緊張感溢れる立ち回りに注目!!記録的ヒット映画『侍タイムスリッパー』安田淳一監督

■ 映画『侍タイムスリッパー』
 ©2024未来映画社
池袋シネマ・ロサ他全国公開中

 幕末の侍が時代劇撮影所にタイムスリップして、斬られ役として第二の人生に奮闘する姿を描いた映画『侍タイムスリッパー』。公開は今年8月。池袋シネマ・ロサのみの上映から、全国公開へと拡大。上映館数は12月時点で300館以上という、インディーズ映画としては異例のヒットを飛ばしている。SFコメディーの要素が魅力だが、立ち回りも大きな見どころ。監督を務めた安田淳一氏に、いろいろと話を伺った。

――映画の道を志したきっかけを教えてください。

 20歳の時ぐらいに高校時代の友達と夏休みに8ミリでカンフー映画を撮ったりしていました。完成はしませんでしたが・・・(笑)。集まっても暑すぎて今日は休もうってなってすぐ遊んでしまってましたので。
 当時は映画監督になろうとしたら、東大や京大を出て松竹や東映に入るのが一般的。僕は関西の私大だったので、そのようなコースには進めないなぁと。大学には8年通ったんですが(笑)、明確に映画監督を志す感じではありませんでしたね。

 在学中からNTTの取次店やら、ビデオ撮影業やら仕事を始めて、数年たってイベントのプロデュースや演出まで請け負うようになっていた時期に、イベントの中で使うショートムービーを製作する仕事が増えてきて、イベントの付属物としての「映画」ではなくそれだけで勝負する「映画」に対する自分なりにもう一度挑戦してみたいと思うようになりました。
 紆余曲折あって第一作「拳銃と目玉焼」を撮り、その反省を生かして「ごはん」を製作、さらに興行的な成果を目指して作ったのが『侍タイムスリッパー』です。

――映画製作は独学で?

 独学です。ただ、映画の流通を学ぶために配給の講座には通いました。その後、脚本の講座にも通いました、2ヵ月ぐらいでしたけど。脚本の書き方よりも企画書について教わったのが大きかったですね。

――『侍タイムスリッパー』のストーリーは、どのように作り上げたのですか。

 何年か前に、侍が現代にやって来て七転八倒するという面白おかしいテレビCMがあって、『ごはん』にも出演頂いた斬られ役で有名な福本清三さんがタイムスリッパーだったらというアイデアから出発しました。

――撮影時に苦労した点は。

 真夏に立ち回りを4回も5回もしてもらったら、みなさん疲れ果てて。後で殺陣師さんから「監督、2回までにしてください」と言われました。ロボットじゃないので、確かにそうだなと。僕が苦労したのではなくて、させた方なんですけど(笑)。

――立ち回りのシーンは見応えがありました。特にラストの緊張感といったら。

 あのラストの立ち回りは、「どうやったら真剣で闘っているように見えるか」を念頭に置いて、苦労して撮りました。

――インディーズの枠を超えるヒット作となった現在、どのようなお気持ちですか。

 驚いているのと、現実感がないなと。自分の映画に起きている感じではないように思っています。自分の力ではないなというのは実感としてあります。いろんな人の助けがあって、ここまできているので、自分でドヤするような心境ではありません。みなさんのお陰で大きくなったと思っていますね。 

撮影・文 シン上田