食わず嫌いの偏見と愛 『隣人X -疑惑の彼女-』12・1新宿ピカデリー他公開

■ 映画『隣人X -疑惑の彼女-』
12月1日(金) 新宿ピカデリー他全国ロードショー
監督・脚本・編集:熊澤尚人
©2023 映画 「隣人X -疑惑の彼女-」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社

 予備知識ナシに見て良かった作品。なにせ『隣人X』というタイトルが「なんだろう?」と興味を抱かせてくれる。見始めて「誰がXなのか?」というミステリー作品なのか、はたまた近未来SFスリラーなのか、だんだんとそのどちらでもなく、外国人なり主義主張の違う異邦人でも構わないのだが、ヨソモノに対するむしろ身近な偏見の問題を扱ってるなと。ヒロインがスクラッチくじを小さなBOXで販売している売り子の設定とうまく繋げたラストとなるんだが、それは見てのお楽しみということで。

 プロレス格闘技のマット界は、団体○○は見るけど△△には興味ないとか、アメリカン・プロレスまでは無理と、食わず嫌いの偏見で損していることが多々ある。十人十色の趣味の世界である以上、「好き嫌いあっていいじゃないか」論もあるが、映画も「これから寒くなる」のエンディングに向かうこともあり、秋の夜長に考えさせる良品に出合えた点ではお勧めではある。

 惜しいのはテンポが遅く感じたのと、一部脚本がこなれてない課題アリ。また監督の技量なのか、はたまた出演者たちが未熟なのか、リアリティに欠ける場面が多々あること。週刊誌の記者役・林遣都が、設定からもマスコミ人に見えないし、スクープを追う編集部の面々が漫画的等々。見終わって全体のテーマを反芻するなら、これはアリと思わせないといけないのだが・・・台湾の黃姵嘉(ファン・ペイチャ)は記憶に残った出演者だったけど。
 当初は近未来SFなのか、ミステリー作品なのかもわからずに見た。原作知らないから安易に偉そうなこと言うのも気が引けるが、脚本がイマイチでもヒロイン女優の魅力で強く印象に残る作品になったケースはあるものの、この女優さん(上野樹里)、インパクトまでは残せなかったように思う。

 宣材のキャッチコピーは「愛した人の本当の姿を、あなたは知っていますか?」。見終わってから情報を見たのでやや違和感は残るが、キャッチやポスターの役割はそれで映画館に向かわせるか否か。合ってる、そぐわないの問題ではない。もっとも試写資料にあとから目を通すと、公開前紹介のNGワードがあり使ってなかったんだが、さらに「○○がX、△△はXではないなど、正体のネタバレ防止にご協力願い」とあり、笑ってしまった。確かに最初は「どっちがXなのか」興味も狙いなんだが、差別や偏見の主題に行きつくと、見ている自身をも含めて、もはや「誰もがXなんじゃないのか」に辿り着くからだ。


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