マサ佐藤インタビュー
——2021年12月5日、JAPAN KICKBOXING INNOVATION、品川インターシティーホール興行のメインイベントでINNOVATIONスーパーライト級王者(当時)、橋本悟と5回戦をフルラウンド大激闘の上、見事に勝利して以来のINNOVATION再登場は、まさかのタイトルマッチで無敗のホープ“闘う医学生”切詰大貴とのメインとなりました。
久しぶりのINNOVATIONさんでメインイベント、それもタイトルマッチで光栄です。
——この試合の為に在日ムエタイジムの名門、ウィラサクレック・フェアテックスジムが同団体に加盟するというサプライズでもあります。
ウィラサクレック会長とマネージャのミサさん(ウィラサクレック夫人の小久保美佐)には、本当によくしていただいて感謝です。
——それにしてもINNOVATIONを代表する名王者、橋本の引退試合となった一戦は、ちょうど3年前ながら色褪せない名勝負(※1)でした。
激闘派の橋本選手が引退をかけた試合ですから、熱い試合になることは間違いないし、同じく激闘派の俺と嚙み合うことはわかっていたので(笑)。期待していただいた通りの内容になってよかったです。
——プロデビュー時は、沖縄県名護市在住で“やんばる将軍”の異名知られた佐藤選手が、東京に戻ってウィラサクレック・フェアテックスジムに移籍されてから3年以上経ちました。
もう年齢が年齢(37歳)なんで、後悔なく完全燃焼する為に練習環境を変えて、色々な経験と学びを得て、今もまだ成長中と思っています。年齢的には引退を考える頃合いでしょうけど、それが止まらないんで、行ける上まで昇りつめてやろうって。
——ウィラサクレック・フェアテックスジムでの練習は、充実されていますか?
移籍当初は、ずっとゴンナパー・ウィラサクレック(元K-1王者)とかが相手ですからね。同じ階級の杉本卓也(元J-NETWORKスーパーライト級王者)は、今年引退しましたけど、力也とか対人練習もしっかりできて満足です。
——そんな中、癌を発病されて、それを乗り越えての現在とお聞きしております。
正確には精巣腫瘍ですね。睾丸をひとつ摘出する手術をしました。
——大変なことだと察します。
肺とかに転移しやすいらしくて、抗癌剤も効きにくい部位で危ないところでした。ある日、金玉がSサイズの卵ぐらいに腫れ上がって、病院に行ったらまさかそんなことになっていようとは(笑)。
——語り口が軽やかですが。
転移していたら転移していたで覚悟を決めるしかないし、結果、大丈夫だったわけだし、悲観しても仕方ないじゃないですか(笑)。術後から経過観察を5年間しなくちゃで、あと2年、これまでは2か月に1度、CTスキャンやら血液検査やらしていました。今は、半年に1度になっています。お医者さん的には、100パーセント癌細胞を殲滅するのに抗癌剤治療することを勧められましたけど、キックボクシングをやめる気も練習を休む気もなかったんで、その選択はないなと。で、こうやって元気にタイトルマッチができるんですからマイペンライ(タイ語:問題なし)です(笑)。
——前試合は、2024年2月21日、yusei(グレイシーバッハ姫路)に1ラウンドTKO勝ちで、そこから10か月、相手は、INNOVATIONのゴールデンボーイ、無敗の切詰です。
綺麗な戦い方をする良い選手ですね。
——かなりの強敵では?
どーなんですかねー?(笑)。
——その余裕もこれまでのキャリアの深さからすれば、さもありなんです。これまで印象に残る試合といえば?
旧KNOCK OUTの水落洋祐戦(2018年8月19日/4ラウンドTKO勝ち)とか、とんでもないスケールで連続遠征した中国の英雄伝説(チャンピオントーナメント)も印象深いですね。
——肘打ちあり、首相撲無制限、5回戦が得意の印象が強い佐藤選手ですが、肘なし3回戦のRISE参戦など参戦舞台もルールも多岐にわたっています。
よりメジャーなリングを目指したいし、呼んでいただけるならルールはなんだって構いません。俺の闘い方は変わりませんから。
——キックボクシングであれば、何でもあり?
ですねー。あっ、最近、RISEのYA-MAN選手が看板になってFIGHT CLUBってオープンフィンガーグローブのシリーズをやってるじゃないですか。あれなんか是非ものです! 俺、同じ階級ですし。RISEスーパーライト級ランカー同士(YA-MANが3位、佐藤が5位)いいんじゃないですか?
