[ファイトクラブ]Stardom New Bloodに救世主!WAVE狐伯(元マーベラス神童ミコト)

[週刊ファイト6月15日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼Stardom New Bloodに救世主!WAVE狐伯(元マーベラス神童ミコト)
 吏南フューチャー防衛 羽南/狐伯MVP 白川未奈コール役 富士そば貴婦人
 photo: まろん 甘井公平  by 甘井公平 w/編集部編
・羽南vs狐伯New Blood名勝負数え歌、開幕!私的ベストマッチ深解析
・レディC涙の引退覚悟!小悪魔生徒vs.担任教師は恐るべし16歳軍配
・あぁ 早すぎたメイン登場J.T.Oカラテ姉妹KARMAスターライトK防衛
・もはや「不良少女と呼ばれて」VIPロード天咲光由どこへゆく?AZM戦
・パッション注入マッチ 台風めげず来た会場客「貴婦人」「揚げ玉」コール
・桜井まい感謝「富士そばアンバサダー」就任 次回NB10回記念大会へ
・未奈「Sexy!」ストロングスタイルのラム会長、今宵はいつものお笑いに
・華のないMIRAI、品川ではコール起きず~消化試合も多いNew Blood


■ スターダム FIBREPLEX presents NEW BLOOD 9
日時:6月2日
会場:東京・品川インターシティーホール 観衆306人(=主催者発表)

 台風2号接近の影響で朝から電車やバスのダイヤが大幅に乱れ、東海道新幹線もストップ。午後には完全に首都圏の交通機能がマヒしたこの日。設置された椅子の数からもまちがいなくNew Bloodワーストの観客動員記録だが、今にも帰路の電車が止まるかも知れぬこんな日に、わざわざ観にきた濃いファンは逆に会場が空いていても密度高く燃えるもの。昔からプロレスには特にその習性が強い。こんな嵐の中、当日券購入の列が30人程度できていたのも驚いた。
 筆者もNew Bloodは第1回から皆勤賞だが、大型貸会議室で行い客席数が少ないため、だんだんリングサイド客の顔も覚えてきた。スターダムに比べ年齢層がやや高く、品川という土地柄か仕事帰りのビジネスマン比率が高い。熱心な一定の顧客、リピーターはいるのだ!
※もっとも開催が多いのは品川、他には新宿、高田馬場。

羽南vs狐伯New Blood名勝負数え歌、開幕!私的ベストマッチ深解析
<第2試合 タッグマッチ 15分1本勝負>
飯田沙耶 〇羽南
 11分20秒 セブンティーン
狐伯 ●琉悪夏

 本日のベストバウトであり、MVPは「羽南」と「狐伯(こはく)」であった。
 スターダムの未来を担う羽南と、WAVEから初参加の「狐伯(元マーベラス・神童ミコトから改名)」が、短時間ながらスイングした素晴らしい試合をみせた。

 狐伯は短躯ながらマッチョな飯田との力比べに勝ち、とにかく動きが速い。よく動く。そしてその動き方がスターダム選手とは異なり、荒々しい。よくぞ「狐」と名付けたものだ。試合途中からは琉悪夏もあまり手を出さなくなった。決して華のあるルックスではなく、手足も短く背も低い(公称147㎝)。マーベラス時代はいつも、なにか思いつめた表情での負け役ばかりだった。
 試合が終わればすぐセコンドにつき、リング上で試合が行われているとき以外は、うつむいて会場を駆け回る。メインの仕事は場外ダイブの受け役と、机割りパイルドライバー用の机の設置と脚固定。あとはハードコアマッチでKAORUへの凶器パス係といったところか。実際、当時のインタビューでは中学を卒業し岡山から上京してきた、まさに垢ぬけない少女のイメージであったが、やはりオンナは変わる。新リングネーム通り「狐」のごとく、少女はオンナに化けていた。Fox On The Runだ。

 マーベラス退団後の試合ができぬ期間も、きっちり練習していたことがわかるマッチョな体に焼けた肌。マーベラス時代のカモフラ柄競泳用水着から、セパレートタイプのオリジナル・コスチュームに。試合後いつも着ていた、先輩のお古の団体ジャージと薄汚れた道場スニーカーは、NORTHFACEのTシャツとNIKEのジャージ、New Balanceのカラフルなスニーカーになっていた。メイクを覚え髪も染め、はきはきとした立居振る舞いも、22歳の「東京のオンナ」に見える。
 なにより変わったのは「表情」だ。上京してはみたものの公私にわたり「何かが違う……」と思い悩んでいた表情は、憑き物が落ちたかのように「プロレスができる歓び」、「スターダムのリングに上がる歓び」そして「レスラーとしての自信」に充ち溢れている。

 対する羽南も年齢は下だがキャリアは1年先輩だ。仕合開始時の「若手エース候補として、まずはお手並み拝見」の表情はすぐ変わり、「腕に覚えの柔道殺法」となった。これは(フィニッシュこそ琉悪夏からルチャ技のオリジナル「セブンティーン」で取ったが)団体カラーとしてややコミカル路線のWAVEでの試合とは異なり、この日の狐伯がアマレス並みの前傾クラウチングスタイルで臨んだからだ。

