で記念撮影に収まるなど、粋な計らいに古くからのマニアは涙した。また、先日『HEROS’S』で現役復帰を宣言したばかりの船木誠勝も、新日道場時代の仲間として花束を渡すなど、船木自身の言葉を借りれば「タイム・マシーンに乗ったような」夢の光景が実現している。さらには、レフェリーは鬼軍曹・山本小鉄が勤めた。試合はウルティモが、大先輩ナバーロをきっちりアサイDDTで仕留めて有終の美を飾っている。

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 エル・ブレイザー&フジタ“Jr”ハヤト組が、南野たけし&野橋真実組に勝利したタッグ試合から大会がスタート。同じくデビュー20周年になる下田美馬は、メキシコから一時帰国して第二試合で堀田祐美子と対戦。レフェリーの松山勘十郎のセクハラ攻撃もあって、このカードは休憩明けにも急遽「3WAY」戦として再戦している。下田はムチムチの肉体をピンクのコスチュームに包み、エロさ全開の大サービスでファンを大喜びさせていた。

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 第4試合は闘龍門カナダの提供ということで、イタリア系選手によるお笑いありのタッグ試合となった。ここで観客の注目を浴びたのは、およそレスラーとは思えないガリガリ体型にメガネをかけ、「ハリー・ポッター」のサントラ曲で入場してきたジョー・ポッター君だ。ホウキにまたがったまま、コーナーポストから場外に飛んだのには驚いた。プロレスの職人を称える表現に、「ホウキを相手にでも試合できる」というのがあるが、本当にホウキをリングに持ち込んだのみならず、スティックを使って対戦相手に魔法をかけるなど、新鮮な試合展開で場内をわかしている。

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 ウルティモにゆかりのある選手ということでは、獣神サンダー・ライガーも外せない。C.T.U.の親分はミラノコレクションA.T.と、慎重191cmの岡田かずちかを従え、TAJIRI、折原昌夫、大原はじめ組と対戦した。ハッスル・ポーズにこだわるTAJIRIに対し、新日ジュニアらしい激しいぶつかりで意地を見せたのがライガーだ。フィニッシュは大原が、必殺ドゥイットナウを岡田に極めている。試合後、キャリア4年ながらまだ19歳の岡田の闘龍門卒業が、校長ウルティモより告げられ、新日本プロレス入りが発表されている。

 セミ・ファイナルには、5月に同じ後楽園ホールで永田裕志とのIWGP戦に玉砕した越中詩郎が、メキシコ修行時代のリングネーム=サムライ・シローとして羽織、袴姿で入場。闘龍門の田島久丸に貫禄勝ちしていた。

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 メインイベントの選手紹介には、究極龍の膨大なタイトル歴が長々と読み上げられたが、一番最後はIWGPジュニア・ヘビー級王座に二度就いたことであった。ウルティモは試合後、「味のあるレスラーになりたい」と、世界中を旅することを宣言。ただし現在、メキシコ・マットが好景気ということもあり、40歳になった浅井嘉浩は日本での試合から当面は遠ざかるという。「笑点」の収録で後楽園ホールが仕事場の三遊亭楽太郎師匠は、「日本でこれだけの人をだましてきた。これからも、みんなにマジックをかけていくと思う」と挨拶していた。控え室の浅井は、「先輩たちが来てくれて嬉しい」と、誰もがハッピーな気分になった大会を締めくくっている。