電子書籍『アントニオ猪木 最強の戦略』発売~究極のアントニオ猪木LOVE読本

究極のアントニオ猪木LOVE読本『アントニオ猪木 最強の戦略』

 これほどの、アントニオ猪木愛に満ちた書籍がかつてあっただろうか。例えば筆者は、第二章『アントニオ猪木「道」を戦略的観点から解剖する』で、あのポエム(詩)「道」を徹底的に読み解いていく。例えば「リスクをとれ」稿では、【いわゆる戦略理論などを信じている限り、合理的に見えるけれども、失敗の可能性は低いけれども、これまでの劣勢をひっくり返して業界トップに躍り出るような成功につながる選択は絶対できない】と、猪木に学ぶ姿勢を崩さない。

 「プロレス女子」なる言葉がひんぱんに聞かれる昨今、プロレスブームが再燃している。その中心は新日本プロレスである。本書はその新日本プロレスの創設者であり、いまだプロレスの代名詞でありつづけるアントニオ猪木を題材にし、彼のプロレス人生のすべてを、経営戦略の理論から分析するものである。本書はあくまで学術的な観点からプロレスおよび、アントニオ猪木に光を当てた書であり、巷にあふれる猪木関連書籍とは一線を画す。プロレスを題材としているが、むしろビジネス書、経営理論書である。小橋引退でプロレスが再認識されつつある今、もう一人のカリスマに全く別の角度から光を当てたい。
 2013年、アントニオ猪木は参院選に勝利し、未だこの人物の社会的価値は健在であることを示された。2014年には北朝鮮で平和の祭典と銘打ったプロレスイベントも開催、アントニオ猪木は再び時の人となった感がある。現代社会に必要なものは、破天荒でありながら、時代を綿密に読んできたアントニオ猪木の思想ではないだろうか。それは、現代の経営戦略の理論にも期せずして合致する。
 アントニオ猪木の行動原理を経営戦略として捉えた本などなく、プロレスブームに再び火がついた今が出版のタイミングではないかと考える。

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第一章 アントニオ猪木最強の戦略 概論 
 本章では、アントニオ猪木の戦略を説明するために、まずは、戦略って何?というお話から始めたい。戦略の定義は実はたくさんある。世界中の学者が私の理論こそが正しい戦略だといっている。まるでかつて、NWA、AWA、WWAを中心に世界タイトルが乱立して、我こそが最強だとチャンピオンたちが吠えていた時代を思わせる。そして、近年は何でもかんでも○○戦略をつけるという傾向は、日本だけでなく世界中で顕著だ。マーケティング戦略、人的資源管理戦略、リーダーシップ戦略、財務戦略という具合だ。戦略の意味を最高の合理性と効率で何かをうまくやるという意味で使うならば、こうした言い方もアリだが、本来戦略とは組織に関することであり、プロレス的に言えば、そもそも戦略とは最強の組織をどう作るかがテーマである。さて、そんなわけで戦略理論が群雄割拠なので、本書は猪木らしくIWGPのアプローチをとろう。つまり、どの戦略理論が最強か決めるのである。しかし、そんなことはできるわけもないので、こうしよう。実は戦略にもストロングスタイル、ショーマンスタイル、デスマッチ系などいろいろあるのだが、すべての学派に共通している主張があるのだ。それを紹介すれば、読者の皆様に間違いなくこれが戦略であると分かっていただけるだろう。

第二章 アントニオ猪木「道」を戦略的観点から解剖する
 ここではアントニオ猪木が引退試合で披露してすっかり有名になった詩「道」を戦略的観点から分析する。じつはこの「道」の詩は猪木のビジョンであり、哲学であるという解釈が成り立つ。ではなぜ、第一章のアントニオ猪木最強の戦略の概略に入れなかったのか。それはこの道で表現されている猪木の哲学は、実は猪木は新日本プロレスという組織の戦略には基本的には使っていないからである。ここが実は猪木の組織人としての優秀さなのだ。この道はある意味悪魔的だ。組織を破壊してしまうおそろしいリスクを包含しているからだ。猪木は申し上げたように、組織の戦略にはこれを用いなかった。ただし、誰もが知っている一つの例外を除いては。そして、なぜ、猪木は引退試合にこの詩を披露したのか。それは、猪木自身が自分の内面の秘密を知られたくなかったからなのだ。ストロングスタイルみたいに、最初っからネタばらし、自分の信念をおおっぴらに表明してよい信念と、よくない信念の区別が分かるほど、猪木は賢いのだ。猪木は常に「道」とともにある。組織人として極力それは出さないつもりだったが、修羅場になると出てしまうことがある。それがあの事件であった。カンのいいひとならばわかるはず。その事件とは一体何か、これは読者の皆さんの勉強のために、なぞかけにしておこう。

