未来派志向の51年目、開幕~2023.1.4新日本プロレス東京ドーム大会~

■ 新日本プロレス 『アントニオ猪木追悼大会 WRESTLE KINGDOM 17 in 東京ドーム ~闘魂よ、永遠に~』
日時:2023年1月4日(水) 17:00開始
会場:東京ドーム 観衆26,085人(=主催者発表)

 アントニオ猪木追悼大会と銘打たれた2023.1.4新日本プロレス・東京ドーム大会は、実に現在・未来派志向な大会だった。

 追悼大会とはいえ、そうした要素は本戦開始前のメモリアルマッチ、オープニングVTR、メイン前の煽りVTR、メイン後くらいしか無かった。
 その為、【追悼大会】という視座で見てしまうと、物足りなさを感じてしまうファンも、もしかしたらいたかもしれない。

 しかし、大会自体がダメだったという訳ではないし、筆者としては寧ろ面白かった・素晴らしかったと感じている。

 筆者としては、追悼大会だからといって試合内容まで創始者のイズムに寄る必要は無いし、創始者に対するリスペクトを打ち出した姿勢があればそれで良いのではないか、と考えている。
 組織やイズムは時代と共に変わり行くものであり、そもそも、近年の新日本プロレスだって、猪木イズムを極端に押し出したりはしていないのだから。

 過去に何度か、新日のビッグマッチでダークマッチとして組まれた事のあるスターダム提供試合も、今回はIWGP女子王座戦という形で本戦に組まれ、KAIRIと中野たむは約5分に情念を詰め込む素晴らしい試合を見せた。

 ダブルメインイベントの前に行われたJrヘビー級王座戦も、4WAYというゲーム性の高いルールで誰が主導権を握るか読めないスリルが続いた。
 中でも、唯一Jrヘビー級王座の戴冠実積のないマスター・ワトが試合の中心に立っていた点は見逃すことができない。

 ダブルメインイベントでは、一歩間違えば批判も浴びかねない危険に身を置きながら、年間ベストバウト級の試合を残した『ウィル・オスプレイvsケニー・オメガ』や、双方のフィニッシャーを正調で決めるまでに展開される巧みな切り返し合いに痺れた『ジェイ・ホワイトvsオカダ・カズチカ』の二大看板が並び立ち、追悼大会に花を添えた。

 私はアントニオ猪木がいた時の新日本プロレスを知らない。

 けれど、こうした試合は恐らく猪木要素を全面に押し出した時に、そぐわないものとして扱われていたような気もしている。

 それでも、新日本プロレスは今を選んだ。
その選択こそ、私は尊いし素晴らしいものだと感じている。

 そんな、通常とは毛色の異なる東京ドーム大会を締めることが出来たのは、オカダ・カズチカの存在なくしてあり得なかったと筆者は思う。
 彼こそが今大会の重要なピースであり、追悼大会という要素を担保した存在だった。

 声出し応援が解禁された東京ドーム大会で最後の最後に『1,2,3,ダー』で締める行為は必須だったし、それをドームのメインで実行できる選手はオカダしかいなかった。
 東京ドームのメインに相応しい試合を残し、51年目に向けた決意と創始者に対する思いを涙ながらに述べたオカダの言葉は、その象徴だったように思う。

 2022.11.20有明アリーナ大会にてケニー・オメガがオスプレイに挑戦表明した際、新日の動員が落ちている面に触れていたが、この日のドームの動員や盛り上がりを見ていても「やはり新日本プロレスは業界のリーディングカンパニーである」という事実をまざまざと見せつけられた。
 普段はあまり新日本プロレスを見ていない筆者でさえ、そのような感想を抱いたのだ。

 日本国内の団体が、世界を見据えた巨大なる存在に並び追い越す事は非常に難しいし、多くの観客に満足感を与える規模も他を圧倒している。

 51年目の2023年、新日本プロレスは最高のスタートを切ったと言っても過言ではないだろう。


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