豊中 DEEP☆KICK ZERO 05!健真がメインで勝利!

 興行は生もの。直前になって何が起こるかわからない。2023年の新春第一弾として開催された『DEEP☆KICK ZERO』(1月29日・大阪豊中市・176BOX)はまさにその典型というべき興行となった。
(文・布施鋼治/写真・石本文子)

第8試合 岩KING vs 健真

 興行は生もの。直前になって何が起こるかわからない。2023年の新春第一弾として開催された『DEEP☆KICK ZERO 05』(1月29日・大阪豊中市・176BOX)はまさにその典型というべき興行となった。大会1週間ほど前にセミファイナルに出場予定だった岩郷泰成(EXARES)がケガで欠場したかと思えば、大会3日前になって大前洸貴(INFINITY KICK BOXING GYM)が体調不良を理由に出場をキャンセルしてしまったのだ。
 そこで第8試合の岩KING(NJKF心将塾)vs健真(BLACK☆Jr)がメインに昇格した。健真はタコマスクを装着した出で立ちで所属するBLACK☆Jrの教え子たちと一緒にタコ焼きダンスをしながら登場してきた。対する岩KINGは光るレインボーカラーのかつらをつけての登場だ。まさに関西。なんてシュールな入場なのだろうか。
 1R、最初にペースを握ったのは健真の方だった。ワンツーや前蹴りを手始めに、パワーを感じさせる左ミドルで岩KINGを押す。右ストレートでアゴを上げさせる場面もあった。1Rは明らかに健真のラウンドだったか。2Rになると岩KINGの逆襲が期待されたが、コーナーでバッティングを受け大流血。リングドクターの診断の結果、即座に試合続行不可能と宣告された。2R17秒までの判定の結果、三者とも20-19で健真の勝利を支持した。
 しかしながら負傷判定という結末だっただけに、レフェリーに手を上げられても健真に笑顔はなかった。この勝利をプラスにするかどうかは全て健真次第だ。

第7試合 久保田有哉 vs 翔

 昨年DEEP☆KICKで1勝1敗だったTARGETの久保田有哉(TARGET)が再び大阪へ。セミファイナルで翔(かける・フリー)と激突した。極真空手出身の翔は仕事の関係で全国を点々としながら現役を続ける″さすらいのキックボクサー″だ。
 下馬評では「久保田が有利」という声が大きかったが、それを覆すかのように翔は1R終了間際相手をロープに詰めるや左ストレートをクリーンヒットさせ、一瞬ながら相手の腰を落とさせる。
 2Rになると久保田はセコンドからの「焦るな。蹴っていけ」という支持通りに右ミドルを軸に攻撃のピッチを上げていく。それに対して翔は左ストレートで反撃を試みる。第2Rが終わった時点でのオープンスコアは三者とも20-19で翔。もうあとがない久保田は3Rになるとさらにピッチを上げていく。
 右のローとヒザが効果的だ。最後は両者とも果敢に打ち合ったが、手数で久保田が押し切ったラウンドだったか。案の定、ジャッジのスコアは三者とも29-29の痛み分けに終わったが、とめどなく続いた打ち合いに観客は何度もどよめいた。数年後に再戦を見てみたいと思わせる白熱したセミファイナルだった。

                               
第6試合 井上大和 vs 中田史斗

 究道会館の中田史斗(究道会館)はピンクのタイガーマスクをかぶって登場した。一方、NJKFのTOKEN KICKBOXINGGYMに所属する井上大和(NJKF TOKEN KICKBOXING GYM)はリングインするや、トントンと軽くジャンプしながらリズムをとるなど落ち着いていた。
 勝負が動いたのは2R。井上が右のショートを決めると、中田はやや効いた素振りを見せる。井上が連打で追い打ちをかけると、中田はクリンチして投げるしかなかった。
 果たして2Rまでのオープンスコアは20-19で井上。3Rになると、中田はガードを上げながら反撃を試みるが、時すでに遅し。井上は相手の突進を右アッパーを織りまぜた連打で迎え撃つ形で応戦して試合終了のゴングを聞いた。ジャッジは3-0で井上。自分の勝利が確定した瞬間、井上は野獣のような雄叫びをあげた。続けてレフェリーに右手を上げられると、人目もはばからず号泣した。
 勝利は激しく、美しい。