 「道」はあくまで猪木個人の信念であり、ロマンである。ロマンとは、その実現には大きなリスクが伴う夢のことだ。「道」に描かれた信念は、組織の戦略の根本思想としては使わないが、猪木の個人戦略のかなめにはなる。いや、現実に猪木が個人的におこなっている戦略のすべての根本には「道」の精神がある。

第三章 アントニオ猪木 最強の戦略 各論
 第三章では、新日本プロレスに起こったさまざまな出来事を紹介し、象徴的な言葉にまとめ、それを戦略の観点から分析する。分析のポイントは、ことば、意味、言葉の背景、カテゴリー、解説、ビジネスへの応用とした。じっくり読んでいただきたい。

第四章 アントニオ猪木vs戦略の神様 ポーター
 この章は架空の夢の対決だ。アントニオ猪木は言わずと知れたプロレスの神であるが、戦略界の神様はマイケル・E・ポーター教授である。ポーターはポジショニング学派という戦略の学派のドンであり、5 Force理論(ファイブ・フォース理論)は企業がライバルと競争する業界の競争力を正しく分析してみせる理論として知られる。新日本プロレスの戦略行動は正しいのか、ポーター理論と戦わせてみた。

第五章 アントニオ猪木 最強の戦術
 戦術とは、戦略を実現させるためのツールである。このツールは、精神のありようとしての「風車の理論」、武器としての松濤館流空手、合気道の3つを取り上げた。読者は猪木は空手とか、合気道なんて習ったことないぞ、と反論されることであろう。しかし、筆者の推理に納得してもらえるはずだ。猪木は深い。

第六章 アントニオ猪木 最強のケース・スタディ
 本書はくどいようだがビジネス書である。一読、読者の皆さんに戦略というものを理解し、そして身につけていただくのが目的である。一方的に筆者の書いたものを読ませるだけでは、この目的を達成できない。この章では読者の皆さんに挑戦する。ケース・スタディで問題を出すから、ここまでの本の内容を参考に考えて、答えてほしい。ケース・スタディとは、企業のリアルな物語を題材に、教師が問いを投げかけ、学生に考えてもらう学習のスタイルである。ハーバード大学ビジネススクールがこのアプローチですっかり有名になった。しかし、この学習メソッドは決して古くならない。一方的な講義よりも、よほど学ぶ側を刺激し、学びを深める。これはしかし、本音を言うと、本を通じてではなく、読者のあなたがたと私でやるのが一番いい。機会があれば、別のケース・スタディを用意するから、どこかであなたがたと勝負したい。
 本章のケース・スタディは、新日本プロレスで行われた4つの闘いをストーリーとしてまとめてみた。

最強のケース・スタディ③ザ・コブラ 対 デイビーボーイ・スミス
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1983年(昭和58)11月3日 東京・蔵前国技館NWA認定世界ジュニアヘビー級王座決定戦

第七章 なぜ、アントニオ猪木は戦い続けるのか
 実は、筆者はこれを知りたかったのである。なぜ猪木は戦い続けるか、この答えこそが猪木のビジョン、哲学の根本にあるはずだ。本来ならば、このテーマは第一章に持ってくるべきである。しかし、いきなりは無理だ。この答えをいきなり出せというのは難しすぎる。だからこんなアントニオ猪木の戦略を分析するという、めんどくさいことをまずやったのである。戦略の根本を知るには、戦略そのものを分析すれば、ヒントがつかめると思ったのである。この拙い考えは少し当たったようで、なんとなくつかめたような気がする。

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