——恐るべきタフネスで“不沈艦”とも“アンデッド将軍”とも称される佐藤選手のOFG戦は興味津々です。
ま、それもこれもまずは切詰選手を倒してINNOVATION王者になってからの話です。
——先日、RISEフェザー級王者になった安本晴翔や芦澤竜聖、鈴木真彦、花岡竜など錚々たる強豪がINNOVATION王者のベルトを巻いてきただけに、すでに5冠王の佐藤選手もこれに並ぶことになるかも。
ONEで大暴れしてみたいですしね。あそこは若い選手の起用が主なんで、そこを押しての実績としてもこのベルトはいただきます。
——功成り名遂げたベテランでありながら野心満々です。
俺、スロースターターじゃないですか。
——第1、2ラウンド、恐るべきタフネスで相手の攻撃を受け続けて、3ラウンドからエンジンがかかり、けど、最近のRISEやK-1などの3回戦傾向では、巻き返し遅く、逆転の雰囲気の中、判定負けしてしまうケースが多々と見受けます。それだけに今回の5回戦は、佐藤選手のフェイバリットではないかとも。
今回のタイトルマッチ、5回戦だからこその自信もあるし、俺の人生まさにここから上がっていく。精巣腫瘍だろうが乗り越えてきたんだから、どんなピンチからも逆転勝ちしてみせますよ。あの緑色のベルトをいただいて、気持ち良い年末年始が迎えられるんで、今から楽しみです(笑)。
マサ佐藤のプロフィール
リングネーム:マサ佐藤
フリガナ:マサ・サトウ
所属:ウィラサクレック・フェアテックスジム
生年月日:1987年8月21日(37歳)
出身地;東京都墨田区
身長:173cm
戦型:オーソドックス
戦績:51戦27勝(14KO)20敗4分
ステータス:英雄伝説64kg級アジア王者、蹴拳ムエタイライト級王者、元DBSライト級王者、元西日本統一ライト級王者、元RKAライト級王者
切詰大貴インタビュー
——無敗でトップランカーとなり、文句なくINNOVATIONスーパーライト級王座決定戦に歩を進めた切詰選手の相手は、まさかの5冠王“不沈艦”マサ佐藤となりました。
今までの相手はレベルが段違い、怖くもあるし、楽しみでもある。けど、ドキドキワクワクが圧倒的に先立ちます。
——まずは、その“怖い”と言われる部分を教えてください。
まず途方もなく気持ちが強い。あれだけハートが強いファイターは稀有だと思います。そして、驚異的なフィジカルに無尽蔵のスタミナ、それが最も得意とされる5回戦で発揮されるわけですから、それはもう。
——理路整然とした語り口も滑らかで、現役医学生の分析力で相当の攻略解析をされているのでは? お話しできる範囲で教えていただければ。
フルラウンド全力で打ち続けるエンドレスアタッカーである反面、極端なスロースターターですよね。
——それだけに序盤にポイントを取られて第3ラウンドから火がついて「時すでに遅し」の判定負けが多いことは確かです。
乱打戦に滅法強くありつつ、被弾率も高いので、肘打ちで速攻TKO勝ちを狙うとかセオリーでしょうね。
——そうはしない?
いつ何時でも勝ちにいくので、その展開もありでしょう。それは複数の展開予想のひとつであって、僕は、5回戦を打ち合い続けても勝つ算段と決意があります。むしろ最終ラウンドまでいったら、よりペースアップするのは僕の方です。
——スタミナとタフネスで国内随一の誉れ高い佐藤選手相手に?
この試合こそ、これまで開けるまでに至らなかった僕の引き出しを披露する時じゃないかなって。
——開けていない引き出し?
この試合を楽しんでいただく為にも大きなヒントを出させていただきます。ずばり“空手”です。
——確かにフルコンタクト空手で5度も全日本王者となっている切詰選手は、プロキックボクサーとしては、ソリッドな右ストレートやテンカオ(ムエタイ式カウンター膝蹴り)を決定打としつつ、スタイリッシュでクレバーなテクニシャンで、これまで素養としての空手家の要素がほとんど見られませんでした。
佐藤選手もフルコン空手出身なんですよね?
——確かにそれは諸所で明言しておられますが、沖縄移住する前の学生時代であって、全日本選手権優勝クラスの実績はなかったかと。
それでもあのブルファイトには、空手の技術と精神が見て取れます。
——確かに。接近戦での強烈な下段蹴りや顔面ガードを放棄したかのような前進とか。
空手的メソッドに空手で対抗しようだなんて単純ではありませんが、そのフィールドは、僕のリングで見せていない引き出しの“ひとつ”ですから。
——“ひとつ”とは、また含みがある物言いです。
佐藤選手のすべてをリスペクトして畏怖もありますが、反面「美味しい」と思っている自分もいます(ニヤリ)。
——無敗でINNOVATION王者となると、これまでこのベルトを巻いてきた偉大な先人達に追いつき追い越す可能性を期待してしまいます。
先日(2024年10月20日)、RISEのベルトを巻いた安本晴翔選手、今度(12月15日)、RISEタイトルマッチに臨む花岡竜選手、RIZINでMMAでも大暴れの芦澤竜誠選手など、彼ら以上にきっと!