 同じリング、道場で練習したことのない2人が繰り広げる、緊張感ある、よい意味でぎこちないムーブが音を立てかみ合う瞬間。細かいたとえだが、狐伯はマーベラスでプロレスを教わったためGAEAジャパンの基本が染みついており、タッグマッチで絞め技から逃れ自軍コーナーの味方にタッチを求める際、手のひらの向きをサインの1つにし「まだ大丈夫。ギリギリ手が届かない、でやろう」、「我慢できない、すぐ交代」を伝える(いわゆる、旧全日本プロレス流)。琉悪夏はこれを理解しておらず、伸ばした手にすぐタッチ。狐伯も困った表情だが、客席には短いスパンの選手交代としか映らない。こういった、プレーヤーにとっても細かいハプニングの積み重ねにより、試合作りが文字通りのフリーハンドとなるわけだ。
 これがNew Bloodという別ブランド興業の醍醐味の一つであり、実に意義あるマッチメイクであった。狐伯選手にはこれからもNew Bloodで、スターダムの様々な選手と手を合わせ、本隊興行めざして頑張って欲しい。星来との「元マーベラスタッグ」も楽しみだ。

 稚拙なトレーナーとの歯がゆい日々、夜は団体が経営するカラオケ居酒屋での接客、YouTube撮影係、道場見学案内要員、メイン選手の観劇や芝居鑑賞、刺青彫時のカバン持ち。気が付くと、事務アルバイトに応募してきてプロレスラーとして採用・デビューした、腕立て伏せすら満足にできなかった2年先輩は、著名レスラー夫婦の息子と結婚し寿退社で海外へ。上京し初めて「腹をくくった」彼女は、殻を破ったのだ。「もう下を向かない」、と。マーベラス運営のカラオケ居酒屋時代、彼女の十八番は相川七瀬の「夢見る少女じゃいられない」であった。

 対する羽南は、妃南・吏南と「格闘三姉妹」で期待され小学生にしてスカウトされ、いわば新卒入社で十分な研修とOJTを経て配属(デビュー)したエリート選手に見えるが、実はそうでもない。中学1年でデビューも怪我や家庭の事情などで長期離脱を繰り返し「ルーキー・オブ・スターダム」を逃し、遅れを取ったのちに17歳でようやく「フューチャー・オブ・スターダム」戴冠。5★GP出場を果すも10連敗と、常に別枠扱いの天咲とは雲泥の差であった。

 狐伯と羽南。二人の名勝負は始まったばかりだ。

レディC涙の引退覚悟!小悪魔生徒vs.担任教師は恐るべし16歳軍配
<第7試合 フューチャー・オブ・スターダム選手権試合 15分1本勝負>
[王者]○吏南
 11分52秒 ハイドレンジア
[挑戦者]●レディ・C
※第10代王者が初防衛に成功

 前回大会に続きまたも当日に試合順変更(当初発表ではセミ)。確かにタイトルの「格」でいえば、メインはこちらになるが、興行のメインを「先生」と「16歳」に任せてよいものか。思うにJ.T.Oの空手姉妹が、まだまだメインに堪えられるほど受け身も取れないので、あわてて変更と見た。
 「16歳・小悪魔ピンクチェリー」vs.「28歳・元教師」の対決。字面だけ見るとなにやら妖艶だ。公立高校生の吏南が、スターダムのツアー日程に「未出場」と明記されている日は、学校行事のある日なのはファンの間では周知の事実。そして元教師(中学・高校の家庭科教師でクラスの副担任も経験)のレディ・Cは、父親や校長との約束「(女子プロレスを)3年やって結果を出せなければ辞めて戻る」を守るべく、3年目の今年は引退を決意して臨んでいる。残すべき「結果」とは、もちろん「ベルト」だ。しかし現実は非情で、初のシングル戴冠で乗りに乗っている16歳、吏南のトリッキーな動きにはついてゆけない。

 二人ともシングルでのメインはレスラー人生で初体験。吏南は度胸よく飛び技から腕がらみをキレイに決め、レディの右腕にターゲットを絞り執拗な攻撃。レディもダイビング・ネックブリーカーやチョークスラムで反撃も、最後は吏南が前回タイトル奪取した、木村花直伝「ハイドレンジア」で勝利。

 「お前、この試合の前に『これが最後の挑戦』とか『父との約束で、3年で芽がでなければやめる』とかゴチャゴチャ言ってたけど、16歳の吏南様が教えてやるよ。結局、どうするか最後、決めるのは自分自身なんだよ、バカが! 3年でメイン張ってタイトルマッチして簡単にやめられるのか?」と、28歳の元教師になんともキツい進路指導。

 試合後は月山和香がタイトル挑戦表明。「今日も負けたけど、私は今まで苦労してきた」とのマイクに、「全員苦労してるんだ、ボケ!」と返す。
 さらに吏南の素晴らしいのはこの後で、New Bloodはメイン後に出場全選手がリング上に並び記念撮影なのだが、毎回集合に手間取り時間がかかる。それをよく理解している16歳のチャンピオンは「ほら、早く集まれ! ぐずぐずするな、急げ!」とマイクで大声。台風の中集まった今夜のコアなファンの声を代弁した。恐るべき16歳である。

記事の全文を表示するにはファイトクラブ会員登録が必要です。
会費は月払999円、年払だと2ヶ月分お得な10,000円です。
すでに会員の方はログインして続きをご覧ください。

ログイン