[ファイトクラブ]天下の奇祭会陽の華やぎ!1000人大観衆歓喜の新日本岡山大会

[週刊ファイト3月18日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

▼天下の奇祭会陽の華やぎ!1000人大観衆歓喜の新日本岡山大会
 photo:佐々木良和 by 猫山文楽拳
・岡山に寄り道して人生変わった身内の件
・大拍手に応えオーカーン節炸裂「岡山の愚民どもー!」
・メインは岡山が誇る天下の奇祭西大寺会陽(えよう)さながらの魂の激突
・大胆予想!NEW JAPAN CUP 2021決勝戦カードは、これだ!


 記者が子どもの頃あの名作漫画タイガーマスクを「ぼくらマガジン」で毎週リアルタイムに読むことが出来たのは、その当時叔父が実家が本屋の彼女と交際していた恩恵にあやからせていただいていたからにほかならない。
 彼女の両親に取り入るためか叔父は雑誌を買いあさり、それらを姪の私に惜しげもなく与えてくれた。少年マガジン、ジャンプ、サンデー、キング、チャンピオン、珍しいところでは月刊のらくろ、漫画以外にも週刊プロレス、ゴング、週刊ファイト、新品同様の状態で本を読むことが大好きだった姪の私に手渡ししてくれた。
 しかも叔父は鍵っ子の姪の面倒を見てやりたいから一緒に付き合ってというのを口実に彼女をデートに誘った。
 それはそれで、水族館や美術館、映画にプロレスと、連れ回されおまけにお子さまランチをご馳走してもらえて私にとってはありがたいことこのうえなしだった。
 しかしそんな至福の日々は長く続かず、ある事件をきっかけに叔父はあっさり彼女に振られてしまった。
 なんとか彼女と復縁しようとした叔父は私を連れて本屋を訪れたが彼女は叔父とは一言も言葉を交わさず、私にだけ微笑んで、別れ際に一冊の書物をくれた。
「アラビアンナイト」
ハーレムで美女が王様に夜とぎをする話だ。意味深な本を手渡されたものであった。
 九州出張の帰途プロレスを見るため岡山に寄り道をした際終電に間に合わず駅に近いスナックで夜を明かしたというその一夜の過ちが命取りとなった。
 身内が因縁の岡山県で姪の私がプロレスを取材する奇縁。
 本屋の彼女に袖にされてからの叔父は、人が変わったように遊び人になり仕事も女性もコロコロ変わる浮草暮らしに明け暮れて身を持ち崩し6人いた母の兄妹のなかで一番末っ子だったが、不摂生がたたり体を壊して早世した。
 思えばタイガーマスクを初回から最終回まで読破したことがきっかけとなってリアルタイガーマスクに傾倒、そこからマスクマンに心惹かれるようになっていった。
 そんなことを思い出しながら足を運んだジップアリーナ岡山。

 東京都や大阪府と比較すればだいぶ感染者数も少なくはなってきたがまだ予断許さぬコロナ禍の開催ということで座席間のスペースを空け席数を減らしての開催ではあったけれども、見渡したところ客席はほぼ埋まっていたように思う。
昨年秋以来の開催とあり待ちわびた岡山のプロレスファンの熱気がリング上の選手たちにも伝導しエンパイア、オーカーンがぜん調子の乗って「岡山の愚民どもーっ」雄たけびをとどろかせれば、これにもバカ受けで拍手喝采。
 メインのSANADAと石井の、まるで地元の会陽(日本三大奇祭のひとつとして有名な西大寺会陽裸祭)を思わせる肉と肉、男のはだかのぶつかりあいが20分を越えたところでは大地を揺るがす地鳴りのように大きな拍手が、誰が音頭を取るでもなく自然発生的に起こったことからも、岡山県のプロレスファンが、新日本プロレスの開催を待ちわびていたことがわかった。
 前半パワーで石井がSANADAをいなすが石井の不敵な態度がSANADAの闘魂に火を点け両雄一歩も引かずぶつかりあっていく。クライマックス互いにカウント2.99で意地と本能で返す凄まじい攻防に岡山プロレスファンは大いに盛り上がり惜しみない大拍手を以て声援に替え、プレイヤーもこれに呼応しヒートアップ。


 最後の最後にSANADAがコーナートップから、晴れの国岡山メインイベントの決まり手にこれ以上相応しい決まり手ないだろうと思われる渾身のムーンサルトプレスで3カウント。
 25分18秒を全力でぶつかり合ったふたりは大拍手に包まれながらしばらく起き上がることが出来なかった。
 よろけながら立ち上がり途中倒れこみそれでも花道を自分の足で帰っていった石井の背中にも大きな拍手。
 去り行く敗者の後姿を見届けたSANADAのマイク
「俺は、日本で一番、岡山が好きです!」
 記者も心で叫んでいた。
「俺も日本で一番、岡山が好きだ」と。

 大会終了後、今回観戦した岡山の新日本プロレスファンにNEW JAPAN CUP2021の今後の行方と決勝戦に到達するふたりの選手を予想してもらったところ、記者の分析力の遥か上を行くとんでもなく大胆かつ実現したら誰もが観たいと思うに間違いない驚愕の対戦カードを叩き出してくれた。
 やはり岡山のプロレスファンの情熱と洞察力は侮れない。

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