[ファイトクラブ]ストロングスタイルプロレスが提示する、【ここでしか見られない】独自性

 ストロングスタイルプロレスは、キッカケ次第で跳ねそうな磁場を形成しつつある。
 2023・2・22後楽園ホール大会を見て、【どちらが勝つか分からない】試合の比率だったり、既存の女子団体では見られないグラウンドの攻防だったり、所属+フリー参戦で形成される磁場に私は面白みを感じたのだ。
 後楽園ホール大会を通じて筆者が感じた、同団体の課題や評価について斬り込んでいく。


[週刊ファイト3月9日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼ストロングスタイルプロレスが提示する 【ここでしか見られない】独自性
 photo & text by 鈴木太郎
・【ここでしか見られないプロレス】の独自性
・所属選手が少なくても、勝負論に満ちたカードが組める強み
・優位性と課題が両天秤な女子部門
・独自性を見せつけた『薮下めぐみvs.ダーク・パンサー』
・日高郁人阿部史典SUGI鈴木鼓太郎jr4選手の躍動光るタッグマッチ!
・タッグJ横田ハードコア要素強めのヒール対決も、否めないグダグダ感
・竹田誠志ジャーマン葬船木誠勝!竹田シュレックが生み出す化学反応
・タイガー・クイーンとウナギ・サヤカの第1ラウンドは不発に・・・
・”査定試合”で躍動した伏兵・本間多恵
・王座奪還というミッションに、間下隼人が見せたANSWER


■ストロングスタイルプロレス 『初代タイガーマスク ストロングスタイルプロレスVol.21』
■日時:2023年2月22日(水) 18:30開始
■会場:東京・後楽園ホール
■観衆:1026人(満員)

 私は、ストロングスタイルプロレスという団体に、それほど注目していなかった。
 白状してしまうと、私にはストロングスタイルという理念は良く分かっていない。
 それでも理屈抜きにして、フリー参戦を巻き込みながらも、キッカケ次第で跳ねそうな磁場を形成しつつある雰囲気が今の団体にはある。今大会を見て、私はそのように感じた。

 今回のストロングスタイルプロレスを観戦して驚いたのは、【ここでしか見られないプロレス】の独自性を高めていた点である。ある種、既存の団体では体感できないような雰囲気のプロレスを見せていたのだ。

 中でも、【どちらが勝つか分からない】試合の比率は多かったように思う。
 組み合わせを見た瞬間、結果が察せられるカードは少なかったし、特に男子の場合は、序盤のジュニアタッグマッチにしても、セミファイナル前に組まれた『スーパー・タイガー&竹田誠志vs.船木誠勝&関根“シュレック”秀樹』にしても、カードを見た時点で、誰が勝って誰が負けるか本当に分からなかった。

 所属選手の少ない中でも、ある種の勝負論に満ちたカードが組めてしまう強みは国内上位かもしれない。そのような磁場を形成できているのは強みだと私は思う。

優位性と課題が両天秤な女子部門

 男子の【誰が勝つか分からない】雰囲気に対して、女子部門は発展途上だ。

 ストロングスタイルプロレスという団体が、既存の女子団体の傾向や特色を知らないからこそ打ち出せる面が、良くも悪くも反映されている。
 多くの国内女子プロレスの試合で見かける印象が強い、【正面に向けて試合中にポーズを取る】、【自らの美や愛嬌を押し出す】といった定番ムーヴの潮流に背を向けているし、試合の方は技主体で組み立てる男子に近い内容を展開。

 オープニングマッチで組まれた『薮下めぐみvs.ダーク・パンサー』には、そうした傾向が見事に反映されていた。
 関節技の取り合いにしてもシリアスで、ピリッとした空気が会場に緊張感をもたらしていた。こういう試合は、今の女子で中々見られない印象だ。

 一方で、女子プロを知らない故に生まれる弊害も、女子部門には感じた。
 ヒールや悪玉的なダーク・タイガー率いる『DarkerZ』と抗争しているユニットが、ヒールに寄った『CRISIS』という、各個人のスタンスがボヤけて見える配置が個人的には気になったところ。
 また、ハードコアマッチにしても、一般的なハードコアマッチに比べ幾分か攻撃の当たりはソフトで、思いきりの良さが欠けていた感は否めない。
 特にダーク・タイガー達は凶器攻撃を積極果敢に多用するにもかかわらず、凶器の扱いや介入の仕方、ハードコアルールに慣れていない点が、見る側にもモロに伝わってしまっていた。

 また、タイガー・クイーンが勝ち続ける状況にストップをかける選手や、ライバルストーリーの展開が皆無なのも気になるところ。
 この日はウナギ・サヤカの参戦があったものの、試合で中心的な役割を担っていたのは、タイガー・クイーンでもウナギ・サヤカでもなく、本間多恵だったように私には見えた。
 試合が顔見せ的な面も強かったとはいえ、他のウナギの参戦先に比べても、”起爆剤”投入に対する盛り上がりは現時点で薄いように感じる。

 また、タイガー・クイーンには、かつてストロングスタイルプロレスに在籍していた納谷幸男(現:DDTプロレスリング)のデビュー当初とダブる箇所もある。
 結果は連戦連勝で、ポテンシャルも確かだけれど、周囲に今一つスゴさが伝わっていない。選手の実力云々以上に主催の意向が強く感じられるエディット具合も、内容にノリづらさをもたらしている印象は否めない。その辺りが今後改善されていくだけでも、印象は大分変わってくるはずだ。

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