『ストロングスタイルプロレス Vol.9』記念イヤー、桃の節句に聖地で見せた神興行!!

 今年、団体の象徴でもある初代タイガーマスクのデビュー40周年を迎えた、ストロングスタイルプロレス。
 その記念イヤーのプロローグに位置付けられた3・3後楽園大会『ストロングスタイルプロレス Vol.9』は、最初から最後まで見どころ満載の「神興行」となった。

 開会の挨拶で平井丈雅代表がいつも以上に力の込もった名調子で記念イヤーのポスターを披露、新間寿会長、初代タイガーマスク/佐山サトル総監を呼びこむ。

平井丈雅代表


(左から)初代タイガーマスク/佐山サトル、野尻栞理さん、新間寿氏

 車椅子で姿を見せる事が多かった佐山サトルがしっかりした足取りで登場すると会場からどよめきが起こり、世界で新間寿氏だけが許されるレベルの辛口で、闘病中のアントニオ猪木へ「1、2、3」のエールを贈る。

 第1試合、スーパー・ライダーが直伝のタイガーステップを披露して闘い始め。

 
 そしてメインは、ハイアングレイシーを倒したジョーカー、ケンドー・カシンと、ヒクソングレイシーを引退に追い込んだ侍、船木誠勝の1戦。
 そこで繰り広げられたハイレベルなグラウンドの攻防は、1972年3月6日の新日本プロレス旗揚げ戦でのアントニオ猪木vs.カール・ゴッチ戦を彷彿とさせた。

 フィニッシュは、スリーパーで極められかかったケンドー・カシンが、マスクを脱皮させるギミックを発動。

 そこから丸め込まれた船木誠勝が唖然と見送る姿は、やはり1972年、10・10大阪の猪木vs.ゴッチ戦を想起させた。

  

 まさに
「真剣勝負ではないがガチンコ」
を標榜する『ストロングスタイルプロレス』を象徴する、理想的な試合だった。
 
 オープニングから締めに至るまで、山あり谷ありの交響曲の様な、闘いを通しての芸術的表現に唸らされた。
「神興行」
そう評して良いだろう。 
 
 その源流は新日本プロレスであり、修斗や全日本女子プロレスからの流れも合流した大河は、
「シューティングも内包したものがプロレス」
という馬場さんの全日本プロレス的概念をも受け容れている。
 そして何より、このプロローグを「神興行」足らしめたのは、ストロングスタイルプロレスを背負って立つ、間下隼人とスーパー・タイガーの、プロレスラーとしての表現の著しい成長だった。 

 まず、第3試合でUWAアジアパシフィックヘビー級選手権の防衛に挑んだ間下隼人は、12月に負った頭部のダメージが癒えぬ中、膝と肘の靱帯を痛める満身創痍で登場。
 高岩竜一はその膝へコーナーポストからフライングエルボーを叩き込むなど容赦なく攻め立てたが、間下隼人は痛みを押してキックで反撃。見事防衛を果たした。



 会見で間下隼人を「ヨカタ(世方。非業界人=一般人)」呼ばわりした高岩竜一は、そのド根性を認め、自ら王者の腰にベルトを巻いた。

 そしてセミファイナルで、野獣・藤田和之とタッグを結成したスーパー・タイガーも、間下隼人に勝るとも劣らない変身ぶりを披露。

 武道家、格闘家としての強さ、実績は誰もが認めるところながら、闘いを通して表現する「プロレスラー」としての評価には厳しい声も少なくなかった。
 しかし日高郁人の元で新弟子同様の厳しい特訓を受けるなど、ここ最近は「プロレスラー」としての評価もうなぎ登り。

 そしてこの日初代タイガーマスク/佐山サトルが
「新しい闘いを見せてくれます」
と、上げたハードルを越える闘いを見せ、名実共に初代タイガーマスクの後継者としての覚醒を見せた。

 プロレスでも格闘技でも革命的な活動を行ってきた初代タイガーマスク/佐山サトルが辿り着いた理想を具現化すべく邁進してきた「ストロングスタイルプロレス」。
 3月3日、我々は遂に、具現化したその真髄を見る事が出来たのだ。

『ニコニコプロレスチャンネル』にて2021年3月10日まで視聴可※第2試合途中まで無料試聴可
https://live.nicovideo.jp/watch/lv330719218

■ “初代タイガーマスク”佐山サトル『ストロングスタイルプロレス Vol.9』
日時:3月3日(水) 開始18:00
会場:東京水道橋・後楽園ホール
観衆:691人(主催者発表)

<第1試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
スーパー・ライダー(ストロングスタイルプロレス) ○日高郁人(ショーンキャプチャー)
 8分38秒 肩車式バックドロップホールド
阿部史典(プロレスリングBASARA) ●アレハンドロ(フリー)



ライダーキック!!

<第2試合 女子プロレス スペシャルタッグマッチ 30分1本勝負>
〇シャガー横田(ディアナ) 雪妃真矢(アイスリボン)
 11分49秒 前方回転かかと落とし→片エビ固め
安納サオリ(フリー) ●青木いつ希(ショーンキャプチャー)


<第3試合 UWAアジアパシフィックヘビー級選手権試合 60分1本勝負>
[王者]
〇間下隼人(UWAアジアパシフィックヘビー級王者/ストロングスタイルプロレス)
 12分48秒 リアルデンジャラスバックドロップ→片エビ固め
●高岩竜一(iDENサービス)
[挑戦者]

 かつて福岡ドームの端から、リング上の高岩竜一の試合を観ていたという間下隼人は、遂にその距離を追い付いた。そして
「高岩さんは僕の事をヨカタ体質と言ってましたが、おたく体質です」
と、大先輩の発言を訂正した。

<セミファイナル タッグマッチ60分1本勝負>
○スーパー・タイガー(第15代レジェンド王者/ストロングスタイルプロレス) 藤田和之(はぐれIGFインターナショナル)
 10分32秒 ジャーマンスープレックスホールド
河野真幸(フリー) ●将軍岡本(フリー)

 試合前、藤田和之とコンビネーションの打ち合わせなど一切無し、ぶっつけ本番でリングに上がったというスーパー・タイガー。
 かつてIGFの同志だった将軍岡本と結託しているのでは?という疑心暗鬼の中、背後も警戒しつつあの闘いを見せた事に驚かされた。

<メインイベント シングルマッチ 60分1本勝負>
●船木誠勝(フリー)
 11分09秒 首固め
○ケンドー・カシン(はぐれIGFインターナショナル)

 敗れた船木誠勝だが、悔しさよりは試合内容への満足感が溢れていた。
「マスクマンになりたかった自分と、なりたくなかったカシン選手の運命が、こういう形で交錯するんですね」
と、感慨深げに語った。