上谷沙弥、“外の世界”を制して内へ帰還-環状線理論が導いた東京ドーム参戦という勲章

 2026年1月4日、新日本プロレスが誇る最大の舞台『WRESTLE KINGDOM 20 in 東京ドーム』に、スターダム所属の上谷沙弥が参戦することが決定した。この発表は、決して女子プロレスラーとして初めて東京ドームに立つという意味ではない。1994年の全日本女子プロレス東京ドーム大会や、2022年の『WRESTLE KINGDOM 16』第1夜におけるSTARDOM提供試合など、女子レスラーが東京ドームに姿を現した前例は確かに存在する。

 しかし、今大会が特別なのは、女子単独試合としてではなく、新日本プロレス本体の文脈の中で、女子レスラーが「必要とされた」形で参戦するという点である。つまり、ゲスト的な出演ではなく、プロレス界の最大興行において新日本プロレスが正面から“上谷沙弥”という存在を受け入れたことが、今回の重大性を際立たせている。

 上谷沙弥がこの位置に到達するまでの軌跡には、アントニオ猪木が提唱した“環状線理論”の精神が色濃く宿っている。プロレス界の内側だけを見ていても広がりはない。むしろ、外側に目を向け、世間や異なる文化の中で価値を築き、それをプロレスに還元することこそが未来につながる――そんな猪木的思想を、彼女は2025年、TBSの朝の情報番組『ラヴィット!』で体現してみせた。

 この番組で上谷はシーズンレギュラーを務め、最終回にはスタジオに特設リングを設けて羽南と試合を行い、23年ぶりとなる地上波での女子プロレス生中継を実現した。しかもTBSとしては51年ぶりという快挙であり、しかも朝の情報番組でプロレスが放送されるという異例の展開だった。彼女は「女子プロレスを広めること」が夢であると語り、その夢を“地上波”というプロレス界の外にあるメディアを通して叶えてみせた。


(C)TBS

 放送後、上谷はSNSで「夢が叶えられて本当に幸せ!」と感謝の意を記したが、その裏には、女子プロレスの枠にとどまらず、プロレスという文化そのものを社会に届けたいという熱い信念があったことは間違いない。リング上の“沙弥様”はヒールかもしれない。しかしその本質は、プロレスというジャンルに対する真摯な愛情に貫かれている。

 そんな中での東京ドーム参戦発表だった。上谷は会見で、「新日本プロレスが沙弥様を求めるようになったか」「東京ドームのど真ん中に沙弥様が一輪の黒い花を咲かせてやるよ」と強い言葉で意気込みを語り、さらに「女子プロレス大賞があるとか、そんなしょっぺえこと言ってるんじゃねえぞ。今年のプロレス大賞は誰がどう見たって沙弥様しかいないんだよ」と断言した。

 この発言には賛否もあるだろう。しかし彼女の言葉の裏には、「女子」というジャンルに縛られず、プロレスラーとして世間を相手に評価されたいという強い意思が透けて見える。環状線理論で言うところの“内と外”を自在に行き来する存在として、自らを位置づけているのだ。

 新日本プロレスにとっても、これは大きな意味を持つ決断である。かつては男子中心、内輪志向と言われた団体が、スターダムという外部組織の選手を、しかも“色”の強い上谷をそのままのキャラクターで迎え入れたのは、時代の変化に対する柔軟な対応であり、内から外へ、そして外から内への循環が確実に動き始めた証左である。

 上谷沙弥は、東京ドームの舞台において、自身が「一輪の黒い花」と表現する存在であると語った。その花は、プロレスの中心で咲くにはあまりに異質で、あまりに鮮烈だ。だが、だからこそ目を引き、記憶に残る。これは女子プロレス史の一部ではなく、プロレスそのものの中心に女子レスラーが立つという、まったく新しい歴史の始まりかもしれない。

 彼女が外に出て世間の視線を引きつけ、その熱を持ち帰ってプロレス界に還元するという行動は、まさに環状線理論の理想形である。新日本プロレス、そしてスターダム、さらには女子プロレスという枠すら超えて、“沙弥様”はプロレスというジャンルをひとつ拡張してみせた。

 2026年1月4日、東京ドーム。そのど真ん中で、一輪の黒い花が咲く瞬間、そこにプロレスの未来が見える。


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