タイに通用する選手の育成を目的とした新団体 WINDY SPORTSが旗揚げ

 12月21日(日)東京・新木場1stRINGにて、WINDY SPORTS事務局主催「WINDY SPORTS」(以下WINDY)の旗揚げ戦が開催された。
WINDYの代表に就任した大田原光俊氏は、5年前となる2009年12月に、ここ新木場1stRINGにて旗揚げした「Muay Thai WINDY Super Fight」の創設者。3年後の2012年6月に同代表を辞任(2012年6月以降は佐藤孝也氏が就任)2014年はタイのメーカーであるWINDYとの5年契約の更新の年を迎えることとなったが、佐藤氏はWINDYとの契約を満了。その後大田原氏がWINDYと契約を締結。5年前に旗揚げしたWINDYの頃を思い出し、心機一転を図る為に、大会名を「WINDY SPORTS」へ改称。

 ムエタイの本場タイに通用する選手の育成を目的とすることを掲げたWINDYの記念すべく旗揚げ戦は、約80名がエントリー。一般の部からもエントリーがあったが、ジュニアの割合が多く、今大会はジュニアがメインの大会となった。また、WINDY SPORTSでは、競技層の拡大を図るべく、キック部門とムエタイ部門を創設。階級設定はキック部門は一般的な5kg刻みではなく独自の階級設定。ムエタイ部門はポンド換算での階級設定となった。

 WINDYでは、ジャッジメントの公平性を期するために、試合終了直後に所属ジムの責任者に限り、その場で異議申し立てを受け付けるという措置を取った。抗議となれば、後日書面で提出するのが一般的だが、その場で異議申し立てを受け付けるのは極めて異例といえる。

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<キック部門>
-20kg級
伊藤健太郎(治政館)と馬場藍希(WSRフェアテックス池袋)による一騎打ちとなった。伊藤のパンチが馬場の顔面を捉え、馬場の鼻から出血。3Rになると出血が目立ち、ドクターが試合続行不可能と判断し、試合をストップ。伊藤が勝利し、-20kg級の初代王座に就いた。

-23kg級
シードの大野月海(T-BEAST)が、初戦を勝ち上がった黒木弥月(WSRフェアテックス池袋)相手に、1Rからパンチでガンガン攻め、ダウンを奪って勝利。決勝に駒を進めた。一方、左ミドルと左前蹴りを駆使して、巧みな足技を見せた田邊日向(橋本道場)が決勝進出を決めた。パンチの大野、蹴りの田邊というわかりやすい展開となり、大野はパンチで前に出ながらラッシュを仕掛ける。田邊は大野のパンチラッシュに後退しながらも、左ミドルと左前蹴りで応戦。手数で上回った大野が勝利し、-23kg級の初代王座についた。大野は今大会のMVPを獲得。

-27kg級
シードの浅井麗斗(治政館)が勝ち上がって来た浦田拓真(治政館江戸川)が決勝で同門対決。凄まじいパンチの打ち合いの末、浅井が勝利し、-27kg級の初代王座に就いた。

-31kg級
キック部門・ムエタイ部門を通じて、今大会最多となる11人がエントリー。初戦で谷央羅(ASASSIN)と隈本浩志(Weed Gym)による九州同士が激突。隈本が左ミドル連打でKOし、2回戦に進出。シードの塚本紗彩(ドージョーシャカリキ)との一戦も、左ミドルを連発し、首相撲で回して準決勝進出。勝ち上がった桂英慈(WSRフェアテックス池袋)と決勝を賭けて激突。判定で桂が決勝へ進出を決めた。桂と決勝の座を争うのは黒木涼耶(WSRフェアテックス池袋)となった。黒木は準決勝で馬場由輝と同門対決を制して決勝でも同門対決という珍しい形となった。
左ミドルと首相撲からヒザの応酬が続き、手数がやや上回った黒木が判定で勝利し、黒木が-31kg級の初代王座に就いた。

