[ファイトクラブ]『週刊ファイト』メモリアル 第7回 記事にブチ切れた団体社長が暴力団組長をチラつかせた!

[週刊ファイト11月03日号]収録 [ファイトクラブ]公開中

 プロレス専門紙(誌)といえども週刊紙に連載は欠かせない。『週刊ファイト』も1番多い時期には5本以上の連載を掲載していたが、その中で最も好評だったのは90年代半ばの『インディーズの功罪』。ところが、あまりにも過激過ぎて某団体のオーナーから恐喝される羽目に。いやァ、あの時は少しだけビビりました。
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by 井上譲二
 全日プロ出身の大仁田厚が資金3万円で設立したという(大ウソ)FMWが軌道に乗った影響により90年代はインディーズの旗揚げラッシュ。ド素人レベルのプロモーターやプロレスラーが次々に現れた。
 そんな弱小団体をまともに取り上げていたら目の肥えた『週刊ファイト』の読者は納得しない。もっと言えば、取材費と紙面が無駄になる。そこで私が着目したのはインディーズのスキャンダル。関西人の私から見て、“おもろいネタ”が掃いて捨てるほどあり、94年9月より『インディーズの功罪』という連載をスタートさせた。
 主な情報提供者は20年来の友人であるドクター・キニョネス。彼はインディー・マットの主要団体と言えるFMW、W☆ING、IWAジャパンで悪徳マネージャーとして活躍するだけではなく外国人招へい窓口も務めていたため、前記の団体の内情に精通していた。

 このビクター以外にもテッド・タナベ氏(みちのくプロレス)、三宅綾(W☆ING)など情報提供者が何人かいたこともあって情報が筒抜け。しかも正確な情報が伝わってきた。
 で、メジャー、インディーを問わず、情報がはずれた時は目クジラを立てないが、当たっていた場合には激怒するのがプロレス界の特徴。なぜか、ほかのジャンルとは真逆なのだ。
 この連載は「笑える読み物」として大好評。96年4月まで続けたが、『ファイト』史上最もクレームが多かった連載もこのコーナー。多い時には月に4、5回、団体関係者から抗議の電話がかかってきた。

 その中で1番激怒したのは、隠しまくっていた素性などを『ファイト』に暴露されたIWAジャパンの浅野金六オーナーである。
イメージ画像は記事と関係ありません。

 さすがに彼の本業(○○斡旋業)には触れなかったが、若い頃に“ホステス”としてゲイバーで働いていたことや全日プロ戸田大会のプロモーターであることも書いた。しかも浅野発言のすべてをオネェ言葉として載せた。
 1回目の抗議では「全部ウソ、デタラメ書くな!」とだけ言って電話を切った浅野氏だが、2回目の時は完全にブチ切れていた。約1時間半に渡って悪態をついた浅野氏は最後にこう言った。
 「(気に入らないところの)記事に赤線を引いて山形の親分(暴力団組長)に見せたからね」
 後にも先にも団体関係者から恐喝されたのはこの時が初めてだが、私は事を荒ら立てなかった。警察に被害届けを提出した上で 『ファイト』の1面で派手に報じていたらIWAは存続できなかっただろう。
 「『ファイト』全体の中でこの連載が1番面白い」と言ってくれていた新日プロの中堅社員は笑いながら私にこう語った。
 「『インディーズの功罪』というタイトルなのに内容は罪の部分ばかりじゃないですか」
 確かにインディー団体の先がけとしてFMWやみちプロが果たした役割りは大きい。だが、その一方でショッパイ体をした選手によるショッパイ試合や、会場使用料、印刷代などの未払いでプロレスのイメージを壊したのも事実である。とりわけ、W☆INGはメチャクチャな団体。思い切り叩いてやった。