SEAdLINNNG新宿騒乱! 踊った! 飛んだ! 川畑梨瑚、記憶と引き換えに朱崇花から3カウント!!

 1936年2月26日の払暁。雪の舞い散る帝都を1483名の皇道派反乱部隊が騒がせた226事件から85年。
 2月26日の新宿FACE。
 3ヶ月ぶりの試合でメインに抜擢された川畑梨瑚の朱崇花からの3カウントは、やはり「事件」だと言って良いかもしれない。 

(左から)高橋奈七永、川畑梨瑚、中島安里紗

「アリとの一戦なんか、よく実現できたと思う。自分の運命をスポッと切り取って、別の猪木を強引にそこに当てはめたーそんな気がするんですね。」
「人間の運命は決まっている。私にしても決められている筈なのだ。だが、猪木の中に、アリと闘うという運命が組み込まれていたとはどうしても思えないのである」
井上義啓著 『THEプロレス本No.3 不在証明』ベースボールマガジン社刊 より  

 川畑梨瑚という、キャリア2年ちょっと(それも長い怪我の欠場期間を含む)のプロレスラーを考えた時、やはりSEAdLINNNGのメインで朱崇花から3カウントを奪う運命があったとは思えない。
 プロレスを題材にした舞台出演がキッカケでプロレスラーになった川畑梨瑚。ボクシングの経験もあるというが、欠場中、旧姓広田さくらと救世忍者乱丸の試合映像を好んで観ていた由。

 どうしたって、高橋奈七永&中島安里と組み、春輝つくし&真琴&朱崇花組と組めば、川畑梨瑚の劣勢は一目瞭然だ。

 入場時、高橋奈七永&中島安里紗のシトラスの風と共に満面の笑みで優雅に踊る姿からも、川畑梨瑚が本領を発揮出来るパフォーマンスはここまでだ、と思ったファンが大半だったであろう。
 ムーンサルトは迎撃され、スープレックスは跳ね返された川畑梨瑚に金星をもたらしたのは、セコンドの堀田祐美子の強烈な椅子攻撃だった。


 
 近頃、セコンドの乱入が繰り返されて非難囂々の団体もあるが、ようは観る側が「堪りかねた怒りの一撃」「乱入止むなし」と納得するかどうかが問われている。

 川畑梨瑚と堀田祐美子の場合はどうだったか。

 コロナ禍にあって、団体所属という身分の保障を投げうってフリーとなり、師である堀田祐美子の元へ身を寄せたのが川畑梨瑚というレスラーである。
 川畑梨瑚がデビューした後楽園大会、堀田祐美子はリング上で選手達を怒鳴りつけた。
 そうして厳しく鍛え、突き放してきたにも関わらず、師を頼ってきた愛弟子。

 SEAdLINNNGのリング、まして高橋奈七永&中島安里紗と組ませるというのは、そもそも堀田祐美子の強烈なプッシュがあっての事で、現在の身の丈に合わない抜擢だったと言える。
 その愛弟子が、椅子まで使ったラフファイトを交えての集中砲火を浴び、まして自らも挑発されたとあっては、むしろ助太刀に入るのが当然の事であろう。
 声こそ出せないが、場内の雰囲気も「待ってました」だった事は間違いない。


激昂した堀田祐美子が朱崇花を引きずり回す場外乱闘。筆者はこの直後逃げ遅れて跳ね飛ばされた…

 勝利をもぎ取ったとは言え、代償も大きく、試合中に記憶が飛んだという川畑梨瑚は試合後、自分が何をしたのか解らない状態で横たわっていた。

 かつての全日本女子プロレスは、マッハ文朱という偉大な例外は居たものの、成るべくしてなったレスラーの集団だった。堀田祐美子も高橋奈七永もそうだし、その流れを組む中島安里紗、世志琥を擁するのがSEAdLINNNGである。
 一方で、現代は女優やアイドルや声優を目指して道を逸れ、女子プロレスを表現している選手も多い。
 堀田祐美子やSEAdLINNNGという武闘派に身を寄せる事は、表現よりは闘いとしてのプロレスを選んだという事でもある。
 敢えて修羅の道を選んだ川畑梨瑚。話すのもやっとの状態で花穂ノ利とのタッグ結成を受諾、支えられながらも最期の締めに合わせてしっかり立ったパッションを見れば、試合後に自分の脚で立っていられるのもそう遠くないと思える。

『シトラスの風』5人に

 その花穂ノ利と川畑梨瑚組に堀田祐美子がセコンドとして支え、3・17後楽園大会のタッグトーナメント出場も決定した。
 花穂ノ利&川畑梨瑚という若手コンビに、堀田祐美子が加勢する構図は斬新でプロレスならではのハンデの付け方でもあり、まさに高橋奈七永が提唱の「新しい風」となった。

 海樹リコは真琴とラスエゴとして出場。さらにこの日、悪魔っぷりを遺憾なく発揮した春輝つくしも永島千佳世とのハイスピードコンビを結成している。

  
 混沌として行方の解らないタッグトーナメントが行われるSEAdLINNNG3・17後楽園、俄然3月女子プロレス興行の大型台風発生となった。

■ SEAdLINNNG〜Grow together!〜
日時:3月17日(水) 開始18:00 開場18:45
会場:東京水道橋・後楽園ホール

参戦決定選手
世志琥/高橋奈七永/中島安里紗/花穂ノ利/海樹リコ/永島千佳世/真琴/つくし(アイスリボン)/山下りな/小林香萌/朱崇花/笹村あやめ(2AW)/青木いつ希(ショーンキャプチャー) and more!

■ SEAdLINNNG~NEW LEAF2021~
日時:2月26日(金) 開始18:00
会場:東京・新宿FACE大会
観衆:未発表

<メインイベント6人タッグマッチ 30分1本勝負 〜NEW WIND!〜>
高橋奈七永 中島安里紗 〇川畑梨瑚 
 22分08秒 セコンドの椅子攻撃⇒エビ固め
春輝つくし(アイスリボン) 真琴 ●朱崇花

<第3試合 タッグマッチ 30分1本勝負>
〇世志琥 小林香萌
 17分42秒 ダイビングセントーン⇒体固め
山下りな ●青木いつ希(ショーンキャプチャー)

<第2試合 ハイスピードWORLD 3WAYマッチ 20分1本勝負>
〇藤本つかさ(アイスリボン)
 9分49秒 ビーナスクラッチ
●テクラ(アイスリボン)
 
※もう1人はAKARI(PURE-J)

<第1試合 シングルマッチ 20分1本勝負>
〇花穂ノ利 
 10分33秒 バックドロップ⇒片エビ固め
●海樹リコ
※初シングル

※詳しくは電子書籍版『週刊ファイト』3月11日号にて