-34kg級
初戦で堀太虎(橋本道場)と舟本空明(治政館江戸川)が対戦し、堀が勝利。シードで優勝候補筆頭の岩尾翔(パワーオブドリーム)と準決勝で激突。サウスポーの堀に対してオーソドックスの岩尾。堀は左ミドルを、岩尾は右ローと、互いに蹴り合いが展開。岩尾が蹴り勝ち、先に勝ち上がった伊藤健斗(治政館)と決勝の座を争うこととなった。決勝は岩尾が判定で勝利し、-34kg級の初代王座に就いた。

-38kg級
玉川らいと(晴山塾)と井手口優斗(Weed Gym)による一騎打ちとなった。井手口が前蹴りを連発し、2Rにはハイキックをヒットさせ、すかさず前蹴り。玉川もパンチと右ローで応戦するも、井手口の蹴り技が冴え渡り、判定で井手口が勝利。-38kg級の初代王座に就いた。

-42kg級
初戦で古村光(Exsindecon Gym Japan)と富田茉亜久(ドージョーシャカリキ)が激突。1R終了間際に古村の左ストレートが富田の顔面を打ち抜き、KOで勝利。シードの樋口優太(Weed Gym)と決勝の座を争うこととなった。古村は左ミドル、樋口は右ローと、互いに蹴り合う姿勢を見せた。2Rになると、古村は左ミドルに加え、左ヒザも出しながら手数を増やしていく。樋口は右ローで応戦。判定で古村が勝利し、-42kg級の初代王座に就いた。

-50kg級
ジュニアクラスのベテラン・辻龍也(WSRフェアテックス池袋)が初戦と準決勝を勝ち上がり、決勝へ駒を進めた。一方、別ブロックでは、安武一也(ASSASHIN)が山口鋭正(鍛錬会)をヒザでKOして決勝進出を決めた。これにより、先に勝ち上がった辻と決勝の座を争うことに。
スピードある阿武に対し、ムエタイスタイルでどっしりとした構えの辻。対照的なスタイルとなった。パンチと右ローの辻に対し、首相撲とヒザの阿武。2Rには、辻のノーモーションの右ローがヒットし、徐々に有効打を集めて辻が判定で勝利。-50kg級の初代王座に就いた。

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<ムエタイ部門>
準決勝までは1分3R、決勝は1分5Rの試合構成を採用。決勝では防具を着用しない上に、ヒジありルールを採用。いわばプロと同じ条件で王座を争うこととなった。

55ポンド級
初戦で小岩生玖(B-FAMILY NEO)と大野星海(T-BEAST)で対戦し、大野が勝利し決勝へ進出。シードの杉山空(HEAT)と決勝で王座を争う事に。互いにパンチとミドルの応戦が続き、5R通じて接戦となったが、判定は3-0で杉山に軍配。杉山が55ポンド級の初代王座に就いた。

66ポンド級
初戦で松山康陽(Exsindecon Gym Japan)と小林大牙(立川KBA)が激突。3R通じて激しい打ち合いがなされ、延長戦の末、小林が競り勝ち、準決勝進出を決めた。シードの吉成士門(チューティンムエタイジム)と激突。2Rに吉成の強烈な右ヒザが突き刺さり、KOで吉成が決勝へ。先に決勝に駒を進めていた花岡竜(橋本道場)と決勝で王座を争うこととなった。
互いにミドルを打ち合い、首相撲とヒザの応酬が続いた末、僅差の判定で花岡が勝利し、66ポンド級の初代王座に就いた。

77ポンド級
WINDY創成期からの常連ファイター、新名希平(B-FAMILY NEO)と吉成名高(チューティンムエタイジム)による一騎打ち。的確な左ミドルを当て込む吉成に、序盤は防戦続きの新名だが、首相撲からヒザで応戦。後半になっても、吉成は左ミドルをバンバン蹴り続け、試合を優勢に進めて判定で吉成が勝利。77ポンド級の初代王座に就いた。なお、吉成は今大会のMVPを獲得。