DEEP☆KICK-60kg挑戦者決定トーナメント決勝進出者マイク

 メインで大前と対戦予定だった上野コウキ(直心会)と、セミで岩郷と対戦予定だったライヤマン(ナックルズGYM)がリングイン。どちらもDEEP☆KICK-60㎏挑戦者決定トーナメント準決勝だったため、不戦勝扱いで両者は3月12日の「DEEP☆KICK 65」で決勝を争うことになった。
ライヤマン「今日は不戦勝でファイナルに進出することになりました。頑張ります」
上野「今日(の準決勝)は流れてしまった。楽しみにしていた方々に申し訳ない。でも3月にライヤマン選手との決勝が決まりました。打ち合いになると思うので、楽しみにしていてください」

第5試合 HOTARU vs ボーちゃん

 今大会では唯一の女子キックは唯一の国際戦でもあった。青コーナーから登場のボーちゃん(MFC MUAY THAI FIGHTER CLUB)は現在名古屋在住ながら、タイ国ランパーン出身という生粋のタイ人。対するHOTARU(Continue)はアマチュアからプロに転向したニューカマーだ。1R、HOTARUは右に回りながら、ポーちゃんを攻略する。打ち合いになっても怯まず、右ハイをヒットさせる場面も。手数をとるなら、明らかにHOTARUのラウンドだった。
 続く2Rになっても、HOTARUの勢いは止まらない。右クロスを繰り返して、相手のタイ人を追い詰める。結局、3Rになっても、HOTARUの手数が落ちることはなく、3-0の判定勝ちを収めた。気持ちでタイ人を押し切ったHOTARUにDEEP☆KICK実行委員会は大舞台でのハードルを約束した。

第4試合 嘉武士 vs 横田速人

嘉武士(NJKF健心塾)vs横田速人(猛志會)は序盤からシーソーゲームになった。嘉武士が右ストレートを武器にローやヒザ蹴りも繰り出していけば、この日がプロデビューという横田はワンツーからの前蹴りで応戦する。2Rになると、的確なアドバイスを送るセコンドの支持通りに嘉武士はプッシュしてからの右ローで横田の体力を削りにかかる。続く3R、劣勢を強いられた横田が前に出てくると、嘉武士は容赦なくローの連打を浴びせる。それに対して横田が細かい連打を放つと、嘉武士が一瞬フラつく場面もあったが、試合の流れを変えるまでには至らなかった。結局、2名のジャッジが30-29で嘉武士の勝利を支持した。

第3試合 杉山卓 vs 田邉雅弥

 試合開始早々、杉山卓(TeamFIST)は左のインロー、右ミドル、左の三日月蹴りを矢継ぎ早に繰り出す。さらに詰めて右ローと先制攻撃を仕掛ける。しかし田邉雅弥(Blaze)は杉山の出方をよく観察していた。右ローの連打から右ヒザをまともにアゴにヒットさせ、さらに追い打ちをかけるようにヒザ蹴りの連打でダウンを奪う。この猛攻を受けた杉山は立ち上がれず、最後はレフェリーが試合を止めた。

第2試合 木下亜輝斗 vs 相沢晟

 ガウンを着て登場の木下亜輝斗(FFT)とガウンなしで登場の相沢晟(TARGET)。関西と関東の選手の流儀の違いといってしまえばそれまでながら、入場の時点から両者は大きなコントラストを描いていた。1R、木下が左ミドルからローを放つと、相沢は少々ムキになったかのように距離を詰めようとする。そうすると、木下は回りながら相手のアタックを回避する。さらに木下が右ジャブをライトヒットさせると、相沢は再び前に出る。2R、相沢のワンツーで木下はダウン。一度はダウンを宣告されたが、すぐにスリップと訂正される。
 その後相沢が詰めると、木下は距離をとりながら逃げる展開が続く。距離をとりながらアウトボクシングするなら理解できるが、リングサイドからは明らかな逃避行為に映った。その後相手を捕まえた相沢が押し倒す場面もあったが、攻勢点とは見なしてもらえず。結局、判定は0-1(木下)の痛み分けに終わった。もっと厳しいレフェリングを求めたい一戦だった。   

第1試合 内本築 vs 瑠稀士

 1Rはほぼイーブン。2Rになると、瑠稀士(るきと・R.S-GYM)が一気に攻勢に出た。左フックをクリーンヒットさせ、前進する。さらに痛烈な右フックを放つと、内本築(NJKFteamBonds)は腰を落とすようにして先制のダウンを許す。その勢いで瑠稀士はフックで追い打ちをかけ2度目のダウンを奪う。とどめは右フック。内本が崩れ落ちると同時にタオルが投入され、レフェリーも試合を止めた。2023年のDEEP☆KICK本戦は壮絶なKOで幕を開けた。