——来年3月30日、オープンしたての香川県立アリーナで開催される「RIZIN.50」、香川大学医学生がINNOVATION王者となれば、出場に期待が高まります。
はい、狙っています!
——どうしても特徴的な医学生と二足の草鞋の話をまたさせていただくと、ポリクリ(実習)中の5年生ともなれば、その忙しさたるや想像に難くありません。
毎日、練習と勉強しかしてません(笑)。
——この先、“闘う医学生”が“闘う医師”となっても、その両立、しかもトップファイターともなると凄まじすぎます。
前のインタビュー(※1)でも話しましたが、僕はそこに相乗効果を見出しています。まだひよっこのキャリア6戦ですが、無敗でここまでこれたのもそこがあればこそだって、
——素晴らしい人間力です。
キックボクシングや格闘技が大好きだから、できるまでやり続けます。けど、どんなに仕事がハードだろうが、今より強くなっている確信がなければ、成長が止まった時、僕はリングを降りるでしょう。さあ、どこまで行けるか? 僕自身興奮していますが、皆さんも楽しみにしていてください!
※1 前のインタビュー “闘う”こと“学ぶ”ことは、一見、真逆なほど違うことに思えるかもしれませんが、それを修めるに必要な集中力、精神力、断固たる決意は、ベクトルを同じく通じるものだと、僕のこれまでの経験で分かっています。よく「大変だね」と言われますが、両立することで得られるパワーはとても大きくて、それが自分の強みだと思っています。
切詰大貴のプロフィール
リングネーム:切詰 大貴
フリガナ:きりづめ だいき
所属:武勇会/JAPAN KICKBOXING INNOVATION
生年月日:1999年1月5日(25歳)
出身地:高知県高知市
身長:180cm
戦型:オーソドックス
プロデビュー:2022年12月4日
戦績:6戦6勝(2KO)
ステータス:INNOVATIONスーパーライト級2位
Instagram:https://www.instagram.com/kir_kick/
X:https://x.com/kir_kick
■ RESISTANCE-18
日時:2024年12月8日(日) 16:00開場 16:30開始予定
会場:品川インターシティホール(東京都港区港南2-15-4)
<第9試合 メインイベント INNOVATIONスーパーライト級(63.5kg)王座決定戦 3分5回戦(延長1R)>
マサ佐藤(ウィラサクレック・フェアテックスジム/INNOVATIONスーパーライト級1位、RISEスーパーライト級5位、英雄伝説64kg級アジア王者、西日本統一ライト級王者、蹴拳ムエタイライト級王者、DBSライト級王者、元RKAライト級王者)
vs.
切詰大貴(武勇会/INNOVATIONスーパーライト級2位)
<第8試合 セミファイナル ミドル級(72.57kg) 3分3回戦>
マイク・ジョー(TEAM J.S.A/Bigbangスーパーウェルター級王者、WPMFインターコンチネンタル・ミドル級王者、WMCインターコンチネンタル・ミドル級王者)
vs.
磯谷幸貴(渡辺ジム/INNOVATIONスーパーウェルター級9位)
<第7試合 バンタム級(53.52kg) 3分3回戦 ※肘打ちなし/ワンキャッチワンアタック>
翔力(拳伸ジム/INNOVATIONバンタム級8位)
vs.
彪羽(チーム小樽コンバット)
<第6試合 58.5kg契約 3分3R ※肘なし>
夢叶(エムトーンジム/INNOVATIONスーパーフェザー級8位)
vs.
三橋空良(サクシードジム)
<第5試合 フライ級(50.8kg) 3分3回戦 ※肘打ちなし>
鴇田波琉(モリタキックボクシングジム)
vs.
石井識規(STRIFE)
<第4試合 ミドル級(72.57kg) 3分3回戦>
赤見内竜太(モリタキックボクシングジム)
vs.
ソムプラユン・ヒロキDANGERGYM(DANGER GYM)
<第3試合 スーパーバンタム級(55.34kg) 3分3回戦 ※肘打ちなし>
武寛(WINRAD GYM)
vs.
リオ(STRIFE)
<第2試合 56.5kg契約 3分3回戦 ※肘打ちなし>
翔龍(エボリューションムエタイジム)
vs.
シオチャイ FJ KICKASS(FJ KICKASS)
<第1試合 ウェルター級(66.67kg) 2分3回戦 ※肘打ちなし>
中嶋翔吾(HOSOKAWAジム)
vs.
清水和也(アルンジム)