88ポンド級
決勝に勝ち上がった松本一輝(萬田道場)と品川朝陽(チューティンムエタイジム)が王座を争うこととなった。1Rは互いに様子を見る状態が続いたが、2Rになると品川の右の縦ヒジと左ハイが目立つ。松本は首相撲からヒザで応戦。3Rには松本が前に出て品川が下がる光景が目立つ。4Rには、松本のガードが下がった所に品川の左縦ヒジを当て込む。最終Rは互いに打ち合いとなり、試合終了のゴングが鳴り響く。結果、判定で品川が勝利し、77ポンド級で優勝した吉成と共に88ポンド級の初代王座に就いた。

100ポンド級
優勝候補と目される安本晴翔(橋本道場)が参戦。阿部晴翔(ドラゴンジム)と対戦。判定で阿部が勝利、ジュニアのトップファイターである安本から勝利を奪う金星を挙げた。決勝では、小林羅衣(立川KBA)と王座を争うこととなった。
ジャブを突いて右ロー、右ヒジを打ち込む小林。2Rになると、阿部の右ヒジがクリーンヒット。3Rは阿部の右ミドルと右ストレートで有効打を稼ぎ、4Rには小林が右ローと右ハイで応戦。5Rは一進一退の攻防となり、判定で阿部が勝利。100ポンド級の初代王座に就いた。

111ポンド級
古村匡平(Exsindecon Gym Japan)と平塚温大(ドラゴンジム)による一騎打ちとなった。
1Rは互いにローの蹴り合いが目立つ。2Rは平塚のミドルを古村がキャッチしてコカす。その後、古村は首相撲で回して崩し、右ローを追撃。判定で古村が勝利し、111ポンド級の初代王座に就いた。

 兄弟揃っての参戦もあり、筆者が確認取れただけでも、少なくとも10組は兄弟出場が見られた。ジュニア格闘技が爆発的に普及していった影響の表れの一つともいえるのではないだろうか。2009年12月に、ジュニア格闘技の普及を主とし、誰にでもチャンスを与えることをコンセプトとして、大田原氏が旗揚げしたWINDY Super Fightとは一変し、旗揚げしたWINDYでは「タイに通用する選手の育成」という新たなコンセプトにシフトチェンジ。
 現役のプロ選手でさえ、タイ人選手には舌を巻くことがあるだけに、ジュニア時代からタイに通用する選手が育成出来れば、日本の格闘技界に大きな影響を与えることは間違いない。「普及」から「育成」へ。ジュニアの育成ことこそが、格闘技界の真の底上げにつながることを、WINDYがこれから時間をかけて証明してくれることを切に願う。日本のジュニア格闘技界に先駆けて、次なるステップであるジュニアの「育成」に着手するWINDYの今後が楽しみでならない。

<キック部門>
-20kg級 伊藤健太郎(治政館)
-23kg級 大野月海(T-BEAST)
-27kg級 浅井麗斗(治政館)
-31kg級 黒木涼耶(WSRフェアテックスジム池袋)
-34kg級 岩尾翔(パワーオブドリーム)
-38kg級 井手口優斗(Weed GYM)
-42kg級 古村光(エクシンディコンジムジャパン)
-50kg級 辻龍也(WSRフェアテックス池袋)

<ムエタイ部門>
55ポンド級 杉山空(HEAT)
66ポンド級 花岡竜(橋本道場)
77ポンド級 吉成名高(チューティンムエタイジム)
88ポンド級 品川朝陽(チューティンムエタイジム)
100ポンド級 阿部晴翔(ドラゴンジム)
111ポンド級 古村匡平(Exsindecon)

<MVP>
大野月海(T-BEAST)
吉成名高(チューティンムエタイジム)

<参加ジム>
B-FAMILY NEO
パワーオブドリーム
鍛錬会
治政館
治政館江戸川道場
橋本道場
エイワスポーツジム
Team S.R.K
ドージョー☆シャカリキ
T-BEAST
Weed Gym
ビクトリージム
KIX
晴山塾
岡澤道場
立川KBA
WSRフェアテックス池袋
Refre’K
ASSASSIN
萬田道場
Exsindecon Gym Japan
HEAT
チューティンムエタイジム
ドラゴンジム
※順不同、敬称省略